同窓会スポットライト

ツーソンで育った愛: GIA同窓会パーティーで地質学者とデザイナーに訪れた「信じられない幸運」


黒いタキシードを着た新郎と白いウェディングドレスを着た新婦が、結婚式で手を握り、見つめ合う。背景にはカリフォルニアの山々が見える。
GIA同窓会パーティーで出会ってから2年後、2017年にマリブで結婚式を挙げたMelissa SpencerとRobert Gessner。新婦であるSpencerがデザインした、二人にとって特別な意味のある象徴的なジュエリーを身に着けている。ルビー、ダイヤモンドとレッドスピネルのヘアピン、ビルマ産ルビーの結婚指輪、新婦をモチーフにしたSpencer Portraitブローチの新郎用ラペルピン、幸運を意味するクローバー(およびGessnerの象徴であるGemfieldsのエメラルド)を特徴としたSpencer Portraitリングなど、結婚式で着用された数多くの宝飾品の一部である。写真撮影:Trent Bailey 提供:Robert GessnerおよびMelissa Spencer

GIAは、毎年恒例のTucson gem and mineral shows(ツーソン・ジェム&ミネラルショー)開催中、大人気の同窓会パーティーを20年以上にわたって主催してきました。この楽しいイベントは、世界中から集まった友人や仲間と一緒においしい料理や飲み物を食べたり、ダンスをしたり、交流を深めたりする絶好のチャンスです。

しかし、あるカップルにとって、2015年の同窓会パーティーは楽しく人脈を作るイベント以上のものとなり、プライベート、キャリア、教育において新たな道が敷かれることとなる人生を変える晩が始まろうとしていたのです。

AJPを取得したRobert Gessnerは、アメリカへ初めて旅をしている間にこの宝石ショーに出席し、楽しいひと時を過ごしていました。南アフリカ出身の地質学者兼フィールド探索者であるGessnerは、何ヶ月も前からこの同窓会を楽しみにしていました。

これまで何年もの間にアフリカの鉱山へ来ていただいた時に、僕がお手伝いして知り合いになったフィールド宝石学者、科学者や作家や編集者の皆さんと再会する予定でした、とTanzaniteOneでおよそ10年間働いた後、当時Gemfields(ジェムフィールズ)で働いていたGessnerは語ります。

Gessnerがパーティーの出席簿に署名していたとき、列に並んでいた一人の女性に目が留まりました。ロサンゼルスを拠点にしたデザイナーでGJGのMelissa Spencerは、GIAのクラスメートとおしゃべりをしていました。彼女の薬指には、非常に大きなカクテルリングがはめられていました。彼は恋愛のことはさておき、GIAの社長、Susan JacquesがダンスフロアとサイレントオークションをオープンするとSpencerに近づきダンスを一緒に踊ってくれるかと尋ねました。

帽子を被り、ドレスを着ている女性(左)と彼女に腕を回す男性(右)。
Robert GessnerとMelissa Spencer、ツーソンで行われた2015年GIA同窓会パーティーにて。この夜の出会いは、この二人にとって運命的なものとなった。Spencerは、写真が撮影されているときに「Robbieが私のことを誰かと付き合っていたり、結婚をしていると思わないように、ヘリオドールリングを人差し指にはめていたの」と語る。写真:GIA

二人がダンスフロアを後にしたとき、Gessnerは勇気を出して彼女が結婚しているかどうか聞こうとしました。

「こんな素敵な晩に、旦那さんはどこに...」と言いかけたときに、彼女が突然そのリングを外したのです、と彼は笑って話します。結婚していなくて、そのリングはとっても気に入っていたデザインのひとつで、他の宝石商に良い印象を与えたかったのではめていただけだと、Melissaは教えてくれました。これは、信じられないほど運が良かったとしか思えません。僕はそれを聞いただけで十分でした。僕たちはその晩ダンスフロアで一緒に踊り、それ以来ずっと一緒です、と彼は続けました。

この出会いが二人のすべてを変えました。Gessnerは、ザンビアにあるGemfieldsのエメラルド鉱山で本部長になるための準備がすでに整っていましたが、翌週に帰国したとき、辞任届を提出しました。

自分にはこの人しかいないとわかるときは、わかるものですよ、とGessnerは言います。

Peter NormanやSteven & Co.(スティーブン & カンパニー)などの高級デザイナーのもとで働いていたSpencerは、すでに彼女の「生涯の夢」を叶え、彼女自身の会社、Spencer Fine Jewelry(スペンサー・ファイン・ジュエリー)を前年にオープンしていました。彼女のSpencer Collectionショールームは、デザイナーのコレクション作品を披露しており、ビバリーヒルズで成功を収めていました。さらに、Spencerは、GIA同窓会の地元の支部およびWomen’s Jewelry Association(レディースジュエリー協会)に貢献をもしていました。

18Kイエローゴールド、真珠母貝、ロッククリスタル(水晶)クォーツとダイヤモンドでできており、八角形に型取られた皇后テオドラの肖像。
受賞歴があるGJGのデザイナー、Melissa Spencerは、写真、ロッククリスタル(水晶)のクォーツとマザー・オブ・パール(真珠の母)を使用して独自のプロセスを作成した。このプロセスは、彼女の有名なコレクション、Spencer Portraitsの一部となっている。Spencer Portraitのコレクションのテーマは、蝶やサファリ動物、天使に至るまで広範囲に渡るが、主にビクトリア朝時代より多大な影響を受けている。Spencer Portraitコレクションのこの作品、「皇后テオドラ」では、イタリアのサン・ヴィターレ聖堂にあるテオドラのモザイクの印刷物が見られる。真珠母貝を特徴とする18Kイエローゴールドでできたこの作品には、15カラットのロッククリスタル(水晶)クォーツおよび0.27カラットのダイヤモンドが飾られており、ペンダントまたはブローチとして着用できる。

Spencerはカリフォルニア在住、Gessnerはアフリカ在住で長距離恋愛を育み、将来は彼がカリフォルニアに移住するという計画を立てました。彼の目標は、グラジュエイトジェモロジスト(GG)をカールスバッドのGIA本部から取得することで、このことは数人の同僚が通信教育を通じてディプロマを取得したのを知ったときから計画していました。そして、もう一つの目標は、もちろんSpencerにプロポーズすることでした。

Gessnerは、その夢を追い続け、2016年3月にキャンパスでGGを取得し、ブルーサファイアの婚約指輪をSpencerに渡しました。2017年の春、カップルとしての馴れ初めや人生を表すようSpencerがデザインしたジュエリーを二人とも身に着けて挙式しました。現在は、ロサンゼルスに一緒に住んでいます。

テキサス出身のSpencerは、小さい頃から抱いていたデザインに対する情熱を尊重する両親に育てられました。彼女が創設した会社は順調に成功を収めています。また、2016年にCarelle-WJA賞(Brooke Tivol McGrathへの追悼)を授与されたり、ビクトリア朝時代のようなデザインで2017年JCK Editor’s Choice Award(JCK編集者が選んだ最優秀作品賞)に輝いたりなど、数多くの賞を受賞しています。

Spencerのオリジナルデザイン、Spencer Portraitsは、完成するのに実験を1年以上も行った独自の技術を必要とします。手描きの肖像画のミニチュアと彼女が興味をそそられるリバースインタリオの彫刻では、写真を宝飾品に見せるために、ロッククリスタル(水晶)のクォーツとマザー・オブ・パール(真珠の母)を使用します。

感情に訴えるジュエリーの伝統に現代的な見方を加えることを目指しています、と彼女は述べます。

タンザナイトを持ち、ヘッドランプでその石を照らしている男性。
Robert Gessnerのヘッドライトが大きな宝石品質のタンザナイトを照らし出す。パープルヴァイオレットの色相を引き出すには、タンザナイトの多くは熱処理を必要とするが、このタンザナイトは熱処理なしでも魅力的な色を示している。写真撮影:Brendan Laurs/GIA

一方、Gessnerは、ロサンゼルスでGessner Gems(ゲスナー・ジェムズ)を開業し、「デザイナー、宝石商、個人のクライアントのために高級カラー宝石の指導および調達」に従事しています。また、世界各地で行われている会議、ショーや業界のイベントに出席したり、以前働いていたアフリカ東部のカラー宝石採鉱事業の地質コンサルタントとしても活躍しています。

GessnerとSpencerは、GIAでの研修が成功の鍵になったと同意し、世界中から集まったクラスメートで作られた「本当の絆と友情」に感謝していると語ります。この二人が築いた最も重要な絆は、カールスバッドの教室ではなく、ツーソンで行われた「Down Under(ダウンアンダー)」というテーマの交流会でした。

あの年のGIA同窓会で心を奪われました。Melissaと一緒にこれからも素敵な人生を歩んでいきます、とGessnerは語ります。

寄稿者Jaime KautskyはGIAダイヤモンドグラジュエイト、またGIA Accredited Jewelry Professional(AJP アクレディテッドジュエリープロフェッショナル)で、The Loupe(ザ・ルーペ)誌の共同編集者を務めていました。