業界分析

2019年ラスベガスショーでの好結果を期待する宝飾業界


GemGenève(ジェムジュネーブ)ショーの入り口に飾られた大きなグラフィックウォール。
5月9日~12日に開催されたGemGenèveショーでは、高級品市場の低迷を反映し、売り上げが軟調であった。写真撮影:Russell Shor/GIA

世界各地で景気が低迷する中、米国ラスベガスで近日中に行われるラグジュアリーショーとJCKショーに注目が集まります。

ダイヤモンドのディーラーやジュエリー製造業者は、ダイヤモンドと宝石の卸売業者によるこの春の需要に基づき、順調な売上を期待しています。米国の小売業者は、1.5カラットまでのダイヤモンドおよび1,000ドル(約11万円)以下のカラーストーンを購入しており、ディーラーはこれがラスベガスでも継続すると期待しています。

数多くの参加者が出席した場合、在庫の増加(ほとんどのサイズと品質のカテゴリ、特に低品質のものにおける価格の低下の原因となる)および与信引き締めのため苦境に立たされているダイヤモンドの供給に役立つことが予想されます。一部のディーラーは、ショーが開く前に銀行に支払うために現金を必要とする他の出展者から掘り出し物を購入する者から、通常よりもはるかに多いお買い得商品がショー開催前に販売されるのを期待しています。カラーストーンのディーラーは、非常に高額でなく独特の外観を有する一般価格の石に対する需要が改善されていると述べました。

ラスベガスのショーに出席するバイヤーは、ラボで製造したダイヤモンドのサプライヤーを以前にも増して見かけることになるでしょう。生産者の数は増加しており、数多くの主要ジュエラーが提供しているので需要も増加していると伝えられているため、昨年のショー以来、価格は大幅に下落したと報告されています。

ディーラーは米国の強い経済のため楽観的な態度を示していますが、小売業に影響を与えている重要な問題があります。例えば、多くの消費者における賃金停滞、オンライン販売との競争、若いバイヤーが高級品を避けるトレンド、いくつかの大手小売業者が財政危機に陥るほど売上げが落ち込む原因となったショッピングセンターの衰退などが、問題として挙げられます。上場されている小売宝石店、Tiffany & Co.(ティファニー・アンド・カンパニー)は 同一店舗の売上げが5%上昇、Key Jewelers(ケイジュエラーズ)、Zales(ゼールズ)、Jared Galeria(ジャレドガレリア)、Piercing Pagoda(ピアッシング・パゴダ)の親会社であるSignet Corp.(シグネット社)は直近の四半期の売上げが2%減少したと報告しました。

しかし、中国の景気は引き続き減速しており、中国政府は米国との貿易戦争に取り組み、国内から資金流出の阻止に努めています。ディーラーは、多くの中国のバイヤーがこの動きのため大きなダイヤモンドや主要な宝石を含む高額の高級品を購入するのを思いとどまっていると語ります。また、海外のサプライヤーから大量のダイヤモンド、宝石、宝飾品を購入する中国の卸売業者も同じ理由で購入を躊躇しています。

さらに、香港に拠点を置くトレーダーによると、香港の銀行はより厳格な与信枠および送金に関する規制を制定しています。一般的な景気の減速と相まって、これらの規制のため宝石を取り扱う大企業の中には事業を縮小した会社があり、小さい企業は閉店を余儀なくされたものもあると説明しています。

主に高級品市場向けに開催された5月のGemGenèveショーの出展者は、これらの逆風を目の当たりにしました。アジア人のバイヤーはこのショーにほとんど出席せず、大きなダイヤモンド、ファンシーカラーダイヤモンドと主要な宝石を探し求めていた他のディーラーから主に需要がありました。

低迷している市場にもかかわらず、ディーラーは、価格、特にファンシーカラーダイヤモンドの価格を保持する余裕がありました。

ファンシーピンクダイヤモンドの重要な原産地であるオーストラリアのアーガイル鉱山が近々閉鎖されるということは、これらの商品のディーラーが価格を高く維持するもう一つの原因となりました。

「売ってしまったら、それに代わるものはないということは分かっていますから」と、ファンシーカラーのダイヤモンド市場に根本的な変化をもたらすと信じているディーラーの1人が説明しました。「過去15年ほどの間、稀少であるにもかかわらず、新しい方達がたくさんファンシーカラーダイヤモンドに興味を持ち始めたのに気が付きました。しかし、この原産地がなくなると、これらの新しい方達の多くは、ビジネスモデルを変更する必要があります。さもなければ、いなくなってしまうでしょう。」

ロシアとカナダから産出される大きいファンシーイエローダイヤモンドがますます増加していることは、ファンシーカラーダイヤモンドのトレーダーが懸念しているもう一つのトレンドです。

「これらは常に(小売業者や消費者からの)良いキャッシュフローを提供しており、本当に稀少な色のダイヤモンドを保持することを可能にしました」と、ある出展者が説明しました。「しかし、イエローダイヤモンドの価格が下落すると、もっと稀少な色の宝石を売らなければならないかもしれません。」

Russell Shor は、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。