ジュエリーの売上が控えめに増加した一方、高級品は急増
1月 10, 2020

米国のホリデー シーズンにおけるジュエリーの売上高は、平均して2018年からわずかに増加し、特に独立系の高級ジュエラーはその平均をはるかに上回った、と様々な調査により報告されています。また、オンライン ショッピングが急上昇した一方、小売店からは客足が遠のきました。
マスターカードの調査によると、オンラインでのジュエリーの購入は2018年に比べて9%増加しましたが、ジュエリーの全体的な売上高は2%未満の増加に留まりました。National Retail Federation(全米小売業協会)がシーズン半ばに行った調査では、小売売上高全体の増加は約2.1%であり、予想範囲3.4%~4.2%であった最高値の半分の数値となりました。
今年の第1四半期から第3四半期まで売上高の減少を報告していたTiffany & Co.(ティファニー&カンパニー)は、中間報告でホリデー商戦による売上高が北米では2%から4%の増加、世界市場では1%から3%の増加を示しましたが、日本では急激な落ち込みが見られました。Kay Jewelers(ケイ ジュエラーズ)、Zale(ゼール)、Jared (ジャレッド)の親会社であるSignet Group(シグネット グループ)は、今月下旬に四半期決算を発表する際、既存店売上高では2%~4%の減少が予想されていると述べました。
一部の小売アナリストは、2019年に小売店から客足が急激に遠のいた理由として、感謝祭とクリスマスの間が非常に短かかったため、多くのショッピングがインターネットで行われたことを挙げました。
「感謝祭の休日が通常よりも遅かったため、小売業者はホリデー シーズンの早い時期にオムニチャネルを通して販売し、最高のお買い得品を探している消費者の需要をあらゆるチャネルとデバイスで満たしているのが確認されました」と、マスターカードのシニア アドバイザー、Steve Sadoveは記者会見で報告しました。
ニュースレター『The Centurion(ザ センチュリオン)』に最近掲載された調査によると、米国の独立系ジュエラーにとって2019年は過去最高の年となりました。81%のジュエラーが売上高の増加を報告し、そのうち半分以上が6%以上の増加を報告していることが明らかとなりました。調査に回答したジュエラーのわずか7.1%が、ビジネスの落ち込みを報告したものの、残りのジュエラーは均等にとどまったと報告しました。季節半ばに行われた調査では、昨年の売上高と比較してはるかに後れを取っていましたが、最終週の売上が好調であったため、ほとんどのジュエラーが黒字に転じました。
「多くの高級宝石商にとって、このホリデー シーズンは最初は低迷していましたが、Centurion(センチュリオン)のホリデーセールス成功指数に回答した企業の80%以上が、昨年のすでに堅調なシーズンを上回る売上高を報告したので、最終的には好調な結果に終わりました」と、ニュースレター『The Centurion(ザ センチュリオン)』の編集者、Hedda Schupakが説明しました。「しかし、米国の中西部の宝石商は他の地域の方ほど結果には満足していないようです。非常に人気のあるブランドやトップ セールスマンを失うなど、売上の減少に関して具体的な理由を挙げた数少ない宝石商を除き、前年と比較して急激な売上の減少を報告したのは、主に中西部の宝石商でした。」
調査の結果として不安材料となったことが一つあります。それは、ミレニアル世代による購入が減少したことです。宝石商が報告したホリデー シーズンの売上高でミレニアル世代による購入が占める割合は、2018年には25%でしたが、今年は18%に留まりました。
ジュエリーのオークション
世界有数のオークションハウス、Sotheby’s(サザビーズ)とChristie’s(クリスティーズ)は、過去10年間の記録的な年をわずかに下回る推定合計売上高7億5000万ドル~8億ドル(約817.5~872億円)で2019年を終えました。このうち、クリスティーズの売上高は約4億3000万ドル(約468.7億円)となり、サザビーズより大きなシェアを占めました。
サザビーズが12月12日にニューヨークで行った2019年最後のオークションでは、GIAがグレーディングを行った7.55カラットのクッションカット、タイプIIbのファンシー ディープ グレイッシュ ブルー ダイヤモンドが、低めの推定落札価格を10%上回る660万ドル(約7.2億円)で落札され、注目を浴びました。また、20.16カラットのファンシー ディープ ブラウニッシュ ピンキッシュ オレンジのダイヤモンドは、推定落札価格をはるかに上回る280万ドル(約3億円)で落札されました。このオークションの総売上は4300万ドル(約46.9億円)となりました。
その1日後にニューヨークで行われたクリスティーズのオークションでは、エメラルドとダイヤモンドが周りに飾られた11.20カラットのビルマ産ルビーを特徴とするブローチが、オークション前の推定落札価格の2倍以上となった900万ドル(約9.8億円)で落札されました。このブローチはDu Pont家が所有していたものでした。このオークションでは、GIAがグレーディングを行った3.07 カラット、タイプIIbのファンシー ビビッド ブルー ダイヤモンドが340万ドル(約3.7億円)、総重量30.14カラットのカシミール サファイアとダイヤモンドのリングが300万ドル(約3.3億円)で落札されました。このオークションの総売上は6,750万ドル(約73.6億円)となりました。
日本の小売業
世界第4位の宝飾品市場である日本の大手ジュエラーは、2年遅れで政府が消費税率を2%増税した後、売上高が増加することを期待しています。2012年、政府は消費税率が10%に達するまで2段階で増税することを可決しました。2014年に行われた第1段階の増税では、消費税率が5%から8%に引き上げられたため、小売業における個人消費が大幅に落ち込み、日本は不況に陥りました。
国内の経済に問題が生じたため、政府は当初翌年に予定されていた第2段階の増税を昨年10月まで延期し、消費税が8%から10%に引き上げられました。この増税のため、高価な商品に対する消費が大幅に落ち込みました。増税により経済が減速する影響を減らすために、政府は、消費者が独立系の宝石商を含む小規模の小売店で電子決済を利用して商品を購入した場合、5%分のリベートを還元しています。一部のエコノミストは、この5%分のリベートが経済に対する悪影響をいくらか緩和すると考えています。
日本は高級品に対する世界の支出の10%を占めていますが、日本の高級品は多国籍企業や大手小売チェーンによって支配されており、これらの企業はリベート プログラムの対象外とされています。例えば、日本のティファニー&カンパニーは、この増税の影響を既に受けており、2019年11月1日から12月31日の間の売上高が12%~14%減少しました。
Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。