CVD成長法による合成ダイヤモンド、パート1: 歴史
4月 30, 2013
HPHT合成が発表されるる2年前の1954年に、別のタイプのダイヤモンド生成であるCVD(化学蒸着)法に特許が与えられました。 宝石品質のCVD合成ダイヤモンドに関する初期のレポートは、懐疑的に受け止められ、何年も検証されませんでした。 1980年代後半に、この技術に関して高度に進んだ理解を有する科学者が、CVD法を使用した再現性のあるダイヤモンドの成長方法を発見しました。
CVD法は、天然ダイヤモンドの形成方法と全く異なります。 CVD法では、非常に低い圧力の真空チャンバー内で、炭化水素ガス(通常はメタン)と水素との加熱混合物からダイヤモンドを生成します。 通常の状況下では、このような低い圧力でこの混合物を加熱すると、グラファイトやダイヤモンドでない炭素の形状が生成されます。 しかし、CVD成長法の真空チャンバーでは、ダイヤモンドにより安定性があるので、水素の一部が原子状水素に変換され、ダイヤモンドの形成を促進します。 分子状水素から原子状水素への変換には、マイクロ波エネルギー、電気放電、又はホットフィラメントを利用します。 原子状水素が気相中に存在する場合、2つの化学プロセスが起こります:
(1)グラファイト及び他の非ダイヤモンド炭素が、原子状水素と反応し、新たに形成された気相中で蒸発します。
(2)原子状水素は、反応性の高い炭素 - 水素種を形成するために、元の炭化水素ガス(メタン)と反応します。 この種が分解するとき、水素を放し、純粋な炭素、つまりダイヤモンドを形成するのです。
宝石品質の合成ダイヤモンドを生成するためには、ダイヤモンドの種結晶(天然、HPHT又はCVDを問わない)が900〜1200℃の高温で、ガス混合物中に導入されます。活性化した炭素-水素種は、利用可能な炭素原子が見つかるまでダイヤモンド種子の表面を移動し、この種結晶の原子に付着します。 そして種結晶は、1つの炭素原子の分厚くなるのです。 このプロセスは、ダイヤモンド種結晶の結晶構造を三次元的に複製するために、際限なく繰り返されます。
図1は、HPHT成長による黄色のダイヤモンド種結晶に、無色のダイヤモンドが成長している様子を示しています。 この特殊な結晶の厚さは、約1mmです。 生成チャンバー内に結晶を残すか、又は種結晶を除去し、それを検査し、さらに成長させるためにチャンバーに戻して成長時間を延長することにより、より厚い結晶を生成することができます。 現在に至るまで、3〜5 mmの厚さのダイヤモンド結晶が成長し、宝石として製造されてきました。 種結晶を使ったCVD成長法の繊細な点の一つは、上下方向に厚く成長させることができるにもかかわらず、横方向成長は、品質を考慮すると制限されることです。 従って、種結晶の直径は、最終的な宝石に望む直径と少なくとも同じ大きさでなければなりません。 新しい宝石を生成するたびに種結晶を必要とするので、種結晶を回収して再利用するか、または継続的に種結晶を製造するための生産余力を確保しておく必要があります。
最も初期のCVD生成チャンバーは、1回につき1つの種結晶のみでの生成が可能でした。 生産可能な種結晶の容量は厳守されている企業秘密ですが、CVD製造システムのなかには、同時に50以上の種結晶で成長が可能なものがあると報告されています。 今後、その数は増加すると予想されています。
CVD法による合成石は、天然ダイヤモンドと同じ方法、同じコストで、カットおよび研磨されます。 合成石は、予備的な鑑別を容易にするために、ガードルにレーザで(合成石であることを)刻み込むことができます。 図2は、カットおよび研磨された典型的なCVD成長による合成ダイヤモンドを示しています。
このシリーズの次回の記事では、CVD合成ダイヤモンドの特性について説明します。
著者について
Dr. Robert Linaresは、コンサルティング会社Integrated Diamond Technologies, LLCのオーナーです。 結晶成長技術の専門家であり、最初の宝石品質のCVD合成ダイヤモンドのいくつかを生成したApollo Diamond Inc.(アポロダイヤモンド社)の共同創設者でした。 Dr. Linaresはダイヤモンド系量子コンピューティング研究や応用の解明に関して海軍省の2002年度バーマン賞を受賞しました。