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Sowerby著「British Mineralogy(英国の鉱物学)」とMartha Proby



James Sowerby著「British Mineralogy(英国の鉱物学)」:この本がMartha Probyや19世紀の科学界に与えた影響。

   Sowerby、Proby著セット本

James SowerbyによるBritish Mineralogy(英国の鉱物学)全5巻と並べて置かれた、Sowerbyの研究に基づいたMartha Probyの備忘録。 写真:Robert Weldon/GIA

カリフォルニア州カールスバッドにある、GIAの希少本コレクションで最も貴重な2点は、James Sowerby(ジェームズ・サワビー)によって書かれた「British Mineralogy(英国の鉱物学)」全5巻とMartha Probyが編纂した2巻です。 1988年に有名鉱物学者で執筆者のJohn Sinkankas(ジョン・シンカンカス)氏とMarjorie夫人から入手した書籍コレクションがCartier Rare Book Repository and Archives(カルティエ貴重書保管庫および書庫)の中心となっています。 これはRichard T. Liddicoat Gemological Library and Information Center(Richard T. Liddicoat 宝石学ライブラリー・インフォメーションセンター)内にあり、この分野においては最も規模が大きく完全な書庫です。 GIA図書館員は、最先端のスキャニング機器を使用したデジタル化プロジェクトを開始しており、2015年後半にこれらの本などをデジタルアクセス可能にしようと計画しています。

  James Sowerbyの肖像画
British Mineralogy(英国鉱物学)およびWold Cottage Meteorite(ウォルド・コテッジ隕石)と一緒に描かれたJames Sowerbyの肖像画。製作者:Thomas Heaphy(1816年) 出典:R. Cleevely

James Sowerby(ジェームズ・サワビー)は、1757年3月21日にロンドンで生まれ、Royal Academy(ロイヤル・アカデミー)でアーティストとして正式に教育を受けました。 Sowerbyの家族には、博物学者やコレクター、出版者などが含まれ、1789年から1897年の自然史に関する100点以上の作品を美しく執筆・解説することに貢献しました。 彼らは19世紀のイギリスにおける科学知識の普及方法に多大な影響を与えました。特に植物学や古生物学、鉱物学の分野が顕著です。

  ソワービーアラゴナイト  
James Sowerbyが所有していたアラゴナイトの標本。 後にBritish Museum(大英博物館)に売却された。 提供:Natural History Museum(ロンドン自然史博物館)、ロンドン 写真:Robert Weldon/GIA

Sowerbyは標本を詳細に描くことでイギリスの鉱物を記録しました。 彼は、息子のJames De CarleとGeorge Brettinghamと一緒に、後に手描きで水彩を施す版画を印刷するための銅板を慎重に製造しました。

  Sowerby(ソワービー)2刊 タイトルページ    
Sowerbyのイギリスの鉱物に関するシリーズ第2巻 のタイトルページ(左)。 SowerbyのBritish Mineralogy(英国の鉱物)のカルサイト、 第2巻、図版147(右)。 写真:Orasa Weldon/GIA

James Sowerbyは1802年から1817年までの間、『British Mineralogy:or Coloured Figures Intended to Elucidate the Mineralogy of Great Britain(英国の鉱物学:カラー図解)』という題名の図解書を購読型の定期刊行物として出版しました。 550枚の図版のそれぞれに鉱物の特徴と特性の記述が付いています。

シリーズの終わりに、出版者は5巻セットとして作品全集を出版しました。 現存する完全なセットは100部未満だと推定されています。 Conklin(1995)は「現在でもイギリスの地形鉱物学の最高作品であると考えられます。 これまで出版された鉱物に関する色版作品の中で、最も野心的であることは確かです。」と言います。


  Proby(プロビー)家  
Proby家の居間で母親(右)と妹と一緒に過ごすMartha Proby(1832年)。 写真:Arthur Crawfurd(Crawfurd家代表)

Martha Probyは、1783年11月24日にイギリスのサフォークで、Narcissus Charles Proby牧師とArabella Weller Proby夫人の間に生まれました。 Marthaは、その時代の他の女性と同じように、ごく当たり前の伝統の中で成長しました。他の資料から収集した内容でノートや空白のページを埋めたりしていました。 この作業によって、クリエーターとしての彼女は、積極的に文章をコピーしたり、イラストを作成したり、所見を加えたりすることで、熱心に作品内容を研究し、それに従事することができました。


  Proby(プロビー) 第1刊    
Martha Probyが第1巻89ページに、Sowerbyの British Mineralogyを参照して手描きしたWold Cottage Meteorite(ウォルド・コテッジ隕石)の隕鉄の欠片。 写真:Orasa Weldon/ GIA

Marthaの家族には、自然史に興味を持つ者が多くいました。 姉Catherine Proby Cautleyの息子である甥はSir Proby Thomas Cautley (1802–1871)で、英国の古生物学者でありGanges Canal(ガンジス運河)(1843年)のためのエンジニアを務めていました。 Proby卿は、チャールズ・ダーウィン(1809年~1882年)の知り合いだったようで、彼の革新的な作品On the Origin of Species(種の起源)の中で言及されています。
 
Marthaの姉妹Sarah Probyは、James Sowerbyの息子James De Carle Sowerby(1787年~1871年)やチャールズ・ダーウィンと共に、Royal Zoological Society(王立動物学協会)のメンバーでした。 もう一人の姉妹Mary Probyは、作家および詩人のElizabeth Cobbold(1767年~1824年)と友人で、作品Mineral Conchology of Great Britain(イギリスの化石貝類学)のために、George B. Sowerby(1788年~1854年)に化石のサンプルを提供しました。 MaryとMarthaの両方がSowerbyの作品に基づいて備忘録を作成しました。 Mineral Conchology(イギリスの化石貝類学)に基づいたMaryの6巻シリーズは、現在カリフォルニア大学バークレー校のBancroft Library(バンクロフト図書館)に保管されています。


  Proby 第1刊 タイトルページ    
Martha ProbyのBritish Mineralogy(英国の鉱物)の備忘録のタイトルページ(左)。 Sowerbyの作品を参照してMartha Probyが描いた硬質石灰質の石(アラゴナイト)、 第1巻39頁(右)。 写真:Orasa Weldon/GIA

Marthaの備忘録は、James Sowerby’のBritish Mineralogy(英国の鉱物学)のいくつかの個所に基づいています。 彼女は、Sowerbyの作品から本文や図版を無作為に選択して、彼の説明を一語一語、複写しました。 挿画のタイトルと原文の情報を更新した1ページ以外に、作品の本体に変更はほとんど見られません。 Sowerbyのオリジナルの内容の全てが含まれている訳ではなく、鉱物が紹介されている順序も同じではありません。

コレクターのJohn Sinkankasは、1973年にMartha Probyの2巻の写本を購入したあと、それらを現在の状態にまとめました。 また同様の方法で、SowerbyのBritish Mineralogy(英国の鉱物学)の5巻もまとめました​。

  John Sinkankas ワークベンチ

John Sinkankas、1988年の彼の誕生日にて。 写真:Robert Weldon/GIA

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