GIA研究員、「光のパフォーマンス」とダイヤモンドのカットを評価する
3月 12, 2020
「光のパフォーマンス」という用語は、ダイヤモンド業界で漠然と使われています。明るさ、ブリリアンス、ファイアー 、シンチレーションなどの用語は、組織や団体ごとに定義が明確に説明されていることもあれば曖昧なこともあります。ダイヤモンドのプロポーションに対してこれらの要因はかなり広く相関性を持つ一方、より良好な外観に対して特定の名称を付けようとする場合は、プロポーションの範囲はかなり限定されます(特にラウンド ブリリアントの場合の「アイディアル」カット)。
極端なプロポーションで製造されたラウンド ブリリアント ダイヤモンドの外観に見られる主な欠陥は、1世紀も前から理解されてきました。フィッシュアイ、暗い中心部、石の端まで広がる暗いメインなどの効果は、浅さすぎるパビリオン、深すぎるパビリオン、クラウンの高さとパビリオンの深さの不揃いをそれぞれ生み出しました。75年以上も行われている議論は、どのプロポーションが最高の外観を呈するかを「証明すること」に焦点を当ててきました。
しかし、「光のパフォーマンス」が意味することについての一致した見解はあるのでしょうか?それはどのような意味なのでしょうか?
ダイヤモンドの外観に関しては、光のパフォーマンスが高いということは、それを見る人すべてがそのダイヤモンドを好む、と多くの方々が考えるでしょう。しかし、研磨されたダイヤモンドの光のパフォーマンスを評価するためのシステムの開発において、人間による観察がどれくらいの役割を果たしているのでしょうか?特に、観察者は、光のパフォーマンスを検証するさまざまな手法に使用される要因を視覚的に評価しているのでしょうか?
光のパフォーマンスを評価する方法
ここ数十年で最も広く議論されている光のパフォーマンスを評価する方法では、色付きのドームまたは円筒形のビューア(カラーレイヤーがあるものもある)を使用します。色付きのドームまたは円筒形のビューアは、ダイヤモンドを観察するためのデバイスの一部として使用されるか、またはダイヤモンドの三次元測定(ワイヤフレーム)を備えたコンピュータ モデルで入力装置として使用されます。このアプローチでは、フェイスアップでテーブルに対して垂直に向かって射出する光が、ダイヤモンドに光が入射する角度とどのように関連しているかを色付きのパターンが示す画像を生成します。このパターンは、ダイヤモンドのプロポーションとシンメトリーの両方に依存します。これはダイヤモンドのクラウンから射出する光の量を測定するものではなく、実際多くの製品では、ファイアーまたはシンチレーションの特定の評価が除外されます。各グレードの範囲内で許容されるパターンの差の程度についても、基準はさまざまなです。この方法を採用するユーザーの中には、ダイヤモンドを傾けて使用する方もいれば、フェイスアップでの垂直な位置のみを使用する方もいます。
このように変動要因を伴う状況で、このアプローチは、選択された基準が、ダイヤモンドに望ましいとされる明るさ、ファイアー 、コントラストのパターン、きらめきのバランスに関するすべての問題に対処することを前提としています。このアプローチを使用したユーザーで、彼らが達した結論が視覚的にも有意的であることを確認するための人間による観察について報告している方はいません。
別の方法では、イメージング分光光度計を使用して、光源から異なる距離でダイヤモンドの5つの画像を取得します。これらの画像は、明るい白色光(明るさとして記述)、色付きの光(ファイアーとして記述)、これらの間の差異(シンチレーションとして記述)の量について分析されます。このアプローチはダイヤモンドのクラウンから射出する光を測定しますが、定量的な結果は提示されません。その代わりに、以前に測定された同じシェイプの数千個のダイヤモンドのデータベースと比較した棒グラフで3つの分析値が表示されます。この装置では、光源あるいは探知器に対してダイヤモンドを傾けることはできません。ここでまた問題となるのは、得られた3つの値が人々の見るものと相関していることを確認するために人間による観測が行われたか、ということです。
光のパフォーマンスに影響を与えるその他の要因
光のパフォーマンスに関して発信されている情報の中には非常に疑わしいものがあります。研磨されたダイヤモンドからは、ダイヤモンドに入射する光のエネルギーの「ほとんど」ではなく、その半分以下が返ってきます。明るければ明るいほど外観が良く見えるというわけではありません。それは、明るさはブリリアンスとは異なるためです。鏡と白紙は両方とも光を多く返しますが、どちらもブリリアントを示しません。
人間がブリリアンスを知覚するためには、良好に分布した明部と暗部のコントラストが必要となります。コントラストが良好で、光の返しがやや低いダイヤモンドは、光の返しが高く、コントラストがあまりないダイヤモンドよりも外観が良く見えます。さらに、ダイヤモンドは、揺らしたり、傾けた際にパフォーマンスを良く示す必要があります(光のパフォーマンスの動的側面)。コントラストの変化および明るさは、観察者が見るものの重要な部分であり、光のパフォーマンスを評価する際に考慮されるべきです。
個人的な好みは、観察して確認される光のパフォーマンスの重要な要因となります。観察に関して行った実験では、GIAは、暗い部分が広がっている場所など、ダイヤモンドの外観に関して好ましくない点については全体的に意見が一致しましたが、何が最も好ましいかという点については意見が全く分かれました。Hearts & Arrows(ハート&アロー)のような特定のダイヤモンドの外観に焦点を当てて、他のすべてのものを除外すると、個人的な好みを選ぶ余地がほとんどなくなります。もちろん、GIAは、第三者に提供される情報は、ダイヤモンドの1つの側面だけに焦点を当てることなく、徹底している必要があると信じています。
他の多くのシステムにおける光のパフォーマンスには、ダイヤモンドに関する包括的な情報を提供する他の重要な要因の影響が含まれていないことに注意してください。重量比(例えば、厚いガードル)、耐久性(欠けが生じるリスク)、職人技(シンメトリーおよび研磨の質を含む)も、カットの評価において無視してはならない非常に重要な基準です。
元の質問に戻りますが、光のパフォーマンスとは本当に何を意味するのでしょうか?ダイヤモンドは他の人に見せるために身に着けるものなので、この質問に対する答えはダイヤモンドの視覚的な魅力に関連しているべきです。物理学は、特定の条件下において特定のダイヤモンドが他のものよりも光を多く返す、または他のものよりもファイアーが多く見られる、と説明するかもしれませんが、これらのものは私たちの目に見えるのでしょうか?光のパフォーマンスとは、特定のダイヤモンドを評価し、価値やグレードを割り当てると主張するコンピュータ モデリングや器具類の使用、その他の方法が、実際に我々が見るものと結び付いている必要があることを意味する必要があります。
「光のパフォーマンス」という用語は業界で不明確に使用されているため、GIAは、これからもこの用語の使用を避けます。
Illene ReinitzはGIA研究部門のシニア プロジェクト マネージャーです。Al Gilbertsonは、GIAカールスバッドでカット研究部門プロジェクト マネージャーを務めています。Ronnie Guertsは、長年のGIAで活躍し、先日退職したGIAの研究員です。