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ロックフェラーとファンシーブルー、2018年春のオークションで注目の的となる


無色とピンクのダイヤモンドからぶら下がっている大きいブルーの梨型のダイヤモンド。
ロンドンの高級ジュエラー、Moussaieff(ムサイエフ)がマウントしたこの8.01ctのファンシービビッドブルーダイヤモンドのペンダントは、5月29日に香港で行われたクリスティ―ズのオークションで最高入札価格2040万ドル(約22.2億円)超で落札された。写真提供:クリスティーズ

2018年春のオークションでは、記録を更新しなかったものの最高級のファンシーカラーダイヤモンドと宝石の価格が堅調に推移し、低迷していた状態から回復しました。しかし、今シーズン最大のオークションイベントは、PeggyとDavid Rockefellerの遺産品の落札であり、その合計落札価格は8億3570万ドル(約908.8億円)超以上にも達し、そのうちのほとんどが慈善事業に寄付される予定です。

6月12日に行われたChristie’s(クリスティーズ)のMagnificent Jewels(壮大な宝石)での販売と共に競売にかけられた、遺産品のうちジュエリーの落札による収益は、78万ドル(約8480万円)と予測されていたものの合計312万ドル(約3.4億円)となりました。ロックフェラーコレクションの最高級の19品は、宝石商のRaymond Yard によってセットされ、372,000ドル(約4050万円)で落札された5カラットのカシミールサファイアおよび348,500ドル(約3790万円)で落札されたペリドットダイヤモンド のジュエリーのセットです。 

クリスティーズは、5月に10日間にわたってRenoir、Rivera、Matisse、Picasso、Monet、O’Keefeなどのアート作品のロックフェラー・コレクションをその他の装飾用の芸術品とともに競売にかけ、数多くの慈善団体のために8億3260万ドル(約905.5億円)を集めました。
 
ファンシーブルーダイヤモンドは、定期的に行われるオークションで目玉商品となっていました。このシーズンが始まる前に、3月のBaselworld show(バーゼルワールドショー)のディーラーは、ファンシーブルーは、特にファンシーピンクと比較して割安であると信じているクライアントから何回も電話をもらっていました。このシーズンの後、そのようなことはおそらくないでしょう。

5月29日、クリスティ―ズは、GIAがグレーディングを行った8.01ctのファンシービビッドブルーダイヤモンドを約2050万ドル(約22.2億円)、カラット当り255万ドル(約2.8億円)で売却しました。この価格は記録を更新しませんでしたが、非常に堅調な価格でした。

GIAがグレーディングを行った3.09ctのファンシーインテンスブルーダイヤモンドは、4月にニューヨークで行われたクリスティーズのオークションで537万5000ドル(約5.8億円)で入札され、このグレードのダイヤモンドに対してかつてオークションで支払われた最高のカラット単価である170万ドル(約1.8億円) を記録しました。翌日、同じグレードの3.37ctの隅切り長方形ダイヤモンドが記録を破り、6,663,000ドル(約7.2億円)、カラット単価190万ドル(約2.1億円)で落札されました。このダイヤモンドもGIAがグレーディングを行いました。

ダイヤモンドは以前に記録を更新したものよりもはるかに小さい(10カラットをかなり下回る)ため、カラット単価が高くなることは異例でした。

ダイヤモンドで囲まれた楕円形のピンクサファイア。
5月15日にジュネーブで行われたサザビーズのオークションにて230万ドル(約2.5億円)で落札された95.45ctのスリランカ産ピンクサファイアとダイヤモンドのペンダント。写真提供:Sotheby’s(サザビーズ)

サイズではなく、産地が今シーズンの最も重要なブルーダイヤモンドにおいて重要な特性となっていました。6.16ctのFarnese Blue(ファルネーゼ・ブルー)は、5月16日のSotheby’s(サザビーズ)のジュネーブオークションで670万ドル(約7.4億円)で落札され、これはオークション前の推定価格のほぼ2倍となりました。GIAがファンシーダークグレーブルーとグレーディングしたこのダイヤモンドは、インドの有名なGolconda(ゴルコンダ)鉱山から産出され、パルマ公の娘にあたる王妃エリザベッタ・ファルネーゼが1714年にスペイン国王のフィリペ5世と結婚した際に最初に贈られました。その後、このダイヤモンドは7世代の手に渡って受け継がれ、エリザベッタとフィリップの子孫が他のヨーロッパの家族と結婚し、ダイヤモンドは今年オークションにかけられるまでスペインからフランス、イタリア、オーストリアへと旅をしました。

その一方、ファンシーピンクダイヤモンドは、今シーズン、特にシーズンの初めに苦戦しました。同じくサザビーズのニューヨークでのオークションでは、7ctのスクエアカットのファンシーインテンスピンクのダイヤモンドは、420万~520万ドル(約4.6~5.7億円)と推定されていましたが、買い手が見つからず、7.37ctのファンシーインテンスオレンジピンクのエメラルドカットのダイヤモンドも不成立に終わりました。

ラウンドのルビーがダイヤモンドに囲まれているリング。
Tiffany & Co.(ティファニー & カンパニー)によってセットされ、有名なソングライター、Irving Berlinの遺産品であった4.59ctのルビー。6月12日にニューヨークでクリスティーズのオークションにて115万ドル(約1.3億円)で落札され、オークション前の推定額の2倍となった。写真提供:クリスティーズ

2つの重要なルビーは、強気な価格に達しました。24.70ctのビルマ産ルビーが、香港で行われたサザビーズのオークションで1100万ドル(約12億円)で落札されました。その一方、6月12日にニューヨークで行われたクリスティ―ズのオークションで最も話題となっていた商品の一つは、Tiffany(ティファニー)によってセットされ、有名なソングライター、Irving Berlinの妻が所有していたビルマ産の4.59ctのBerlin(バーリン)ルビーでした。この宝石は、115万ドル(約1.3億円)で落札され、オークション前の推定価格の2倍となりました。さらに、95.45ctのスリランカ産ピンクサファイアが5月15日のサザビーズのオークションで230万ドル(約2.5億円)で落札されました。

5月29日に香港で行われたクリスティ―ズのオークションでは、一般人のバイヤーが、それぞれ7.46ctと6.81ctのパライバトルマリンのセットに278万ドル(約3億円)、カラット当り194,730ドル(約2100万円)で落札し、パライバトルマリンが初めてオークションの上位10位に入りました。これは、この宝石にオークションで支払われた世界で最高の価格でした。 

梨型のダイヤモンドに囲まれており、その他の梨型をしたダイヤモンドからぶる下がっている梨型のパライバ トルマリン。
パライバ トルマリンがオークションで上位10位に入ることは稀であるが、それぞれの重量が7.46ctと6.81ctあるこのセットは、5月29日に香港で行われたクリスティ―ズのオークションでほぼ280万ドル(約3億円)で落札された。カラット単価の194,730ドル(約2100万円)は、パライバ トルマリンとしては最高記録となった。写真提供:クリスティーズ

落札されたその他の重要な無色のダイヤモンドは以下の通りです。これらはすべてGIAがグレーディングを行いました。

  • 5月15日にサザビーズのオークションで926万ドル(約10億円)で落札された51.72ct、GIAによるカラーグレード F、IFダイヤモンド
  • 6月12日に行われたクリスティ―ズのオークションで260万ドル(約2.9億円)で落札された(推定価格の低価格をわずかに上回る)20.47ct、カラーグレードD、FI オールドマインカットダイヤモンド
  • 6月12日にニューヨークのクリスティーズで157万ドル(約1.7億円)で落札された、カラーグレード D の可能性がある、15.36ct、IF ハート型ダイヤモンド 
ラウンドブリリアントのダイヤモンド。
5月15日にサザビーズのオークションで926万ドル(約10億円)で落札された51.72ct、カラーグレード D、IFダイヤモンド。写真提供:Sotheby’s(サザビーズ)

今シーズンは低迷して始まったにもかかわらず、ヨーロッパおよびアジアのクリスティーズで会長を務めるFrancois Curielは「稀で美しい宝石が引き続き堅調である」ことを指摘しました。また、今シーズンのオークションで大きなファンシーカラーダイヤモンドが競売にかけられなかったということは、いかに稀少であるかを示しているだけであり、需要が弱いというわけではないと伝えました。

定期的に予定されている販売に加えて、サザビーズは、より商業的なサイズのルースダイヤモンドのオンラインオークションを数回行っています。同社は、6月14日から2週間にかけて1、2、3、4、5カラット (3つのラウンド、1つの梨型、1つのエメラルドカット) の5つのダイヤモンドを販売しました。12月にはルースダイヤモンドのオークションが再度行われる予定です。

ダイヤモンドのペンダントからぶら下がっている大きい真珠。
フランスの王妃、Marie Antoinetteが所有していた18世紀のカラーレスダイヤモンドと天然真珠のペンダント。11月12日にジュネーブでサザビーズのオークションにかけられる予定であり、100万ドル~200万ドル(約1.1億円~2.2億円)で落札されると推定されている。写真提供:Sotheby’s(サザビーズ)

歴史上最も伝説的な王妃、Marie-Antoinetteの宝石が、秋のオークションで注目の的となるでしょう。サザビーズは、Bourbon Parma家の王室の宝石の一部として、大きなダイヤモンドのネックレス、天然真珠のネックレスとダイヤモンド、真珠のペンダントなど、彼女の宝石を11月12日にジュネーブで行われるオークションで販売する予定です。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。