GIAが研究を行う理由
GIAでは、研究がすべての基盤となっています。GIAが提供するグレーディング レポート、機器、教育がいかに正確であるかは、GIAの研究結果にかかっています。1931年以来、GIAは、以下の点において世界中の消費者を保護する業界基準を設定してきました。
宝石の品質を判断するための正確かつ公平な世界共通の基準の確保
GIAのラボで使用されているグレーディングと鑑別の方法およびベスト プラクティスの確立
GIAの専門的な研修コースとプログラムのカリキュラムに関する情報の提供
販売時での検出を向上させるための実用的な機器とツールの開発
今日、市場では、天然とラボラトリー グロウンの両方を含む幅広い宝石素材が見かけられます。 また、色や外観を改善するために処理された天然宝石も数多くあります。これらの製品はますます洗練されてきており、成長や処理の過程の詳細が常に明らかにされているとは限らず、宝石の鑑別が困難になっています。
GIAは、天然宝石の形成、微量元素の化学的性質、色の原因、可能な場合は地理的起源を理解するために、天然宝石素材の特性評価の研究を行っています。焦点を当てている主な分野としては、処理の検出と、ラボラトリー グロウン宝石の素材と天然宝石素材を区別することが挙げられます。
研究への責務
GIAは、他のほとんどの組織が成しえない規模で宝石学の研究を行う独自の態勢を整えています。非営利団体であるGIAは、カリフォルニア州カールスバッド、ニューヨーク、ニュージャージー州セコーカス、バンコク、東京、香港に設備の整った最先端の研究施設を設け、収益を研究活動に常に再投資しています。GIAは、宝石の産地や多様な宝石素材に独自にアクセスできます。また、毎年分析のためにGIAのラボに提出される何十万ものアイテムを含む比類のないデータベースにもアクセスすることができます。
GIAの研究者は、主要大学で学術的な研修を受けており、何年もの間、ラボラトリーで宝石鑑別の経験も積んできました。また、研究者は、さまざまな高度な科学機器を使用し、ワシントンD.C.のSmithsonian Natural History Museum(スミソニアン自然史博物館)やCarnegie Institution for Science(カーネギー研究所)など、他の施設の世界各地の研究者と協力して宝石の研究を行います。
現在の研究活動
GIAの研究は、急速に変化を遂げる宝石の処理や合成技術への対応、並びに宝石がどのように形成、採掘、製造、販売されるかについて世界中の人々が理解を深めるのを促進することを目指しています。主な研究分野の例を以下に挙げますが、これらに限りません。
ダイヤモンド:ダイヤモンドの形成、産地、結晶構造とその光学的効果、および色の起源に関する継続的な研究。自然照射と人工照射、および多段階の処理過程を鑑別するプロトコルの推進。既知の製造業者のラボラトリー グロウン ダイヤモンドのプロセスの調査。ファンシー カット ダイヤモンドのカット品質を評価するためのグレーディング システムの開発
カラー ストーン:既知の産地から産出されたさまざまな宝石素材の分光法、微量元素の化学的性質、内部特徴の分析および記録、そしてコランダム中の微量元素の影響を理解するための原産地の判断に関するさらなる取り組み
真珠: 新規および既存の真珠の養殖および処理過程の調査
機器およびデータベースの開発:GIAの研究活動を支援するために必要な専門的なツールの開発。実用的で手頃な価格の宝石検査および鑑別の機器を業界に提供
実地調査:サンプルを記録および収集するために、世界各地の宝石鉱山や生産拠点への継続的な遠征。現地の宝石の製造と処理工程の調査。宝石の生産と流通に及ぼす地理的、経済的、文化的、政治的な影響に関して理解を深める
研究に関する情報提供
GIAが現在行っている研究プロジェクトは、世界中の研究コミュニティ、一般の方々、宝石・宝飾業界にとって有用であり、研究内容が開示されています。その研究の結果は、GIAの季刊専門誌であるGems & Gemology(G&G)やその他多くの有名な出版物に包括的な記事として掲載されています。研究に関する最新情報は、GIAのウェブサイトでもご覧いただけます。研究を通じて得られた洞察は、GIAの教育プログラムや専門的な宝石学専用機器にも応用されています。
GIAの研究者は、以下の国際的な宝石学フォーラムやその他の関連会議で頻繁に講演や寄稿を行っています。
UK Diamond Research Conference(英国ダイヤモンド研究会議)
Geological Society of America(米国地質学会)年次総会
International Gemmological Conference(国際宝石学会議)
International Kimberlite Conference(国際キンバーライト会議)
International Mineralogical Association( 国際鉱物学連合)年次総会
V.M. Goldschmidt Conference(V.M. ゴールドシュミット会議)
GIAの研究の歴史
1931年以来、宝石学の研究はGIAの非営利団体としてのミッションの中核を成してきました。 GIAの研究成果は次のとおりです。
暗い背景に対して宝石の内部特徴が明るく鮮やかに見える革新的な技術である暗視野照明を備えた宝石顕微鏡を初めて製作(1938年)
天然真珠と養殖真珠を区別するためのX線撮影の使用(1952年)
ダイヤモンドの品質を評価する国際的に認められた基準である、ダイヤモンドのD-Zカラー スケールおよびフローレスからI3までのクラリティ スケールの開発(1953年)
照射処理したイエロー ダイヤモンドの検出(1956年)
宝石を鑑別するための分光器の使用(1957年)
黒色養殖真珠の天然色の起源の判断(1961年)
現在タンザナイトとして知られている新しい宝石の最初の研究(1968年)
ダイヤモンドの暗色のインクルージョンを隠すためのレーザー ドリリング加工に関するレポート(1970年)
ファセットカットされた合成ダイヤモンドに関するレポートを初めて出版(1971年)
ガラス充填処理されたルビーの鑑別(1984年)
フラクチャー充填処理されたダイヤモンドの検出(1989年、1994年)
ブラジルのパライバ産の銅含有トルマリン(1990年)
エメラルドの充填物質の耐久性の評価(1991年)
天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの区別(1995年)
ダイヤモンドの模造石としてよく使用される合成モアッサナイトの検出(1997年)
ダイヤモンドの外観に対する蛍光の影響の判別(1997年)
天然色のブルー ダイヤモンドの特性評価(1998年)
高温高圧(HPHT)処理により脱色したブラウン ダイヤモンドの検出(1999年)
天然色のピンク ダイヤモンドの特性評価とグレーディング(2002年)
化学蒸着(CVD)による宝石質の合成ダイヤモンドの検出(2003年)
ジェモロジストのための顕微鏡写真の技術の開発(2003年)
ルビーとサファイアのベリリウム拡散処理(2003年)
ラウンド ブリリアント カット ダイヤモンドの総合的なカット グレーディング システムの開発(2004年)
天然色のイエロー ダイヤモンドの特性評価とグレーディング(2005年)
鉛ガラス充填ルビーの鑑別(2006年)
Cullinan Diamond(カリナン ダイヤモンド)の宝石学的分析(2006年)
充填されたエメラルドの耐久性の検査(2007年)
モザンビーク産の銅含有トルマリン(2008年)
GIAラボラトリーでの「D-Z」ダイヤモンドのカラー グレーディング(2008年)
ダイヤモンドの地質学の理解における進歩(2014年)
天然ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、処理済みダイヤモンドの鑑別および検出のための市販の装置、DiamondCheckを開発(2014年)
顕微鏡写真技術および装置(2015年)
CVD合成ダイヤモンドのレビュー(2016年)
HPHT合成ダイヤモンドのレビュー(2017年)
多くの有名な大粒ダイヤモンドの非常に深い起源(2017年)
天然ダイヤモンドとラボラトリー グロウン ダイヤモンドを区別するための iD100 の開発(2017年)
天然色のグリーン ダイヤモンドの説明(2018年)
天然色のブルー、グレー、バイオレットのダイヤモンドの説明(2018年)
ピンクおよび関連する天然カラーダイヤモンドの説明(2018年)
ブラック ダイヤモンドとホワイト ダイヤモンドの説明(2019年)
レーザーアブレーション質量分析法による宝石トルマリン種の鑑別(2019年)
重要なカラー ストーンの原産地の判断に関する説明(2019年)
コランダムの色の原因の説明(2020年)
天然色のイエローとオレンジのダイヤモンドの説明(2020年)
天然色のD-Zのダイヤモンドの説明(2020年)
ピンク サファイアの低温加熱処理(2020年)
天然真珠の内部構造(2021年)
ダイヤモンドの外観に及ぼす青色蛍光の影響の研究(2021年)
養殖真珠の内部構造(2021年)
ミャンマーのモゴック産のブルー サファイア(2021年)
ダイヤモンドの地理的起源(2022年)
モンタナ産サファイアの特性評価(2023年)
スピネルのニッケル拡散(2023年)
オレゴン産サンストーンの特性評価(2023年)
テキサス産トパーズの特性評価(2023年)
ベリルの微小な特徴(2023年)