サファイアの品質を決定する要因
サファイアは、ルビーとエメラルドに並ぶ、ジュエリー向けの3大カラーストーンのひとつです。9月の誕生石であり耐久性に優れているこの石は、その実用性とロマンスのオーラがジュエリー バイヤーの心を捕らえます。
コランダムは、サファイアとルビーの両方を変種として含む鉱物種です。赤いコランダムはルビーとして知られており、他のすべての色のコランダム(無色、つまり業界でホワイト サファイアとして知られているものを含む)はサファイアですが、中でもブルーが最も有名です。
サファイアの色
サファイアは一般的にブルーの宝石として知られていますが、驚くほど様々さまざまな色と品質のものがあります。通常、色が強く均一であるほどその石の価値は高くなります。
ブルー以外のサファイアはファンシー サファイアと呼ばれ、ルビーである赤を除いてすべての色がこれに当てはまります。ファンシー サファイアの色は、ピンク、オレンジ、イエロー、グリーン、パープル、バイオレットです。サファイアではまさに、どなたの好みにも合う色を見つけていただけます!
ブルー サファイア
色はサファイアの価値に最も大きな影響を与え、好ましいとされるサファイアは彩度が「強い」から「鮮やか」なものです。最も価値が高いとされるブルー サファイアは、ミディアムからミディアムダークの明度で、ベルベットのように滑らかなブルーからバイオレットがかったブルーを呈します。このような品質のサファイアは、カラット単価が最も高くなります。それより価値の低いブルー サファイアは灰色がかっていたり、あるいは明るすぎるか暗すぎる場合があります。
パパラチャ サファイアとは?
非常に稀少でコレクター向けのピンクとオレンジが混ざった変種は、業界ではパパラチャとして知られています。通常、このような宝石の価値は高く、他の多くの種類のファンシー サファイアよりもはるかに高くなります。その色の描写はとても複雑です。パパラチャ サファイアの色をサーモンやサンセットと呼ぶべきだと言う人もいます。しかしパパラチャという言葉自体は、蓮の花の豊かな色を表すサンスクリット語に由来します。
この宝石の取引に携わる人々は、通常、パパラチャ サファイアは色が明るめから中程度のピンキッシュ オレンジからオレンジ-ピンクの範囲であると同意します。
ピンク サファイアとパープル サファイア
ピンク サファイアは、明るい赤(ピンク)から明るいパープルまでの範囲の色を呈し、色の彩度はルビーやパープル サファイアの色の範囲に入らない弱いものから強いものまであります。パープル サファイアのドミナント カラー(主要色)は、常に紫色です。これらは弱い彩度から鮮やかな彩度で、中程度から暗めのレディッシュ パープルからバイオレティッシュ パープルです。主なファンシー サファイアのカラーは、パパラチャ、ピンクとパープル、オレンジとイエロー、グリーン、カラーレスとブラックに分類されます。各カテゴリにはそれぞれの色の範囲、色の要因、そして市場があります。
イエローからオレンジのサファイア
イエロー サファイアには、イエローからオレンジがかったイエローのさまざまな彩度で、明るめから暗い明度のものがあります。その一方、オレンジ サファイアは深みのあるゴールドからマンダリン オレンジや濃いオレンジの色を呈します。
イエロー サファイアの色は、同じ宝石内の他の色の影響を受けることがあり、明るめから暗めのグリーニッシュ イエローからオレンジィ イエローの範囲で、彩度が強いものから弱いものまであります。最高級のイエロー サファイアは、鮮やかな彩度のイエローからオレンジィ イエローです。
オレンジ サファイアの範囲は、イエローイッシュ オレンジからレディッシュ オレンジです。最高級のオレンジ サファイアは、強い純粋なオレンジからレッド‐オレンジの範囲で、ミディアムの明度、鮮やかな彩度をもっています。
グリーン サファイア
市販品グレードのサファイアには、肉眼で見えるあまり望ましくないグリーニッシュ ブルーまたは強くグリーンがかったブルーが含まれている場合があります。色が飽和しておりむらのないグリーン サファイアは、実に稀少であり多くのコレクターにより珍重されています。グリーン サファイアでは、イエローとブルーのサファイアが組み合わさることで私たちの目にグリーンとして写ります。
カラーチェンジ サファイア
カラーチェンジ サファイアはコランダムの言わばカメレオンで、照明を変えると色が変わる石です。昼光に相当する光(蛍光灯または昼光色相当のLED)の下での典型的なカラーチェンジ サファイアの基本的な色の範囲は、ブルーからバイオレットです。白熱灯の下では、バイオレティッシュ パープルから強いレディッシュ パープルです。まれにカラーチェンジ サファイアの中に、昼光下でのグリーンから、白熱灯下でのレディッシュ ブラウンに変わるものがあります。
宝石専門家がカラーチェンジ サファイアを判断するとき、色の変化について弱い(weak)、中程度(moderate)、強い(strong)と表現します。石のカラーチェンジの強度は、その価値に影響する最も重要な品質要因です。
スター コランダムの色は石の価値に大きな影響を与える一方で、微小なインクルージョンはアステリズム(星彩効果)を生じる要因であることが分かっています。インクルージョンは透明度と色に影響を与えることがあり、非常に稀少な素晴らしい宝石のみが、透明度、色の深さ、アステリズムを示します。したがって、最高のスター コランダムは強く飽和した色に対してくっきりと明瞭に浮かび上がるスターを示します。色が明るすぎる場合はスターの線条とのコントラストが十分に得られないため、スターが見えにくくなります。
スター コランダムは、レッド、ピンク、ブルー、ブラック、グレー、ブラウン、パープル、イエローと、実質的に太陽光で見ることのできるあらゆる色があります。「スター サファイア」という用語は、レッドを除くすべての色のスターコランダムに使われ、レッドだけはスター ルビーと呼ばれます。
当然のことながら、スター コランダムの中でも他のものよりも高く評価される色がいくつかあります。一般的に、最も評価されている色は特殊効果を示さないコランダムで評価の高い色と同じで、ブルーとレッドです。
原産地に基づいた業界用語は、石の原産地に関連付けられている特定の色や品質を表すことがあり、一般的にはその原産地から採鉱される最高品質の石を指します。しかし、一つの原産地から色と品質がすべて同じ宝石が一貫して産出されるということはあり得ません。実際、原産地を表現に使用した記述的用語は、その原産地から採鉱された石のほんの一部だけを表しているかもしれないのです。
サファイアのクラリティ
一般的にブルー サファイアには内包物がいくらかありますが、クラリティは通常、ルビーよりも優れています。極度に高いクラリティを持つブルー サファイアはまれであり、非常に価値があります。
サファイアでは数種類のインクルージョンが発見されます。そのうちのひとつは、ニードル(針)と呼ばれる細長い鉱物インクルージョンです。細いニードルが交差した集団の鉱物ルチルとして生じている場合、それをシルクを呼びます。サファイアのその他のクラリティ特徴には、含有された鉱物結晶や、フィンガープリント(指紋)の様に見える部分的に修復されたひび割れ、カラー ゾーニング、カラー バンディング(色相の縞)などがあります。
通常、インクルージョンは石の価値を下げてしまいます。インクルージョンが石の耐久性を損なう可能性があると、価格が大幅に低下する場合があります。それにもかかわらず、実際にインクルージョンがサファイアの価値を高めることもあります。最も価値のあるカシミール産サファイアの多くには微小な内包物が含まれており、ビロードのような滑らかな外観を与えています。これらは光を散乱させ、宝石の透明度を損なうことなく、切望されるその視覚的な効果を発します。
スター サファイア
スター サファイアとスター ルビーは、特殊効果を示すコランダムに分類されます。スター効果はアステリズム(星彩効果)と呼ばれます。これは、複数の特定方向に配列された小さな針状インクルージョンからの反射によって起こります。スターは通常、2本、3本または6本の交差する帯でできており、4条、6条または稀に12条の線条になります。
通常スター サファイアでは、6条のスターが最も一般的で、12条のスターは非常に稀です。わずかに異なる方向を向いたルチルとヘマタイトの2組のインクルージョンが12条のスターを生みだすことがあります。
ヘマタイト インクルージョンはブラック スター サファイアにアステリズムを生じさせます。サファイアの色は実際にはイエロー、グリーン、ブルーなどですが、内包物が石をダーク ブラウンやブラックに見せているのです。
最高級のスターは、明瞭で石の頂上の中央にあり、腕の長さのほどのある程度の離れたところからも見ることができます。スターの質は、どの方向から見ても同じでなければなりません。
線条は強さが均一で、カボションのガードルからガードルまで到しており、石の上部の中心部で交差しているのが理想とされています。最高品質のスターは直線であり、ぼやけていたり波打っていたり途切れていたりすることがありません。反射するスターは、宝石の地色に対して強いコントラストを示すべきです。スターは、エレガントな「動き」も持っていなければなりません。つまり、石を揺らすとスターが表面に滑らかに動くように見えなくてはいけません。
最高級の最も高価なスター コランダムは、はっきりとしたスターを生じるのに必要充分なシルクを伴っており亜透明です。シルクが多すぎると透明度を損なうとともに色の質も悪くなり、石の価値を大きく下げてしまいます。
サファイアのカット
サファイアの結晶原石の形状は、石の研磨加工後の形状とサイズに影響します。サファイア原石の最も一般的な結晶形は、バレル(樽形)型またはスピンドル(紡錘形)型の六角錐状です。全体的に最高のカラーとプロポーションを作り、歩留りをできるだけ最大にするため、カット職人はカラー ゾーニング、多色性、そして結晶の明るさまたは暗さのような要因に注目して、石をカットする方向を判断します。
カラー ゾーニング(ひとつの石で見られる異なる色の領域)は、サファイアによく見られる特徴です。ブルー サファイアは、多くの場合ブルーとライト ブルーの角度のあるゾーンを有しています。一部のサファイアでは、カラー ゾーニングを扱う際にカット職人はカット石となった時に最も良い色が見えるように、色が集中している部分を配置します。
スリランカ産サファイアでは、色は多くの場合、結晶の表面近くに集中しています。カット職人が色の集中しているエリア内にキューレットを配置することができれば、その石はフェイス アップからは全体的にブルーに見えます。
多色性は、結晶を見る方向によって見える色が異なることを指します。ブルー サファイアは、多くの場合グリーニッシュ ブルーとバイオレティッシュ ブルーの多色性を示します。その石がジュエリーにセットされたときに、バイオレティッシュ ブルーを呈するようにカットの方向を定めることが最も望ましいのです。
スター サファイアのカット
スター コランダムは、アステリズムを示すにはカボション カットする必要があります。研磨加工された石の魅力は、スターの向きとカボションの対称性、プロポーション、そして仕上げにかかっています。
カボションは、宝石を底面を下にして置いたときにスターが中央にあることで魅力的な外観をしていなければなりません。石の輪郭は左右対称である必要があります。
ほとんどの石について、スターが明瞭に現れるためにはドームは石の幅の約3分の2ほどの高さが必要となります。高すぎると、石を傾けたときにスターの優雅な動きが失なわれてしまいます。また、高さが余分にあると石をマウントしにくくなってしまいます。
ドームが浅すぎると、スターは真上からしか見えなくなってしまいます。ただし、ブラック スター サファイアには平行な割れが生じる傾向があるので、通常は損傷のリスクを低減するために非常に平たくカットされます。
石のガードルより下は、光学効果や色の強調に貢献しないので余分な重さがあってはいけません。
サファイアのカラット ウエイト(重量)
ブルー サファイアのサイズは数ポイントから何百カラットまでにわたり、大きなブルー サファイアは、大きなルビーよりも入手し易いです。しかし、ほとんどの量販品質のブルー サファイアの重量は5カラット未満です。
サイズの大きい大量生産品質のブルー サファイアは稀少ですが、大きなサイズの上質なものよりも簡単に入手できます。したがって、上質なサファイアの価格は、サイズによって違いがより大きくなります。