アメリカ同時多発テロ事件後に回収された家宝
9月 23, 2011
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ロサンゼルスの宝石専門家Robin Silvers(ロビン·シルヴァー)氏は、クライアントが提示したアイテムに心動かされ、圧倒させられました。2つの小柄なシルバーのメッシュのクラッチバッグ、ダイヤモンドのブローチ、2つの懐中時計。全て9月11日のワールドトレードセンター攻撃後の瓦礫に埋もれた、家族のセーフティボックス(貸金庫)から回収されたものでした。
それらが保管されていたのは、部分的に崩壊した5ワールドトレードセンターにあった、JPモルガン・チェース銀行の金庫で発見された2500個のセーフティボックスの内の一つでした。 同金庫は、その後数週間続いた火災で多大な被害を受け、最終的に発見された際には、箱の中身のほとんどが灰と化していました。
シルヴァー氏のクライアント(匿名)は、事件の数週間後まで、家族のセーフティボックスのことを思い出しませんでした。 そのクライアントの父親はマンハッタンに住んでおり、ワールドトレードセンタービルの近くで家族経営する商業ビルでの仕事に向かっていた可能性があったため、9月11日、彼女は父親を非常に心配していました。
彼女の父はその日、仕事に遅れていたので無事でしたが、その建物内のスペースを賃借していた人々は負傷、または死亡しました。 「あの攻撃で、知っている人が亡くなりましたし、私たちの建物の一部が破壊されました。」と彼女は言います。
彼女がセーフティボックスのことを思い出した時は、「感電を受けたようでした。 喪失感に襲われ続けました。」家族はみな、セーフティーボックスの中身は破壊されたと思っていたのです。
銀行関係者が金庫を見定め、所有者に連絡し始めるまでに数年が過ぎていました。 セーフティボックス内の品が無事に残っているかについての情報が前後左右し、シルヴァー氏のクライアントは、感情のジェットコースターに乗っているようでした。
「発見された時は本当に驚き、またほろ苦い思いがしました。 」と彼女は言います。
彼女が19歳のとき乳がんで亡くなった母親は、宝石を殆ど持っていなかったため、クライアントの父からその母(妻)への贈り物であった1950年代の14Kホワイトゴールドのちょう結びのブローチは、一層特別です。
「私が持っている母の最後の形見の一つです。」と彼女は言います。 ブローチは火災の熱を受け黒くなりましたが、ダイヤモンドは良好な状態だったので、彼女は修理してみようと思いました。
シルバーのクラッチバッグや懐中時計は、彼女の曽祖父母のものでした。 曽祖父はナチスドイツから離れ移住して、祖母は大恐慌の間に育ったので、それらの品は彼女の遺産へ繋がるものであると同時に、大事な所有物だったはずです。
シルヴァー氏はクライアントが初めてそれらの品を提示した時、鳥肌が立ったと述べます。 そしてすぐに、ブローチを修復すべきではないと悟りました。
「他のアイテムと共にそのブローチを見て、触れたとき、それらが通って来た経緯を全て感じることができました。 ブローチを修復することは、9.11事件で起こった全てを消してしまうでしょう。」と彼女は言います。 「そのままで美しいのです。」
シルヴァー氏が、カリフォルニア州Pacific Palisades(パシフィックパリセーズ)在住の宝石商で友人のDavid Humphrey(デビッド・ハンフリー)氏にそのブローチを見せると、彼は、Gems & Gemology(宝石と宝石学)に記事を書くためにGIAに連絡しました。 GIA博物館の学芸員Terri Ottaway(テリー・オタウェイ)は、同誌用に撮影されるブローチを見て、キャンパスでの展示を求めました。
「この素晴らしいダイヤモンドのブローチは、アメリカを永遠に変えた恐ろしい出来事に耐えたのです。」とオタウェイは言います。 「その状態は、人間の精神は悲劇を経ても輝くことができるということのリマインダーです。これらのダイヤモンドが、黒くなったセッティングでも輝いているのと同じように。」
シルヴァー氏、クライアント、オタウェイの間で一つの会話がまた別の会話へとつながり、今、5品全てが11月18日までカールスバッドで展示されています。 シルヴァー氏のクライアントは、それらの作品が象徴するものを認識し、GIAで展示する決断をしたことに満足しています。
「母のブローチが手元にないのは、寂しく思います。」と彼女は言います。 「でも、あのブローチは、人々の9.11事件へのつながりであることが分かります。 回復、再生、復活の象徴であり、命が宿っているんです。」

左:14Kゴールドのコロンブス懐中時計。中央:14Kゴールドのロード・エルジン懐中時計。右:75個のダイヤモンド(2.78カラット)がはめ込まれた、1950年代の14Kホワイトゴールドのちょう結びブローチ、無傷。
数週間燃え続けた火災の熱で溶けた、二つの小柄なシルバーのメッシュクラッチバッグ。 左の大きなものは高さ4インチ(約10 cm)X幅5.5インチ(約14 cm)で、小さいものは2.5インチ(約6 cm)X2.7インチ(約7 cm)。 中にいくらか中身の残骸を見ることができる。 右の写真は、クラッチバッグの裏面。

数週間燃え続けた火災の熱で溶けた、二つの小柄なシルバーのメッシュクラッチバッグ。 左の大きなものは高さ4インチ(約10 cm)X幅5.5インチ(約14 cm)で、小さいものは2.5インチ(約6 cm)X2.7インチ(約7 cm)。 中にいくらか中身の残骸を見ることができる。 右の写真は、クラッチバッグの裏面。