業界分析

台風、貿易戦争、通貨安が香港ショーに及ぼした悪影響


見本市の会場に集まる人々。
台風22号が香港に接近する中、参加者がショーに集結した。他にも様々な要因があったため、バイヤーは慎重になった。写真撮影:Russell Shor/GIA

好調な世界経済にもかかわらず9月のHong Kong Jewellery & Gem Fair(香港ジュエリー&ジェムフェア)でのビジネスにはむらがありました。 バイヤーは慎重な態度を示し、高級なダイヤモンドやカラー宝石の購入は、既存または予想されていた注文に対して反する傾向にありました。さらに、香港で史上最大の勢力を記録した台風22号のためショーが9月15日に中断され、多くの主要なバイヤーは2日後にショーを後にしました。翌日、ショーは時間通りに再開しましたが、バイヤーの数は既に減少していました。

バイヤーが慎重になっていた理由の1つとして、激化する米中貿易摩擦が挙げられます。ショー開催中、関税に関する新たな制裁措置が発表され、バイヤーと出展者はこの貿易戦争の行方に注目していました。

この貿易戦争がどれだけの被害を及ぼすかについて全く見通しがつかず、さらに悪化する可能性もあるのです、とある出展者は中国と香港の経済に悪影響が生じると説明しました。そのような状態で大きな注文のため重荷を抱えるようなことはしたくないのです、と続けました。

別の香港の宝飾業界の重役は、宝石やジュエリーの取引は今年上半期まで好調であったが、貿易戦争が激化して以来低迷していると指摘しました。

その慎重な態勢が、銀行が削減しようとする、ディーラーの既に薄い利益を減少させ、さらに業界の流動性を妨ぐ、委託注文を上昇させた。

経済が不安定であるのに加えて、米ドルが多くの通貨に対して上昇しており、外国為替市場での変動が顕著でした。ショー開催中、インドルピーは対米ドルで1米ドル=71ルピーと過去最安値まで下落し、日本円やアジアのその他の通貨も下落しました。このため、通常米ドルで価格が付けられるダイヤモンド、宝石、金は、現地の通貨では高価となり、現地の消費者に販売するのがさらに困難となりました。

Asia World Expo(アジアワールドエキスポ)のダイヤモンド&宝石ショーに出席した人々は小売業者ではなく、ほとんどが世界各地のディーラーであり、注文を受けた特別な宝石を探すため、もしくは秋が到来する前に在庫を追加する目的で参加していました。ダイヤモンドのディーラーは、最高級のビビッドカラーダイヤモンドを除くすべてのダイヤモンドの価格がやや低下し、はるかに手頃な価格となったため、ファンシーイエローダイヤモンドの需要が上向きになったと説明しました。

商業用のカラーレスダイヤモンドでは、地元で既に顧客ベースを築いた大口の取引を行うディーラーは順調な注文を受注しましたが、少額の取引をする出展者および地元で顧客ベースがない者はビジネスが非常に低迷していたと報告しました。台風22号のためショーの最終日がキャンセルされ、出展者全員が販売する多くの機会を失いました。

モザンビーク産ルビーがカラーストーン市場で優勢となり、市場に出回るすべてのルビーの70%も占めていると推定されました。高級および高品質のエメラルドもショーで豊富に見られました。どちらの宝石においても、需要が供給よりも少なかったのにもかかわらず、ディーラーは値崩れしないように価格を一定に保っていました。ブルーおよびファンシーカラーのサファイアは、拡散処理またはかなりの処理が施された素材を除いて、すべての品質のものにおいて数が少なめでした。また、パライバ トルマリンは、このショーで豊富に出展されており、35カラットのような大きいものもありました。パライバ トルマリンの需要は昨年から低下していましたが、価格は依然として高いままでした。

Hong Kong Convention Center Show(香港コンベンションセンターショー)では、Chow Tai Fook(周大福)やChow Sang Sang(周生生)のような香港の大手小売業者のビジネスが好転しているにもかかわらず、ジュエリー製造業者も同じような理由から購入に関して慎重な態勢を受けました。地元のジュエリー製造業者はこの状況に順応して、小さな宝石が付いたより小さめのデザインを低価格で提供しています。

この展示会は、不吉な暴風警報およびフィリピンにもたらした多大な被害に関する報道とともに開幕し、海外から参加していたバイヤーが慌ただしく香港を去ろうとすることを引き起こしました。台風は香港を猛烈な勢いで襲撃し、主要なホテルの窓が吹き飛ばされたり、木々が倒れてしまいました。しかし、この台風は非常に速く通過し、コンベンションセンターでの展示会は翌日再開し、通常通りビジネスが行われました。

台風は、ここアジアのビジネスの一部です、とある真珠製造業者は述べました。台風に慣れて、通過するまで辛抱することを心得ています、と続けました。

ダイヤモンド

デビアスは、9月のサイクル(サイト)で5億500万ドル相当(約565.6億円)のダイヤモンドを販売し、これは前回の販売を約4%下回り、去年の同月のサイクルと同じ結果となりました。同社は、小さめで低品質のダイヤモンドの需要が低迷しており、ルピーの価値が急激に減少したことを理由に、顧客が年内または来年早々までそのような商品の購入を延期することを許可しました。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。