業界分析

米国の小売業者、依然「厳しい」状況に言及、合成メレーの検出を受け


香港のダウンタウンの眺めです。真ん中を、高速道路が貫通しています。
3月のHong Kong Gem and Jewellery Show(香港ジェム&ジュエリーショー)での良好な需要に後押しされ、業界の感情が高まっています。 写真:Russell Shor/GIA

米国の雇用率は、株と連動して上昇し続けています - また、他の経済指標も堅調に推移しています - しかし、Signet Group(シグネットグループ)の最新の結果で出た低い数字は、依然と「厳しい」小売環境を指摘し続けています。 シグネットは米国で最大の宝石チェーンで、他の大手のジュエラー小売業者も同様に売上高が減少しています。

では、問題は何なのでしょうか?

シグネットの最高経営責任者(CEO)Mark Light氏はその原因として、ほぼ全店舗が置かれているショッピングモールでの顧客の減少と、物理的な店舗とオンラインショッピング、そして携帯電話やタブレットからの購入などをすべて含んだ「オムニチャンネル」小売への推移を挙げています。 しかし、シグネットのオンラインの売上も減少しており、また今月後半には報告書が出ることになっているBlue Nile(ブルーナイル)でも、売上は低迷または減少を示すだろうと考えられています。

シグネットのKay/Jared(ケイ/ジャレド)両部門の売上高は4%減少し、取引は11%減しました。 Zale(ゼール)部門では2.5%の減少となり、eコマースの売上高は1月25日に終了した第四四半期全体で1.6%減少しました。

エコノミストによると、中産階級の購買力の低下は、消費者製品に直接影響を与えているとリベラル・保守いずれも言っています - そしてそのカテゴリーには、ジュエリーも含まれています。 そして、この傾向は加速していると主張しています。ミレニアル世代は、同年齢の前の世代よりも収入が少ないためです。 ジュエリーでは、高級品を扱う小売業者は一般的に水準を維持しているほか、Pandora(パンドラ)などのブランドでは、ローエンドで大きな売上増加が見られます。 これが、2016年のジュエリー総合売上高3.8%増加という、 米国商務省の発表を押し上げた要因です。

また、ダイヤモンドの生産者と業界の他のセグメントは、競争力のある製品や体験型の機会(旅行、ダイニング)などが殺到する中、それに収入が追いついていないミレニアル世代にアピールするためのマーケティングキャンペーンを開発しようと努力しています。

今月開催された香港のショーはまあまあの結果だったため、ダイヤモンド業界を元気づけることに成功し、研磨された石のほとんどのカテゴリーで値崩れが起きずに済みました。 多少のランク下げや割引はあったものの、中国の小売業者は長いスランプの後、需要は改善してきていると報告しています。

デビアスでは依然楽観的にとらえており、2月の周期(サイト)は5.45億ドルで、価格は平均してわずかに高く、延期も少なくなっています。 1月の販売額は7.27億ドルで、この数年では最高額でした。 Alrosa(アルロサ)では、原石の売上が3.9億ドル、研磨された石は同時期1200万ドルで、「需要は安定しているようだ」と述べています。

デビアスもアルロサも、今回の香港での展示会の結果は、今後を楽観的にとらえる理由になると指摘しています。

きたるBaselworld(バーゼルワールド)フェアは、高級品市場の指標になるでしょう。また、6月上旬のラスベガスのJCKショーも、米国市場のよい指標となります。

合成メレー

3月上旬ムンバイのGIAのラボで、323個の石が入ったパーセルに、合成メレーダイヤモンドが100以上見つかりました。これにより、通常グレーディングラボを通過しないメレーのパーセルには、合成のメレーが含まれている可能性が浮上し、懸念を呼んでいます。

メレーサイズのパーセルに合成や処理された可能性のあるダイヤモンドを自動的に識別するGIAのメレー分析サービスでは、平均0.14から0.15 カラットの石が入ったそのパーセルに、101個の化学蒸着(CVD)メレーダイヤモンドを検出しました 。

GIAの研究開発ディレクターのDr. Wuyi Wangによると、12月から開始されたメレー分析サービスにより、パーセルに少量の合成の混入が定期的に検出されているということです。 ただ、このような大きな割合で人工素材が検出されたのは初めてということです。

25.27カラットの エメラルドカットのダイヤモンドリング。
ジョンカー5ダイヤモンドが、5月30日にクリスティーズで競売にかけられることになっています - これは、1934年にヤコブ・ヨンカーによって掘り当てられた世界的に有名な726カラットのヨンカー原石から取れた、伝説的なダイヤモンドのコレクションの一部です。 写真提供:クリスティーズイメージズ社

オークション

5月30日に、香港で25.27カラットのヨンカー5がクリスティーズでオークションされます。 これは、93年前に発見されたときにトップニュースになった原石からカットされた、5番目に大きいダイヤモンドです。

1934年、ヤコブ・ヨンカーという名前の鉱山職人によって南アフリカで726カラットのダイヤモンドが発見され、それはその後ニューヨークのハリー・ウィンストンが買い上げました。 ウィンストンは、マスターダイヤモンドカッターであるラザール・キャプランに、そのカットを委託しました。ナショナルジオグラフィック誌の1936年の記事によれば、キャプランはそのダイヤモンドをカットする前に、数ヶ月研究したそうです。

そして、いよいよ最初の一撃をまさに打とうとした瞬間、表面のひびに、僅かな屈折を発見します。そして、自分の計算が間違っていたことに気づきました。 再計算後、無事に13個のダイヤモンドに切り分けます。その中に、今回クリスティーズでオークションされる25.27カラットのダイヤモンドが含まれています。  

GIAにより、D、VVS1としてグレーディングされたこのダイヤモンドは、長方形のカットで、控えめに見ても220万ドルから300万ドルで売れると予想されています。 

Russell Shor は、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。