米国政府、サプライチェーンの確認を宝飾業界へ要請;デビアスとアルロサによる原石の販売の削減
8月 22, 2019
米 国務省は、今年4月に宝飾業界の代表者に対して、自社製品に使用される宝石、ダイヤモンド、金属など、すべての素材に関する書類受け渡し記録の管理を強化するよう伝えました。
先週、国務省は業界の代表者を再び招集し、その管理が不十分であると報告しました。
JCKのレポートによると、企業は「Know Your Customer(顧客確認)」という指針を採用するのに依然として後れを取っています。この指針では、多額の現金を使用した取引や犯罪行為の疑いがある取引に対して「不審な活動に関するレポート」を提出することを企業に義務付けています。国務省当局者は、提出されたそのようなレポートは「非常に少なく」、サプライチェーンに関わる全員がこの指針を一層強化する必要があると出席者に対して説明しました。
国務省は、これらの規制は、資金がイラン、ベネズエラ、いくつかのアフリカ諸国のような「悪質な」政権に流れることを防止するために必要であると述べました。
4月に行われた会議の後、宝飾業界は、パイプライン内のすべてのカラーストーンやダイヤモンドに関するあらゆる段階の文書化が必要とされるサプライチェーンに課された新しい規制について懸念を表明しました。
先週、出席者は、協力することでサプライチェーンに関わる全員に有益をもたらすと同意し、今後はさらに注意を払うよう呼び掛けました。
ダイヤモンド原石の販売
De Beers(デビアス)、Alrosa(アルロサ)、その他のダイヤモンド鉱山会社は、ダイヤモンド製造センターの在庫を減らし、原石および研磨された石の価格の軟化を緩和するために、原石の販売を大幅に削減しました。ダイヤモンド製造業者の信用枠の問題や過剰の在庫が迅速に解決されるような兆候がないため、今年の残りの期間は販売が低迷したままとなる可能性が高いでしょう。
デビアスとアルロサは、銀行がダイヤモンド製造業者に対する信用枠を減らし、米中間の貿易戦争が激化するという見通しがあるため、今日のダイヤモンド原石の市場は厳しいと説明しました。
デビアスは、2億5000万ドル(約265億円)という過去3年間で最も小さい割り当てを発表し、このためクライアントは様々な商品の購入を延期することになりました。原石による収益は、昨年に比べて25%近く減少しています。
アルロサは、原石の販売が2018年6月のレベルと比較して50%以上減の1億6900万ドル(約179億円)となりました。同社の販売はその年の3分の1以上減少しています。今年、原石の価格は約6%下落した一方、1カラット以下の研磨済みダイヤモンドの価格は1.5%~3.5%下落しました。より小さなサイズのダイヤモンドではさらに大きく値下がりしています。
さらに、Rio Tinto(リオ ティント)は、2018年同時期に計上した5,500万ドル(約61億円)の利益と比較して、今年上半期のダイヤモンド部門では500万ドル(約5.35.3億円)の損失を報告しました。この損失の原因の一つとして、同社がより低い鉱石グレード(操業を中断することなく低迷している弱気市場において生産を減少させる手段)に採鉱活動を切り替えた影響が挙げられますが、ダイヤモンド原石の販売は当期で16%減少しました。リオ ティントは、同社最大のダイヤモンド事業であるオーストラリアのArgyle(アーガイル)鉱山を来年閉鎖する予定です。
ダイヤモンドの需要は落ち込んでいないものの、世界的に非常にゆっくりとした成長が続き、過剰在庫を吸収するには十分ではありません。需要の伸びが低迷している理由の一つは、世界の不安定な政治・経済情勢です。また、若者は両親の世代よりもジュエリーにあまり興味を示していないようです。TD Ameritrade(TDアメリトレード)のハリス世論調査が行った米国市場の調査によると、ジェネレーションZ(Z世代)とミレニアル世代は、婚約指輪に対して置く価値が親よりもはるかに低く、彼らの3分の2がリングは2,500ドル(約26万円)未満であるべきだと考えています。
Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。