Gems & Gemology(宝石と宝石学)

G&G 2018年夏号:様々なスペクトル特性を有するダイヤモンド、ビザンチンのガーネット、Yogo(ヨゴ)渓谷産のサファイア


モンタナ州中部にあるYogo(ヨゴ)渓谷地区は、120年以上もの間、世界で最も美しいサファイアを産出する原産地の一つとなっている。本号では、Nathan Renfro、Aaron Palke、Richard Bergが、ヨゴ渓谷地区の採鉱の歴史およびこの地域で産出されるサファイアの宝石学的特徴を紹介する。表紙の写真は、サファイアが発見されるouachatites(ワシタ)の脈岩のサンプルの上に置かれたヨゴ・サファイア原石である。最大のサファイア原石の重量は8.49カラットある。写真:Kevin Schumacher、提供:モンタナ州、Bozeman(ボーズマン)The Gem Gallery(ザ・ジェム・ギャラリー)のDon Baide
モンタナ州中部にあるYogo(ヨゴ)渓谷地区は、120年以上もの間、世界で最も美しいサファイアを産出する原産地の一つとなっている。本号では、Nathan Renfro、Aaron Palke、Richard Bergが、ヨゴ渓谷地区の採鉱の歴史およびこの地域で産出されるサファイアの宝石学的特徴を紹介する。表紙の写真は、サファイアが発見されるouachatiteの脈岩のサンプルの上に置かれたヨゴ渓谷産のサファイア原石である。最大のサファイア原石の重量は8.49カラットある。写真:Kevin Schumacher、提供:モンタナ州、Bozeman(ボーズマン)The Gem Gallery(ザ・ジェム・ギャラリー)のDon Baide

Hope Diamond(ホープダイヤモンド)やBlue Moon Diamond of Josephine(ジョセフィンのブルー ムーン ダイヤモンド)のような有名なダイヤモンドのおかげで、その他のファンシーカラーのダイヤモンドよりもブルーダイヤモンドに注目が集まっています。Gems & Gemology(宝石と宝石学)2018年夏号の特集記事は、過去10年間にGIAのラボで検査された15,000以上のブルー、グレー、バイオレットのダイヤモンドの特徴を紹介し、別の記事ではジンバブエのマランジェで産出されたファンシーダークブラウンブラックダイヤモンドの色の起源の研究結果を報告します。ダイヤモンドに関連するその他の内容としては、合成ダイヤモンドのチャートや地球を理解する上での天然ダイヤモンドの価値に関する新しいコラムなどがあります。また、霞ヶ浦の日本産ビーズ養殖真珠の研究、彫刻が施された初期のビザンチン様式のアルマンディン ガーネットの起源の探究、モンタナ州のYogo(ヨゴ)渓谷から産出されたサファイアの特性の検査も特集しています。

天然色のブルー、グレー、バイオレットのダイヤモンド:ディープカラーの魅力

ブルー/グレー/バイオレットの色範囲の最近発見された伝説的なダイヤモンド
最近発見されたブルーダイヤモンドが、ブルー/グレー/バイオレットの色の範囲内の伝説的な宝石とともに展示されている。左上から時計回り:30.62カラットのブルーハートダイヤモンド 写真:Chip Clark/©Smithsonian Institution(スミソニアン協会)、0.77カラットのファンシーダークグレーバイオレットのシールドカット 写真:Robert Weldon/GIA、1.23カラットのファンシーダークグレーダイヤモンド 写真:GIA、45.52カラットのファンシーディープグレイッシュブルーのホープダイヤモンドとファンシーディープブルーの31.06カラットのWittelsbach-Graff(ヴィッテルスバッハ·グラフ)ダイヤモンド 写真:Robert Weldon/GIA、提供:スミソニアン協会

ブルー/グレイ/バイオレットの色の範囲のほとんどすべてのファンシーカラーダイヤモンドの色相は、構造上欠陥があったり、インクルージョンがあることなど、主に4つの原因のために発生します。G&G夏号の特集記事では、Sally Eaton-Magaña、Christopher M. Breeding、James E. Shigleyが、これらの色の原因となるメカニズムについて報告します。著者らは、過去10年間にわたってGIAのラボが検査した15,000以上の天然で未処理のブルー/グレイ/バイオレットのダイヤモンドの宝石学的特徴とスペクトル特性について詳しく説明します。

マランジェ (ジンバブエ) のブラックダイヤモンド: 天然照射とグラファイトインクルージョンの研究結果

フラクチャー内で放射線による染みが観察されるマランジェダイヤモンドのDiamondViewおよび可視光の画像。
2つのダイヤモンドのDiamondViewおよび可視光の画像。ダイヤモンドにあるフラクチャー内で放射線による染みが観察される。DiamondViewによる画像で発光がない部分は、ダイヤモンドのフラクチャーに沿って放射線による損傷が多大であることに関連している。写真および画像:Karen Smit

ジンバブエのMarange(マランジェ)にある漂砂鉱床で採鉱されたグラファイトを含有するダイヤモンドは、宝石質の素材を得るために熱処理される可能性がありますが、このため自然に成長したブラックダイヤモンドからこれらの標本を区別するのが困難になるかもしれません。Karen Smitおよび共著者は、処理された素材から区別できるような特性を記録に残すために、Marange(マランジェ)で産出された40個のファンシーダークブラウンブラックダイヤモンドの特徴を検査します。著者らは、これらのダイヤモンドの色の様々な原因を明らかにします。

インドのTELANGANA(テランガーナ)州にあるGaribpet鉱床からの彫刻が施された初期ビザンチンのアルマンディン:古代の海上シルクロードにおけるガーネットの貿易の証拠

彫刻が施された初期ビザンチンの宝石にあるインクルージョンとGaribpet鉱床から産出されたガーネットの比較
彫刻が施された初期ビザンチンの宝石にあるインクルージョン (左)とGaribpet鉱床から産出されたガーネット (右) 。AおよびB: インクルージョンが中心に豊富にあり、縁にはあまりなく、繊維状のシリマナイトが境界にある。CおよびD: 不規則な形のイルメナイト。EおよびF: 丸みを帯びたクォーツ結晶。GおよびH: 特徴のあるグラファイトインクルージョンがある大きい長い角柱状のアパタイトの結晶 (a)、短い角柱状のジルコン (z) およびモナザイト (m) の結晶。顕微鏡写真:H.A. Gilg

H. Albert Gilg、Karl Schmetzer、Ulrich Schüsslerによる研究は、ビザンチンの貨幣で人気がある、段差を付けたキリスト教の十字架のモチーフが彫刻されたアルマンディン ガーネットに焦点を当てています。非破壊的に分析を行った結果、このアルマンディンはおそらくインドのGaribpet鉱床から産出されたものであることが判明し、中世初期にインドの東海岸とビザンチン帝国の間でガーネットの貿易が行われていた証拠となります。

霞ヶ浦の養殖真珠: 生産および宝石学的な特徴

中国にある太湖で採取された淡水有核養殖真珠でできたストランド。霞ヶ浦真珠と同じ<I>イケチョウガイ </I>を交配して養殖された。
このストランドの真珠は、中国にある太湖で採取された淡水有核養殖真珠である。イケチョウガイ(Hyriopsis schlegelii)とヒレイケチョウガイ(Hyriopsis cumingii)を交配して養殖されている。サイズは直径10mmであり、霞ヶ浦産の真珠と同様の色範囲および光沢を有する。写真撮影:Ahmadjan Abduriyim

淡水真珠養殖は、第二次世界大戦の前に日本で始まり、1970年~1980年の間に最も繁栄しました。その後、中国が世界最大の養殖真珠の生産国となりました。日本で2番目に大きな湖である霞ヶ浦における日本産養殖真珠の生産量は比較的少なくなっていますが、これらの養殖真珠は米国やヨーロッパでかなり人気が高まってきました。Ahmadjan Abduriyimは、日本の淡水有核真珠の歴史、生産の現状および多様な色を有する標本の特徴に関して説明します。

モンタナ州のYogo(ヨゴ)渓谷から産出されたサファイアの宝石学的な特徴

36カラット以上のヨゴ・サファイアが飾られているセット
このセットには、36カラット以上のYogo(ヨゴ)渓谷産サファイアが飾られている。提供:RareSource(レア・ソース) 写真撮影:Robert Weldon/GIA

Yogo(ヨゴ)渓谷より産出されたサファイアは、そのクラリティ(透明度)と鮮やかなブルーの色で有名であり、ユニークな特徴があるため経験豊富の宝石鑑別士が簡単に識別することができます。しかし、長い間、鉱山の利益が低迷しているため、この地域で長期的な活動を維持することが困難となってきました。この記事では、Nathan Renfro、Aaron Palke、Richard Bergが、米国にあるこの重要な宝石鉱床より産出されるコランダムの歴史、宝石学特性、微量元素の化学に関してすべて説明します。

合成ダイヤモンドチャート

合成ダイヤモンドの特徴
G&G 2018年夏号には、合成ダイヤモンドの特徴を示す折り畳み式の掛図が含まれています。

Sally Eaton-MagañaおよびChristopher M. Breedingによって作成されたこの最新の掛図は、高温高圧(HPHT)法および化学蒸着 (CVD)法を用いて製造された合成ダイヤモンドの成長過程および主要な宝石学における分光学的特徴を視覚的に示しています。また、さらなる研究のためにその他のリソースも提供されています。

ラボノート

張り合わせ石の図。
この図は、ベリル (緑柱石)の提出モデルおよびガラスの張り合わせを示している。分かりやすくするために最終的なファセッティングが表示されている。A: 最初のガラスの部分(グリーン)が、ベリルの中心部 (グレー) に取り付けられる。B: 2番目の部分に対して表面を平らにするために、中心部と最初の部分の両方が切断される。C: 2番目の部分 (ティール) が取り付けられる。D: その部分が再びカットされる。E: 3番目の部分 (ブルー) が取り付けられる。F: この張り合わせをはっきりと見せるために180°回転させて示されている。完成品の表面を作るために現在あるすべての部分がカットされる。G: 4番目と最後の部分 (パープル) が取り付けられる。H: 分かりやすく見せるために省略されているが、張り合わされたパビリオンは、クラウンの場所を作るためにおそらく平らに研磨される。最後に、クラウン (ピンク) が取り付けられる。この図はOnshape CADソフトウェアを使用して生成された。

GIAのラボは、べリルとガラスを張り合わせて作られたエメラルドの模造品、HPHT法で製造された1,092粒の合成メレーダイヤモンドの中で発見された1粒の天然メレーダイヤモンド、大きなピンクがかったオレンジのCVD合成ダイヤモンドについて報告します。

地球の深部で誕生するダイヤモンド

ダイヤモンド内のリングウッダイトと地球のダイヤモンド
リングウッダイトとは、遷移層において地球の表面下520~660kmの間で発生する鉱物のオリビン (Mg2SiO4) が高圧で固められた鉱物である。初めて地上で観察されたこの鉱物は、ブラジルのJuínaで産出されたダイヤモンド内で発見された (左上) 。この30µmのインクルージョン (左下) の含水率は1.4重量%であることから、全世界の遷移層には地球の海洋と比べて少なくとも2.5倍の水分が含まれていることが判明した。ダイヤモンドの大部分はクラトンのリソスフェアで生成される (ここではイエローダイヤモンドとして示されている)。スーパーディープダイヤモンド (ここではホワイトとブルーのダイヤモンドとして示されている) は、より稀少であり、多くの場合は深さ410~660kmにも及ぶ遷移層などの非常に深い場所で生成される。

G&Gの最新のセクションでは、地球の地質形成を理解する上でダイヤモンドがいかに重要であるかについて説明しています。本号のコラムでは、地球の深部で発見された水分の深度を理解する際のダイヤモンドの役割に焦点を当てています。

ミクロの世界

メキシコ産コーパルにあるキノコの形をしたインクルージョン
メキシコ産のこのコーパルには、非常によく保存された、裸眼で観察できるキノコの形をしたインクルージョンが含まれていた。顕微鏡写真撮影:Nathan Renfro、視野9.59mm

コーパルに包まれたキノコのようなインクルージョン、動物のヒゲのように見えるメレラニ鉱のインクルージョンがあるタンザナイト、4本および6本の線が広がるスタースピネルなどが、顕微鏡写真法およびインクルージョンのセクションで紹介されている標本です。

ジェムニュース インターナショナル

太陽光同等の光(左)と白熱灯(右)の下で観察されたガーネット。
左: 3つのガーネットの原石 (左から右、石 2、3、4) とファセットカットされた1つのガーネット。色温度6000K (太陽光シミュレータ)にてLEDライトの光源で撮影。右: 同じ石を色温度3100K(白熱灯シミュレータ)にてLEDライトの光源で撮影。2.705カラットのファセットカットされたガーネットは、8.08 × 7.18 × 5.49mmである。写真撮影:Kevin Schumacher

「世界中からの報告」では、エチオピア産の変色するグロッシュラーガーネット、モザンビークで産出されたグリーンブルーのマシーシェタイプのべリル、「宝石および持続可能な開発ナレッジハブ」の進展、DiamondView機器によるガラス充填処理されたルビーの分離を紹介します。

Jennifer-Lynn Archuleta は、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集者です。