不安定な市場にもかかわらず、米国のホリデー商戦は好調な滑り出し
12月 10, 2018

米国のホリデー商戦は、来年景気後退局面に入る兆候があるにもかかわらず、堅調に推移しています。
Diamond Producers Association(ダイヤモンド生産者協会)が行ったアンケートによると、このホリデーシーズンにダイヤモンドの購入を予定している消費者は記録的に5300万人にも達し、このうちミレニアル世代の割合が最も多いと推定されています。
さらに、主に高級宝飾品を販売する独立系の小売店でアンケートを行ったCenturion(センチュリオン)によると、これら小売店の41%が、毎年恒例のホリデー商戦の始まりを飾るブラックフライデーの週末に10%以上売上げが増加し、同様の数の小売店が売上げは2017年とほぼ同じであったと報告しました。売上高の減少を報告した小売店はわずか9%に留まりました。しかし、ジュエリーの売上げのほとんどは、ホリデーシーズンの後半つまりクリスマス直前の数日前に伸びるということを念頭に置くのが重要となります。
全体的に、小売業の売上高は好調です。全消費財の買い物客を対象として行われたMasterCard(マスターカード)のアンケートによると、ブラックフライデーの週末の小売業売上高は、昨年の同時期より9%増加しました。マスターカードのアナリストは売上高が若干減少すると予測していますが、今期は最終的には5%増加する結果になると付け加えています。これは、National Retail Federation(全米小売業協会)の予測と一致しています。
e-ビジネスを追跡するAdobe Analytics(アドビ アナリティクス)によると、オンライン売上高が急増し、2017年11月の合計と比較して24%増加しました。
しかし、最近の株式市場の下落、General Motors(ゼネラルモーターズ)の大規模な人員削減、来年の経済についての悲観的な予測が原因で、ホリデーシーズンが終わる前の買い物客の購買欲が低迷する可能性がある、と小売業界アナリストは依然として懸念しています。
宝飾品市場としては世界で第2位を占める中国では、米国との貿易戦争が原因で現在の四半期中に金と宝石の需要がおよそ5%下落したと主要な宝石商が報告しました。中国の通貨は、この数ヶ月で約5%下落したため、消費者向けのこれらの商品の価格が上昇しています。

オークション
11月の主要なオークションでは次々に史上最高額の記録が更新されました。11月27日に行われたChristie’s(クリスティ―ズ)香港のオークションでは、匿名のバイヤーが「ピーコックネックレス」を史上最高額の1500万ドル(約17.1億円)で落札しました。このネックレスは、3.02~10.56カラット(合計109.08カラット)の異なるサイズのクッションカットのカシミールサファイアが21個および1.03~4.05カラットのカラーグレードDのカラーダイヤモンドが23個飾られているのを特徴とします。これらのサファイアとダイヤモンドはすべてGIAがグレーディングしました。
同じオークションでは、有名人が着用したという経歴があるため、24.04カラットのファンシーイエローダイヤモンド、Moon of Baroda(ムーン・オブ・バローダ)が、100万ドルの壁を破り、落札予想価格の2倍の132万ドル(約1.5億円)で落札されました。GIAがグレーディングを行ったペアシェイプのこのダイヤモンドは、マリリン・モンローが映画『Gentlemen Prefer Blondes(紳士は金髪がお好き)』の宣伝のために身に着けていたため有名になりました。このダイヤモンドはインドで発見され、オーストリアのハプスブルク王朝の唯一の女性君主であったウィーンのマリー・テレーズ(1717-1780年)の手に渡りました。

クリスティ―ズのオークションではアジア人の一般人のバイヤーが、10.04カラットのビルマ産ルビーのリングを730万ドル(約8.3億円)で落札した一方、それぞれ5.21カラットと5.01カラットあるファンシーピンクのイヤリングは430万ドル(約4.9億円)で落札されました。
12月にニューヨークで行われたSotheby’s(サザビーズ)のオークションでは、有名人の宝石が好評を得て、今回は故フランク・シナトラの妻、Barbara Sinatraのエステートジュエリーがオークションにかけられました。彼女のコレクションには、数々のエメラルドの作品やデザイナー宝石があり、GIAがグレーディングを行った20.60カラットのD-VVS1ダイヤモンドの婚約指輪は170万ドル(約1.9億円)で落札されました。これは、落札予想価格の最高額をわずかに上回るものでした。また、このオークションでは、10.62カラットのファンシービビッドブルーのペアシェイプのダイヤモンドも出品され、2000万~3000万ドル(約22.6~33.9億円)で落札されると推定されていましたが、不成立に終わりました。
カラーストーン
スペイン語の頭文字であるAprecolとして知られているColombia Emerald Producers Association(コロンビアエメラルド生産者協会)は、この宝石の原産地として正式に公認されるよう計画を立てています。この組織は、ジュネーブにある国連のWorld Intellectual Property Organization(世界知的所有権機関)から原産地名称の認定を要請しています。この保護が認可されると、他の地域で採鉱されたエメラルドをコロンビア産と称するディーラーに対する法的な保護が与えられます。
原産地名称の認定は、一般的にワイン(ボルドーやシャンパンなど)および特有の食品(パルマハムなど)で使用されていますが、特定の原産地から産出された宝石にはかなりのプレミアがつくという事実にもかかわらず、貴石には今まで適用されたことがありません。
Aprecolは、サプライチェーンを確保するためにブロックチェーン技術を採用し、エメラルドが倫理的に採鉱され、コロンビアから合法的に輸出されたことを保証すると発表しました。 同組織は、2019年3月に認証を開始すると期待しています。
Russell Shor は、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。