驚異的なカボションの光学的効果
11月 11, 2016

現象は、Websterの辞書では「感覚を通してわかる物体または状況」と定義されており、これが、一部の宝石が驚異的だと呼ばれることの説明になるかもしれません。それとも、これらの宝石が「突出していて、普通ではない」ためでしょうか。
しかし現実には、これらの宝石の構造、内包物および特性が、光との相互作用でこのような方法で珍しい視覚効果、つまり宝石学の用語で言う現象をもたらします。これにより宝石が驚異的なものとなるのです。
ともあれ、私たちはこうした宝石が魅力的だと感じ、実際、特別だと認識するのです。

構造に起因する現象
オパール、ラブラドライト、ムーンストーンは、順番に積み重なった、素材の微細な層の中に形成されていて、現象はこうした独特の構造によって生じています。宝石の素材の様々な構造と光が相互作用を起こすと、色の閃光が発生します。
その様々に異なる構造が、光の特性とどのように相互作用するか見てみましょう。
オパールは、数百万の小さなシリカの球体からできています。これらは何層にも積み重なり、わずかに異なるシリカと水との混合物によって結び付いています。光がシリカの球体と相互に作用すると、光の回折によるスペクトル色の閃光が発生します。これらの色は、シリカ球体の大きさに依存します。小さい球体は青から緑色のスペクトル色を発生させ、大きめのものは赤を発生させます。この現象を遊色効果と呼びます。
ラブラドライトは、異なる化学組成を持つ2つの長石が交互に重なる層によって形成されています。光がラブラドライトと相互に作用すると、光の回折でラブラドレッセンスとして知られる現象が発生します。認識される色は、交互の層の厚さとその屈折率によります。
ムーンストーンは、厚さや規則性が異なる2種類の長石で構成されています。ムーンストーンの内部では、光はあらゆる方向に分散され、これがアデュラレッセンスとして知られる、特徴的な曇って青みがかった白色の光を生み出しています。
イリデッセンスは、周囲の素材と異なる屈折率を持つ薄い透明な膜を光が通過する際に発生します。石鹸の泡や、水に浮く油の薄膜といったカラーパターンが、イリデッセンスの例です。真珠層と真珠母貝が、イリディセントな光学的効果を見せる最適な構造になっていることがあります。オリエントは、真珠のイリデッセンスを表すのに使用される特殊な用語です。

内包物に起因する現象
星やキャッツアイは、並列構造のニードルや、空洞のチューブの小さな筋状の内包物によって引き起こされる種類の現象です。ニードルや空洞のチューブの筋が並列構造の場合、シャトヤンシー、またはキャッツアイと呼ばれます。交差している場合は、星が形成され、アステリズムと呼ばれます。星やキャッツアイの素材で最も良い結果を出すには、カボションのベースは内包物と平行にカットするべきです。これにより、カボションのドーム全体で均一な効果が得られます。シャトヤンシーやアステリズムの現象を持つ宝石は多くあります。クリソベリル、ルビー、サファイア、スピネル、ガーネット、トルマリン、ダイオプサイド(透輝石)、クォーツがその例です。
アベンチュレッセンスは、目に見える小さな板状の銅の内包物、また時にサンストーン長石内のヘマタイトの内包物からの反射光によって引き起こされるタイプの現象です。(サンストーン長石の場合、アベンチュレッセンスは業界ではシラーとしても知られています)。アベンチュリンクォーツでは、緑色のマイカのスパンコールがきらめく効果を生み、これがこの石が認識されるとおりの色となっている原因です。
光の特性に起因する現象
変色は、アレキサンドライトに最も顕著に発生する、別のタイプの現象です。アレキサンドライトの色はクロムが発生させています。これが、視野光の種類に応じて変化する、赤と緑の最適なバランスの理由です。最高級のロシア産アレキサンドライトは、日光や蛍光灯の下では緑に見えます。白熱光では、アレキサンドライトは赤く見えます。この現象が、「昼はエメラルド、夜はルビー」というロマンチックな表現を生みました。ロシア皇帝アレクサンドル2世にちなんで名付けられたアレキサンドライトは最も貴重な変色性の宝石ですが、特定の種類のサファイア、スピネルやガーネットも、変色性を示すことがあります。
なぜ一部の宝石はカボションとして加工されるのですか?
カボションという用語は「頭」を意味するフランス語の "caboche"に由来し、ファセットに対して、成形され、研磨された宝石のことを指します。また、細かい傷は、ファセットカットされた石よりもカボションのほうが目立たないため、柔らかめの石をカボションとして彫ることも一般的に行われています。
光の特性と、宝石を通過する光の透過性を表す不透明度は、宝石のカット方法を決める際に考慮される主な要因です。宝石が不透明である場合、通常カボションとして加工されます。アステリズムやシャトヤンシーを持つ石は、これらの現象の原因となっている細かいニードル状の内包物が最も良く見えるよう、ドーム形のカボションにカットされます。ファセットカットにした場合、見えなくなるためです。
決定は、最終的には宝石細工アーティストやクライアントの好みに委ねられますが、石の現象の利点を最もよく活用するため、カボションに加工されることが多いです。
Sharon Bohannon、写真の研究、カタログ化、記録を行うメディア編集者。GIA GGおよびGIA AJP。Richard T. Liddicoat 宝石学図書館情報センターに勤務しています。