今季の売上高:米国は4%~5%増加した一方、中国は依然後れを取る
1月 21, 2019

米国のホリデーシーズンの売上高は、株式市場の混乱と政府閉鎖にもかかわらず、新年まで引き続き好調に推移しました。売上高は、従来の店舗とネットショップのサイトの両方で増加しました。
すべての関係者が2018年の売上高は堅調であったと同意しています。De Beers(デビアス)の調査によると、ダイヤモンドジュエリーの売上高は昨年同時期と比べて4.4%増加しました。また、National Retail Federation(全米小売業協会)は、全体の小売売上高が2017年と比べて4%~5%増加したと予測しています。
2018年11月初旬、Tiffany’s(ティファニー)は、同年第3四半期までの同一店舗売上高は北米では5%、海外では7%増加したと発表しました。ティファニーは、ホリデーシーズンの売上高が同様の伸び率で増加すると予測しました。Kay Jewelers(ケイ・ジュエラーズ)、Zales Corp(ゼールズ社)、Jared (ジャレッド)の親会社であるSignet Group(シグネット・グループ)は、経営陣の離職、信用業務およびショッピングモールにある店舗の改装における問題から復興中のため、ホリデーシーズンの売上高は横ばいになると予測しました。
一方、個人経営による店舗の売上高は、チェーン店をはるかに上回ったようです。高級小売宝石店を対象にしてCenturion(センチュリオン)が行った調査によると、個人経営の小売業者の34%が、クリスマス前の週の間に売上高が2017年に比べて10%以上増加し、さらに24%が6%~10%の増加を報告しました。これらの増加は、ブラックフライデーとクリスマスの間の1か月間の増加と一致しました。調査に回答した宝石商の3分の2は、売上高が年間を通して2017年に比べて増加し、そのうちの半分以上が10%以上増加したと報告しています。
センチュリオンが行った調査の宝石商の3分の1は、ホリデーシーズンの最終週に売上高が減少したと報告しましたが、年間を通して売上高が減少した宝石商はわずか18%に留まりました。
一抹の不安となる傾向が1つあります。販売された商品の大半は2,500ドル(約27万円)以下でしたが、ミレニアル世代は平均してその売上高のわずか4分の1しか占めていませんでした。しかし、調査の対象となったほとんどの宝石商のオンラインでの売上高は、わずかな割合に留まりました。
売上高が増加した小売業者もいれば、低迷した業者もいるという両極端に分かれた状態の差は広がる一方である、とMcKinsey & Co.(マッキンゼー社)は報告しています。その原因として、数多くの店舗が閉鎖し、かつて米小売り最大手であったSears(シアーズ)の倒産を引き合いに出しています。当然のことながら、事態を悪化させる要因は明らかにオンラインでの販売ですが、問題はそれよりも深刻になっています。
ほとんどの小売売上はオンライン販売を通して成長を遂げており、小売業者は「オムニチャネル」の販売を受け入れる必要があるという明白な現状に加えて、同様に重要である傾向が他にもあります。たとえば、ミレニアル世代とジェネレーションZの消費者は、大企業や有名なブランド会社に不信感を抱いており、透明性があり、親しみやすく、社会的責任があるように思われる新しくて「楽しい」ブランドを求めています。
さらに、一部の電子商取引サイトは高級品のメーカーと直接消費者をリンクしたり、オンラインでの検索や購入プロセスを自動化することができるアプリもあります。要するに、購入の意思決定は、ますます人工知能と自動化を利用して達成されるようになるということです。
中国での小売業は、米国との貿易戦争および世界の株式市場の乱高下に見舞われています。香港と中国の宝飾品売上の約10%を占めるChow Tai Fook(周大福)は、2018年最終四半期の同一店舗売上高が中国本土で7%、香港とマカオで6%減少したと報告しました。「宝石がセットされている」ジュエリーの売上高は、それぞれ5%および8%減少しました。
香港では、ジュエリー、腕時計、時計の11月の小売売上は、すべての販売店で3.9%減少した、とHong Kong Trade Development Council(香港貿易開発局)は報告しました。
ダイヤモンド
デビアスは、ホリデーシーズンを喜ばしい結果で終えた後、1月21日~24日に割り当てられる大量のダイヤモンドの原石と共に市場に戻ってくるでしょう。
ロシアのAlrosa(アルロサ)は、2018年に44億1000万ドル(約4807億円)相当の原石を販売し、これは2017年と比べて6%増加となった、と発表しました。しかし、小さめのダイヤモンドの在庫が過剰となり、ダイヤモンド製造業者に対する銀行からの与信枠の引き締めが続いているため、2018年の最終四半期には売上が低迷しました。アルロサは、1月14日~15日に1月の販売を予定しています。
小売業の需要が好調であったにもかかわらず、小さなダイヤモンドの過剰供給が続き、相次ぐ与信枠の削減により数多くの企業が破産寸前に陥ったりと、ダイヤモンドのパイプラインの中間には依然として大きな課題があるため、業界はこれら2社の販売に注目しています。
International Diamond Manufacturers Association(国際ダイヤモンド工業協会)の会長、Ronnie VanderLindenは、これらの問題は新年に良い方向に向かうだろうと語りました。
ある銀行がアントワープ支店を閉鎖したり、他の銀行は担保の要件をずっと引き上げています、と彼は説明しました。問題は、担保の要件を引き上げている銀行や在庫の一部を担保として保有している別の金融機関のため、企業がビジネスを営むことが困難になっているということです。商品はもう企業のものでなくなっているのです、と続けました。
市場の状況が改善されたにもかかわらず、与信枠が改善されない理由の1つとして、国際金融規制が緩和されていないことが挙げられます。多くの規制があり、違反に対する罰金は巨額となるため、多くの銀行が違反するリスクをとることは避けています、とVanderlindenは説明しました。
ラボで製造されたダイヤモンド
Financial Times(フィナンシャル・タイムズ紙)が最近発表したレポートによると、ラボで製造されたダイヤモンドの1カラット当りの生産コストは、現在300ドル~500ドル(約3万3000円~5万5000円)であり、2008年の約4000ドル(約40万円)から急落しています。このため、800ドル(約8万7000円)で販売されているデビアスの1カラットのダイヤモンド、Lightbox(ライトボックス)からは大幅な利益が生まれることになります。
この記事では、ラボで製造されたダイヤモンドは市場の約2%(生産量による)を占めていますが、年間15%~20%増加していると報告しています。また、天然ダイヤモンドと比較して、ラボで製造されたダイヤモンドは平均して約43%割安であり、2018年には29%割安となっていました。
デビアスでCEOを務めるBruce Cleaverは、ラボで製造されたダイヤモンドの利益は非常に高いと報告しました。デビアスは、天然ダイヤモンドの資本支出およびマーケティングには100億ドル(約1兆900億円)を費やす予定であるものの、ラボで製造されたダイヤモンド、ライトボックスの製造とマーケティングには今後4年間で約1億ドル(約109億円)を費やすと発表しました。
Diamond Foundry(ダイヤモンド・ファウンドリー)は、供給不足が原因で、ラボで製造されたダイヤモンドの卸売価格を1月に15%引き上げると発表しました。同社は、1カラット以下のダイヤモンドをカラット単価1000ドル(約10万円)またはそれ以下で販売していますが、それより大きいラボで製造されたダイヤモンドは、certified-unique(認定済みのユニーク)と呼ばれており、同等の天然石の約半分のコストの価格となっています。
デビアスとダイヤモンド・ファウンドリーは両社とも需要の増大に対応するため、年末までに新しい生産施設をオープンする予定です。
Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。