宝石ガイド、採掘職人に教育および社会的利益を提供する
1月 21, 2019
タンザニアの農村部で無料の教育ツールが採掘職人に提供され、彼らがより大きな収益を上げるのに役に立っています。
[採掘職人]は選別したり、洗浄してその素材に価値を与える方法を学んで、このプロジェクトが始まる前と比べてもっと稼げるようになりました。この宝石ガイドとトレイを使うことで彼らの人生に多くの価値をもたらしました、とTanzanian Association of Women Miners(TAWOMA:タンザニア女性鉱員協会)で事務局長を務めるSalma Kundi Ernestが、2018年10月に開催されたChicago Responsible Jewelry Conferenceで通訳を通じて語りました。
採掘職人は、小規模の鉱山労働者が自ら採鉱した宝石の品質と分類について詳しく学ぶのを助けるためにGIA(Gemological Institute of America)が開発したイラスト入りの小冊子、『Selecting Gem Rough: A Guide for Artisanal Miners(宝石の原石を選ぶ:採掘職人のためのガイド)』よりこの貴重な知識を学びました。
小規模の採掘職人は、手工具のみを使用して少人数のチームで作業しており、タンザニアや世界各地の他の地域で産出されるカラー宝石の多くを採鉱しています。多くの場合、遠隔地に住んで働いており、この他には生計を立てる手段がほとんどなく、自ら採鉱する石に関する情報を得る機会はほとんどまたは皆無の状態です。宝石の品質や市場のニーズの理解に関する簡単な情報を得ることで、バイヤーと交渉する際にさらに優位な立場に立つことができます。
「採掘職人のためのGIAガイド」は、トルマリン、コランダム、様々な種類のガーネット、トパーズ、スピネル、ジルコン、タンザナイトなど、東アフリカで発見される原石の写真が豊富に掲載されている、スワヒリ語の小冊子です。ほとんどの採掘職人が正式な教育を受けていないため、文章を最小限に控えて主に写真を使って情報が提供されています。この耐水性に優れた小冊子には、宝石を選別し、宝石に関する他の基本的な評価を行うために使用することができる耐久性のあるプラスチック製の半透明のトレイが付いています。イラストを使って説明することで、採掘職人(読むことができない者も含める)が原石の品質を評価する方法をより簡単に学ぶことができます。
イラストの中には、原石の特徴と原石を洗浄する方法を評価するために、直接光や透過光の両方を使用して、原石の素材を観察するトレイの使用方法を示すものもあります。最後のセクションは、ソーイングから予備成形やファセッティングに至るまでの宝石のカッティングの段階を示し、どのように石がジュエリーにセットされるかを説明します。この情報により、採掘職人は市場のバリューチェーンについて理解を深めることができます。
GIAは、ワシントンD.C.に拠点を置く非政府組織であり、タンザニアに事務所を持ち、この地域において豊富な専門知識と経験を持つPactと契約を結び、2017年と2018年にそれぞれ1回ずつ計2回のパイロット・スタディを実施しました。第1回パイロット・スタディは、タンザニアの北部国境近くにあるタンガ地域で約400人の小規模の採掘職人に研修を提供しました。GIAとPactは、この地域の漂砂宝石鉱床が多様化しているためTanga(タンガ)地域を選びました。最初に参加した方達は、TAWOMAのメンバーでした。
性差別を受けたり、いくつかの現場から締め出されたり、採鉱に関する知識が少なかったり、資本や教育が欠けていたりと、女性の採掘職人は男性よりもさらに多くの課題に直面しているので、TAWOMAのメンバーに参加してもらえるよう必死でした、とPactのMines to Markets(鉱山から市場へ)プログラムでディレクターを務めるCristina Villegasは述べます。教育するのでしたら、女性から始めて当然です、と続けました。
第2回パイロット・スタディは、タンザニア南部のTunduru(トゥンドゥル)、Songea(ソンゲア)、タンザニア中央部のMorogoro(モロゴロ)の宝石が豊富に産出される地域にまでも達し、さらに約750人の採掘職人鉱夫が参加しました。タンザニア政府は、GIAとPactが訪問することについて連絡を受け、これらのパイロット・スタディを支持しました。PactのNorbert Massayは、旅行の計画、政府との連絡、採鉱地域に関する情報を提供しました。
Richard T. Liddicoat宝石学図書館情報センターのディレクターおよび宝石ガイドの共著者であるRobert Weldonを含むGIAのスタッフとケニア出身のGIA グラジュエイトジェモロジスト(GG)、Marvin Wambuaが、ガイドの使い方や半透明のトレイに関する研修を採掘職人に提供しました。研修を受けてから数ヶ月後にアンケートに回答した採掘職人の全員が、説明を受けた宝石学に関する概念をしっかりと理解したと述べました。また、アンケートの結果によると、発見した原石の品質を評価することに対して自信が生まれ、地元のバイヤーとの交渉が著しく改善しました。
宝石のカット職人でもあるWambuaは、その採鉱グループからより品質の高い原石が提供されたことを指摘しました。このプログラムが始まる前は、カットする価値のあるものは何もありませんでした。しかし、プログラムが始まるにつれて、試料の品質が向上しました。タンガに再び訪れたら、カットする価値がある宝石を見ることができました、と述べました。
ある採掘職人は、宝石の原石を適切に洗浄する方法を学ぶことで、自分が発見した宝石のカラーとクラリティ(透明度)の品質を評価することができるようになったと述べました。もう一人は、この技能を習得したことで宝石をタイプと品質によって区別することが可能となり、市場ではるかに高い価格で販売することができるようになったと説明しました。
研修を受けた後は、7万タンザニアシリング(約3300円)でガーネットを販売しています。その前は、最高でも1万タンザニアシリング(約470円)で販売できれば上出来でした、とTanga(タンガ)近郊のKalalani(カララニ)の女性採掘職人が語りました。
Pactの計算によると、このプロジェクトにおけるGIAによる12万ドルの初期投資(GIA寄付基金より出資)から得られた知識は、採掘職人に対して12倍の社会的投資利益率(SROI)をもたらし、今後数年間にわたって彼らを支援し続ける予定です。
Massayは、この宝石ガイドが採掘職人以外にも広範囲にわたる利点をもたらしていると報告しました。この地域で変化が起きているのが見えます。もっと裕福になり、より多くの子供たちが学校に行けて、たくさんの子供たちが学校の制服を着たり、人々はレンガ造りの家を建てています。人々の生活にもっと多くの価値をもたらしていることがわかります、と語りました。
宝石ガイドのプロジェクトは、GIAの名誉研究員、James Shigley博士が2008年にケニアとタンザニアを訪問した後に提案しました。困難な状況の下で働いている採掘職人を見て、Shigley博士は彼らを援助するのに最善の方法を考え始めました。彼は、宝石取引における他の専門家と緊密に協議し、GIA図書館のスタッフと共にこのガイドのための文章と写真の制作を手掛けました。最初に英語で作成されたこの小冊子は、後にWambuaがスワヒリ語に翻訳しました。
GIAは、GIA寄付基金を利用してパイロットプロジェクトの費用をすべて負担し、東アフリカや宝石の産地となる可能性があるその他の地域でプログラムが拡大するにつれて、この小冊子、トレイ、研修を引き続き無償で提供する予定です。
これはGIAの使命の核心です、とGIA社長兼CEOのSusan Jacquesは述べました。実用的な宝石学の知識をサプライチェーンの上流に提供して、その方達に数多くの恩恵を受けていただきたいのです。このガイドブックは、採掘職人の皆さんが市場に提供してくださる美しい宝石の価値について理解するのに役立ちます、と続けました。
このプロジェクトで多くの段階に関与していたWeldonは、この宝石ガイドが採掘職人の生活や作業にポジティブな影響を与えたことに関して非常に満足しています。
サプライチェーンの上流であるアフリカの採掘職人が抱く非常に基本的なニーズを理解することは、このプログラムが機能するために絶対に重要でした。採掘職人が習得した知識がこのように役立っていることを見ることができて本当に光栄です。サプライチェーンの複雑な仕組みや宝石がどのように使用されるかを理解し始めると、これらの採掘職人はカッティングやジュエリーの制作などの異なる職業を志望するかもしれません、とWeldonは述べました。
Russell Shor は、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。