業界分析

ホリデーシーズンのジュエリー売上は横ばい、高級品がトレンドを先行


Traditional Jewelers Newport Beach
今季のホリデーシーズン、ジュエリーの小売は小売業全体に比べて販売が下回った。 提供:Traditional Jewelers Newport Beach 写真:Eric Welch/GIA

全体的に見て、小売業の売上はホリデーシーズンにかなり好転しましたが、ジュエリーの販売は伸び悩みました。 全米小売業協会(NRF)は、全流通ルートにおける小売売上高を前年比4%増と報告しています。 予想通り、オンライン販売は順調に増加し、13%増を記録しました。

しかし、Kay Jewelers(ケイ・ジュエラー)、Zales(ゼールス)および Jared the Galleria of Jewelry(ジャレッド・ザ・ギャラリー・オブ・ジュエリー)の親会社、Signet Group(シグネットグループ)の最高経営責任者(CEO)である Mark Light は、ジュエリー小売業の売上げは昨年に比べて「横ばいまたはわずかに減少」したと言います。 シグネットグループは、同一店舗でのシーズンセールの売上げが4.6%減少したと報告しています。 Light 氏は、これらの結果は(全体として)「ジュエリー市場に同調している」と語りました。 また、同社のeコマースプラットフォームに生じた技術的な問題が要因で、売上高が2.6%減少したと報告しています。

Tiffany & Co.(ティファニーアンド·カンパニー)の同一店舗売上高は、2%の減少が報告されました。 ティファニーでは、北米の同一店舗売上高が4%減少した一方、アジアや極東では7%増加しました。 同社は、ニューヨークにあるトランプタワーの前で反対運動が行われたため、その隣りにあるティファニー旗艦店への客足が遠のき、同店舗での売上高が14%減少したと報告しています。

米国内に10店舗を構え、オーストラリアに拠点を置くジュエリー小売店、Michael Hill(マイケル・ヒル)は、ホリデーシーズンの売上高が5.6%減少したと報告しました。

唯一明るいニュースは、高級品を扱う独立ジュエリー店での売上げです。 Centurion Holiday Sales Success Index(センチュリオン・ホリデーシーズン売上成功指数)に回答した業者の約63%が、今ホリデーシーズンが昨年よりもはるかに堅調であったことを報告しています。また、回答者の68%が年間総売上高も増加したと報告しました。

この調査回答の詳細は、以下の通りです。

  • 回答者の32.5%が、ホリデーシーズンの売上高は大幅に増加し、昨年と比較して10%以上の売上げ増加を記録したと報告
  • 回答者の12.5%が、6%~10%の売上増加を報告
  • 回答者の17.5%が、ホリデーシーズン中の緩やかな売上増加(1%〜5%)を報告

センチュリオンの調査では、マイナスの結果も出ています。回答者の20%は売上高が10%以上減少したと報告し、回答者の15%は昨年と比較して売上高が1%から10%減少したと報告しています。

全般的には、オンラインでの売上が伸びた一方、店舗販売売上は7%〜10%減少したことが、複数の調査で示されています。 この結果は、百貨店の今季売上高が平均7%減少したとする NRF レポートと合致します。

百貨店は、中流階級の購買力低下よりもさらに深刻な問題に直面しています。 ほとんどの百貨店はショッピングモールとつながっていますが、 不動産分析会社の Green Street Advisors(グリーン・ストリート・アドバイザーズ)は、今後10年以内に米国のモールの推定15%の事業が廃業するか、小売業以外のスペースに変更されると報告しています。

オンライン販売にトレンドが移行しているにもかかわらず、Blue Nile(ブルーナイル)は年間を通じて業績が振るわず、秋に投資グループへの売却を発表しました。 同社は通常、3月上旬にホリデーシーズンの売上高を報告します。

デビアス CEO の Bruce Cleaver は AP 通信のインタビューで、「ミレニアル世代は、前の世代が彼らと同じ年齢であったときに比べ裕福ではないため、小さめのダイヤモンドの需要が増加している」と述べました。 しかし、「自分のために購入したダイヤモンドジュエリーの割合は増加している」と指摘しています。

Cleaver は、デビアスの分析で世界のダイヤモンドジュエリー需要の45%を米国が占めることが確認された、と報告しました。 また、同分析では、香港を含む中国が約16%、インドが約8%、日本が約5%を占めていることがわかっています。

クライアントに向けた新年の挨拶で Cleaver は、ダイヤモンドやジュエリーのマーケティング活動や、市場に出回る合成ダイヤモンドの識別技術開発に、デビアスとして引き続き尽力する意向を述べました。

中国最大の宝石小売店である Chow Tai Fook(周大福)は、本土での同一店舗売上高が4%増加したという最新の報告を出しており、期待感が膨らみますが、実は同社はダイヤモンド業界にはあまり貢献していません。 実際、売上増のすべてがゴールドジュエリーに由来するもので、宝石がセットされたジュエリーの売上げは2年間連続して減少し、本土では4%、香港では17%減少しています。

採鉱

Alrosa(アルロサ)は、2016年の原石の売上高を26%増の44億9千万ドル(約5253億円)と報告しました。 この結果は、2015年に起きた混乱状態から原石の市場が回復したことを反映しています。2015年には、原石価格が研磨石の価格を大きく上回ったため、クライアントが主要なサプライヤーからの原石購入を拒否するという状況が発生しました。 アルロサは、この年に原石の価格を平均15%切り下げました。

アルロサは、Internatsionalny 鉱山と、比較的産出量が乏しい新しい Zarya(ザーリャ)パイプ事業を拡大して、今年全体で生産を5%増加する予定です。 Internatsionalny 鉱山、ザーリャパイプともに、サハ共和国の西部にあります。 また、同社はウラジオストクにある新たな販売施設を通じて、アジアでのマーケティングを促進する予定です。 アルロサは、2016年に推定3800万カラットを生産しました。

デビアスは、2015年の最終四半期におけるクライアントの購入がごくわずかであったという同じ理由で、2016年は大幅な売上増加(+ 35%)を報告すると予想されます。 デビアスも、同様に価格を切り下げました。

過去十年間では、ダイヤモンドの需要と価格が長期に渡って指数関数的に増加すると予測されていたので、ダイヤモンド採鉱会社はその予測に基づいてプロジェクトの開発準備を整えてきました。しかし今、その予測は違っていて「指数関数的に増加しない」という新しい現実に直面しています。

デビアスは間もなく、カナダの Snap Lake(スナップレイク)鉱山を閉鎖する予定です。 同社は、この鉱山の開発に10億ドル(約1170億円)費やしましたが、需要と価格が期待値を大幅に下回ったため、採算が合いませんでした。 また、Rio Tinto(リオ・ティント)は、昨年インドの Bunder プロジェクトから撤退しました。

Russell Shor は、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。