トルマリンの品質を決定する要因
トルマリンの中で最も人気が高く、一般に入手可能な色の一つは、業界でルベライトとして知られているピンク/赤色の変種です。
グリーントルマリンのパステル調の色相は、エメラルドの濃厚で豊かな色相とペリドットのより柔らかいグリーンに対し、満足のいく選択肢を市場に提供します。 最高級のものでは、グリーン・トルマリンは透明でブリリアントで鮮明であり、魅力的な青味がかったグリーンの色相を持っています。
グリーントルマリンの多くは、強い多色性を示します。 一方向で明るいグリーン、他方向で青色、というようにいずれの方向にも魅力的な色を呈する石は、最も価値があります。
クロムトルマリン宝石は、ほとんどのグリーン・トルマリンよりも彩度の高い色相を呈します。 クロムトルマリンは、ツァボライトまたはエメラルドの低価格な代替物になります。 これらの宝石は両方とも、2カラット以上の大きさはまれですが、5カラットまでの大きさのクロムトルマリンを見つけるのは難しいことではありません。 トルマリンは、ツァボライトの光沢や輝きに匹敵しませんが、同等の大きさと品質のツァボライトよりはるかに安価です。
暗い色調の石は、市場ではより一般的ですが、 あまり魅力がありません。 非常に強く光を吸収するものもあり、一定の方向から見るとほとんどブラックに見えます。 カッターは通常、結晶の長手方向に平行にテーブルをカットし成形します。 このようにカットした宝石は、クラウンを通してあまり魅力のない褐色または黄色がかった色を示すことがあります。 取引業者は、しばしばこれらの宝石を「オイリー」または「オリーブ」グリーンと呼びます。 それらの宝石の価格は、上質のグリーン・トルマリンあるいはより明るい青味がかったグリーン・トルマリンの価格よりはるかに安くなっています。
ブルー・トルマリンは、色調が明るいものから暗いものまであります。 その色相は、しばしばグリーンによって変わるので、少しグリーン修正色の入ったブルーの色、あるいは非常に緑色がかっているが依然ブルーである色となることがあります。 色に等量のグリーンとブルーを含むトルマリンさえもあります。 グリーン・トルマリンのように、ブルーの色を強く鮮明なものにしたり、またはあまり飽和されていないグレーがかった色にしたりできます。
1980年代終盤に発見されて以来、パライバ産トルマリンはその際立ったネオンブルーとグリーンで、宝石界に衝撃を与えてきました。 そのユニークで鮮やかな色合いにより、この宝石は瞬時に他のトルマリンとは一線を画しました。 この宝石がお目見えしたとき、世界は熱狂しました。特に上質なカラーストーンに対する需要が貪欲だった日本での反応は激しいものでした。
このエキゾチックな新参者、特に3.00から5.00カラットの大きさの最高品質のものの価格は、カラット当たり1万ドル以上に急騰しました。 トルマリンの中で、珍重される赤色のルベライトや緑色のクロムトルマリンでさえ、そのような高い価値を出したものはありませんでした。 パライバ産トルマリンの希少性が、その高価格に寄与したことは間違いありません。
この宝石は、ブラジル北東部の角にあるパライバ州の一地域から採れるエルバイトトルマリンです。 他の多くのブラジル産エルバイト同様、パライバ産トルマリンは、ペグマタイトの中に形成されます。 しかし研究者は、その結晶は非常に異例な状況下で形成し、マンガンおよび銅のような微量元素を大量に持っており、それが色を生む原因となると信じています。 他の宝石、特にトルコ石などで銅が石を着色する場合があるとしても、他のトルマリンでは銅が着色剤となることはないため、パライバ産トルマリンは異例と言えます。
なかには多量の銅が入っているものもあり、自然銅-殆ど純粋な金属として-のインクルージョンがこの宝石の内部を際立たせています。 科学者達は、宝石が結晶し始めた後に自然銅のインクルージョンが初期の冷却段階で形成されると推測しています。
パライバ産トルマリンの色相は、緑がかったブルー、青味がかったグリーン、グリ-ン、ブルー、およびバイオレットにわたって見られます。 バイヤーはこれらのすべての色を求めますが、ブルーとバイオレットが最も人気です。 取引業者は、パライバ産トルマリンが持つ並外れた質の色をうまく表現しようと、数々の名称を使用します。 ネオンのほか、彼らは「エレクトリック」「ターコイズ」「サファイア」「タンザナイト」ブルー、また「ミント」グリーンのような言葉を使用します。
全般的に、最高品質のパライバ産トルマリンの価格は、他のトルマリンをはるかに上回ります。より魅力的な色相、より高い色飽和度、より高い希少性のためです。 他のトルマリンと直接比較すると、その違いは歴然です。 例えば他のグリーントルマリンと比較した場合、グリーン・パライバ産トルマリンの方が、より飽和した色相で明るい色調をしています。
原石の価値が高いため、パライバ産トルマリンにはほとんどの場合カスタムカットが施されます。 通常、一般的なペアシェイプやオーバルのブリリアントカットにファセットカットされます。 1カラット以上のサイズのパライバ産トルマリンを見ることは滅多にないでしょう。 ですがパライバでは、重要な要素はサイズではなく、色です。 従って、取引業者が大きな石とより鮮明な色の石のいずれかを選ばなければならない場合、他の要素が同じであえれば、より良い色の宝石を選ぶのが賢明です。
ブラジルのパライバ地域でみられる鮮やかで、強烈な色の宝石に似た銅含有トルマリンが、世界の他の地域でも見つかっています。 GIAの科学誌、「Gems & Gemology (宝石と宝石学)」の2008年春号の記事は、モザンビークの銅含有宝石について記しています。 ナイジェリアも、これらの印象的な宝石の産地となっています。
パライバ産トルマリンの短い歴史の中で、取引業者はこの宝石の極端な希少性に諦めムードになることも多々ありました。 しかし、ブラジルの他の地域やアフリカ東部での新たな発見により、この希少な銅含有トルマリンの存続性のある商業的産地が、もっと多くの素材を市場に供給する可能性が出てきました。 残念ながら、新しい原産地はまた、これらの貴重な宝石にパライバという名称を使う件について疑問を提起してもいます。
結晶の成長中に微量元素の濃度や組成が変化すると、ウォーターメロン、バイカラー、マルチカラーゾーニングなどが起こります。 リディコータイトは、強烈で複雑なゾーニングを示すことがあり、こうしたエキゾチックな色の組み合わせを見せるように成形加工されることがよくあります。 ジェモロジストは、これらのトルマリンをパーティカラーと呼びます。
トルマリンは、結晶の長さに沿って色帯が見られることがあります:端がピンク色の結晶でも、反対の端が緑色になっていることがあります。 あるいはその長手方向と平行に色帯が現れることもあり、赤い結晶の外側に緑色がかぶさっているものもあります。 その色が、すいか(=ウォーターメロン)の果皮と果肉に似ているので、業界ではこれらをウォータメロントルマリンと呼びます。 デザイナーは、原石をファセットカットするよりも結晶のスライスを作ることで、ウオーターメロントルマリンの外観を活かすこともあります。
クラリティ
有色のトルマリンは流体が豊富な環境で成長しますが、そうした流体の一部が結晶成長の過程でインクルージョンとして取り込まれることもしばしばあります。 最も典型的なインクルージョンは、結晶の長手方向に平行に走る糸のような空洞に似ています。 拡大すると、それが液体または気泡で充填されていることがわかります。 成長チューブー長い空洞のチューブで、しばしば微細な鉱物結晶が蓋をしているものーも、トルマリンに一般的なインクルージョンです。 インクルージョンの量が十分で、原石が正しい方向でカットされれば、キャッツアイとなります。
取引業者は通常、レッドトルマリンは色が強くて魅力的であるかぎり、いくらか目に見えるインクルージョンがあっても容認します。 表面に到達するインクルージョンは光沢と研磨を損ない、宝石は販売しにくくなります。 また、液体インクルージョンは色が強い石ではあまり目につきませんが、顕著な白っぽいインクルージョンを持つ石は、どんなに色が鮮やかでも、望ましくありません。
インクルージョンは、明るい色調で彩度が低い宝石では非常に目立ちやすくなります。 そうした石はインクルージョンを相殺するような強くて魅力的な色を持っていないので、殆どのバイヤーは、目に見えるインクルージョンを持つ石を拒否します。 良い色で多くのインクルージョンがあるトルマリンは、色を強調しインクルージョンの外観を最小限に抑えるために、カボションとしてカットします。
ピンクとレッドのトルマリンには、目に見えるインクルージョンは珍しいものではありません。 インクルージョンのの大きさや数が邪魔をしない限り、知識のある消費者は、色が主要な価値要因であると考えます。 グリーントルマリンには、目に見えるインクルージョンがないものと想定されるので、邪魔なインクルージョンはグリーントルマリンの価値を下げる恐れがあります。 他の色については、目に見えるインクルージョンを持たないトルマリンは、インクルージョンが見えるものより価値があります。 インクルージョンがはっきり見えるほど、価値も下がります。
カット
多くのトルマリン結晶の細長い形は、最終的な宝石の形とプロポーションに直接影響を与えます。 その結果、多くの細くて非標準的な大きさのものが入手可能です。 非常に魅力的なものもありますが、多くの宝石購入業者は、標準的なジュエリーの枠にセットしやすいので標準寸法の石を好みます。
宝石カッターは、トルマリンを長い長方形に成形することがよくあります。 原石の結晶の長さに平行してカットすると、無駄を減らすことができます。 しかしカッターは、トルマリンの光学的特性を考慮する必要もあります。
トルマリンには強い多色性があり、つまり異なる結晶の方向で異なる色を示すということです。 トルマリンの多色性の色の一つは、通常、もう一方よりはるかに暗い色です。 さらに、多くのトルマリンは、結晶の横方向よりも縦方向に沿って光を強く吸収します。 従って、横から見ると淡緑色に見える結晶を縦方向に見ると、非常に暗い緑、時には殆ど黒色になることがあります。
多くのカッターは、トルマリンはすべて長さに沿ってカットするのではなく、色の深さに基づいて、成形する宝石の石取り方向を決めるのです。 淡い色の原石を濃色にするには、彼らは結晶の長手方向に対して垂直にテーブルをカットすることもあります。 暗い色の原石を明るくするためには、結晶の長手方向に平行となるように、完成させる宝石のテーブルをカットします。
カラット重量
成形されたトルマリンのサイズが大きいほど、カラットあたりの価格が大幅に上昇します。 標本としての石は圧巻の大きさに達する場合がありますが、そのようなものは稀です。 ファセット品質の原石素材は入手が困難で、価格が大幅に上昇します。 同じような色とクラリティの成形された宝石では、5カラットを境にそれ以上になるとカラット当たりの価格が一般的に上昇します。