ポスドクプログラム、科学者に稀少な研究の機会をもたらす
11月 16, 2016

Evan Smithは、GIAでの研究に初めて使用した大きなダイヤモンドを見て非常に驚きました。
かつては小さくて、低品質のダイヤモンドでずっと作業していたものでした、と2015年にニューヨークの研究部門で働き始めたSmithは述べます。 私はGIAが保管しているさまざまなダイヤモンド、そして非常に高価なものを見れるのを楽しみにしています。これらのダイヤモンドは他の施設では研究に使用するのは不可能なのです、とも述べました。
ダイヤモンド地質学を専門とするSmithは、「近代宝石学の父」と称されるGIAの元社長に敬意を表して、2014年に設立されたRichard T. Liddicoatポスドク特別研究員プログラムの一員として、GIAで働いています。このプログラムでは、鉱物学、地質学、物理学、物質科学および宝石学に関連する他の分野の研究に従事する研究者が、宝石学に関するデータ、機器、そしてラボに提出される稀少で大きい宝石を研究に使用することができます。 このプログラムは、各研究者の専門知識および興味によってそれぞれが特別に計画されており、研究員がダイヤモンド、カラーストーン、真珠および機器の開発に関連する基本的な問題を検査する機会を提供しています。
素晴らしい才能があり非常に意欲的な学術研究者がこのプログラムを通じてGIAに参加しています、とGIA研究開発のディレクターDr. Wuyi Wangが語ります。 ポスドク特別研究員は、GIAの経験豊富な研究者や宝石鑑別士とともに、GIAのラボに提出される宝石を検査し、研究します。
Liddicoatポスドク特別研究員プログラムは、ダイヤモンドやその他の宝石の特性に関するGIAの広範かつ継続的な研究のうちの一部です。 そのため、Liddicoatポスドク特別研究員は、創造的で独立した公表できる研究を行うことが期待されており、GIAの科学者だけでなく、外部の研究機関や大学と協力することが推奨されています。
Smithは、非常に稀少なダイヤモンドをいくつか観察し、何年もの間ダイヤモンドを検査し観察してきた経験豊富な人々の知識や才能から学び、これらの機会が「地質学においておそらく未知であったダイヤモンド地質学のいくつかの課題を解明するのに役立つことを願っている、と述べます。
Evan Smith:ダイヤモンドのインクルージョンと地球の形成への手がかり
カナダのトロント近郊出身のEvan Smithは、ダイヤモンド地質学の研究を専門としています。ダイヤモンド地質学とは、地球深部でダイヤモンドが形成される過程から表面にダイヤモンドが現れる過程にいたるまでに関するすべての研究であると彼は説明します。 地質学者である彼は、地球がどのように形成されたかをより深く理解するためにダイヤモンドを使用しています。
ダイヤモンドは地球深部から発生された炭素の物理的なサンプルであり、ご存知のように46億年前から今日に至るまで、炭素は地球の進化に密接に関与しています、と彼は述べます。 つまり、ダイヤモンドは、大陸の形成やプレートテクトニクスの始まりのような様々な過程に関する記録を示唆するということになります、と続けます。
大学卒業後、彼は金、銅または他の鉱物の鉱床の探査を手掛ける企業で働いていました。その後、カナダ北部にあるエカティダイヤモンド鉱山でダイヤモンドを含有する岩石に関する様々な詳細の特徴を研究していました。 研究においてダイヤモンドを利用できるのは通常困難または不可能であり、GIAではそれが可能となるため彼はGIAで博士研究員プログラムに参加することに興味を抱きました。
ダイヤモンドは、地球上で最も科学的に貴重な鉱物の一つですが、宝石として多大な価値があるため、研究するという目的でダイヤモンドを利用することは、困難なことが多いのです、と彼は説明します。 GIAは数多くのダイヤモンドをグレーディングするため、稀少であり通常のものとは異なるダイヤモンドがここでよく見られる、とも述べます。
Smithは、ダイヤモンドのインクルージョンつまりダイヤモンドによって地上にもたらされた物質の研究に従事しています。
ダイヤモンドが成長するとき、周囲の鉱物の破片や地球深部にある液体が閉じ込められることがあります。 深いとは、地球深部へ約100マイル(161km)のことであり、場合によっては約1798マイル(2900km)も深いところにある核-マントル境界のことを意味します、と彼は言います。 火山の噴火によってダイヤモンドが表面に運ばれるとき、ダイヤモンドは内部に閉じ込められたすべてのインクルージョンを保護して隠します。 地球の奥深くに潜む自然のままの試料を提供できる鉱物はダイヤモンド以外他にありません、と続けます。
Smithの研究は、稀少な種類のダイヤモンドで観察されるインクルージョンの特徴を体系的に分類化し、どのようにダイヤモンドが形成されて、それが地球の進化にどのような意味をもたらすかを理解するのに役立つ情報を発見することに重点を置いています。 GIAに参加する前、小さくて価値があまりないダイヤモンドで研究するのに限られており、特に大きな、高品質のダイヤモンドはユニークな異なる方法で形成する可能性があるため問題となっていた、と彼は言います。 GIAではさまざまなダイヤモンドを研究に利用できるので、広範囲にわたる地質学の状態で形成されたダイヤモンドを観察できる機会が与えられます。
また、Smithは、窒素、水、二酸化炭素やメタンなど、地球深部での挙動に手がかりを与えるダイヤモンドにある液体も探査しています。
数年前、少なくとも3つの異なる大陸で産出されたダイヤモンドに閉じ込められた液体窒素の非常に小さなインクルージョンを鑑別しました。 窒素は、非常に強い圧力で挿入されたため、室温で液体になりました。 これらの液体は、異なる種類のダイヤモンドがどのように形成され、大気がどのように形成されて時間の経過とともに変化したことについて手がかりを与えます、と彼は説明します。
彼が行っているダイヤモンドの研究および彼が探求している地球の形成に関する手がかりを発見するのは、人々がダイヤモンドをジュエリーとして使用していなければ、不可能であるとSmithは述べます。
ダイヤモンドは宝石として望ましいがゆえに、採鉱されるのです。 そうでなければ、ダイヤモンドは岩石に埋もれ、川の砂利に隠れたままになっているでしょう。 そうしたら、ダイヤモンドについて研究したり、地球についての素晴らしい秘密を発見できないでしょう、と彼は説明します。

Elena Sorokina: コランダムの起源と進化
ロシア出身のElena Sorokinaは、2007年にモスクワのRussian State Geological prospecting University(RSGPU MGRI:ロシア国立地質探査大学)を卒業し、 宝石学で博士号の取得に取り組み始めました。 2009年にFedorovsky All-Russian Research Institute of Mineral Resources (FGUP VIMS)へ転校し、 次席研究員を務めたときに、博士号取得のための研究を継続しました。 FGUP VIMSでは、彼女は、地質探査段階から鉱石の加工製品の研究に至るまで鉱床の研究に従事し、伝統的な鉱物学者として働いていました。
Sorokinaは、2012年にモスクワのFersman Mineralogical Museum of the Russian Academy of Sciences(ロシア科学アカデミー フェルスマン鉱物博物館)に研究員として入社しました。 ドイツ学術交流会(DAAD)から奨学金を受賞した後、Institute of Gemstone Research Idar-Oberstein(イダー=オーバーシュタイン宝石研究所)で重要な位置を占める、ドイツのJohannes Gutenberg University Mainz(ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ)のCenter of Gem-Materials Research(宝石素材研究センター)で客員研究員を務めました(2013年~2014年)。 大学マインツでは、レーザーアブレージョン誘導結合プラズマ質量分析装置および異なる分光装置などの、非破壊式および微小破壊の技術を研究に取り入れ、研究員としての経験をさらに広めました。
Sorokinaは、2015年9月にカールスバッドのGIAでポスドク研究員となり、宝石のコランダムの起源と進化および自然環境における結晶質の素材内にある鉱物の形成に関する理論や知識に焦点を当てています。 彼女は、地質学的な事象が発生した際の鉱物の結晶化および/または再結晶化、成長および精製に関連する課題について研究しています。
GIAは、経験が浅い若手の科学者に素晴らしい機会を与え、競合する革新的な研究を開発するために必要な独立性のレベルを彼らが示すのを可能にします、と彼女は言います。 非破壊式および微小破壊の技術も含めて、すべての設備や装置がニューヨークとカールスバッドのGIAラボで利用することができ、これは宝石を研究する上で大きな利点となっています、と続けます。
Sorokinaの研究の焦点は、主に、宝石学、鉱物学、地質学、物質科学や工学などの異なる科学分野にまたがっています。
GIAは、優れた研究や国際化のために設備を取得し、この分野における学際的な共同作業のために完璧な環境を提供します、と2016年の秋にGIAを退社し、ロシアで宝石学の研究に従事しているSorokinaは説明します。

Aaron Palke:応用鉱物学と宝石の形成
地球科学の研究に従事する多くの科学者同様、Aaron Palkeは幼少の頃に岩石を集めて夏を過ごしたことをはっきりと覚えています。
私はモンタナの雄大な山脈に感動し、いつも私の父と一緒に鉱物を拾いに行くのを心待ちにしていました。 当然、私は地質学者になることを決心しました、と彼は語ります。
Palkeは博士号を取得するために鉱物学を研究し、 その間に鉱物の原子領域の構造を調査するために利用する分光技術(特に核磁気共鳴)に焦点を当てました。
将来進むべき道を決めていたときに、GIAのLiddicoatポスドク特別研究員プログラムを知り、彼は興味を抱きました。
宝石学は本質的に応用鉱物学の分野に属するため、私のような興味を持った者にはこのプログラムがぴったりだと思いました、と彼は述べます。 GIAで私が行っている研究は、宝石の形成に関して研究するために微量元素化学や宝石のインクルージョンを使用することに主に焦点を当てています。 私は、宝石のコランダムにおける異常な微量元素を分析するためにGIAのレーザーアブレージョン誘導結合プラズマ質量分析装置の施設を使用します。また、これらの堆積物が形成された地質条件を理解するためにサファイアのインクルージョンも分析しています、と続けます。
特に、ヨゴおよびその他のモンタナサファイアで見られる融解インクルージョンに関する彼の研究は、アルミニウムが豊富な低い結晶岩の部分溶融を介してそのサファイアが形成されたという結論に対していくつかの証拠を提供しました。
Palkeは、経験を積むためにGIAが貴重な機会を提供し、宝石学情報を利用できることに対して非常に感謝しています。 University of Queensland(クイーンズランド大学)とQueensland Museum(クイーンズランド博物館)で今年後半に新しいキャリアを遂行するのにGIAでの経験が役に立つと、彼は述べました。
ラボで使用する機器、研究する試料、優れた才能や知識を持った一緒に研究する人々を若手の科学者に提供できる施設は、GIAの他にはおそらくないでしょう、と彼は語ります。
Liddicoatポスドク特別研究員プログラムの要件と応募方法についてはこちらをご覧ください。詳しい情報に関しては、researchcareers@gia.eduまでEメールでお問い合わせください。
Amanda J. LukeはGIAのシニアコミュニケーションマネージャーです。 彼女は現在GIA Insider(GIA インサイダー)とAlum Connect(同窓生コネクション)の編集者であり、The Loupe(ルーペ誌)の元編集者でもあります。