業界分析

回復に向かうダイヤモンド市場、高級品オークションの結果


2つのペア シェイプのダイヤモンドが両側にセットされたレクタンギュラー カットのファンシー ディープ ブルー ダイヤモンド。
ロンドンのジュエラー、Moussaieff(ムサイエフ)が出品し、GIAがグレーディングを行ったファンシー ディープ ブルーの7.03カラットのダイヤモンド。11月12日にジュネーブで行われたChristie's(クリスティ―ズ)のオークションで最高入札価格1160万ドル(約12.6億円、カラット単価165万ドル/約1.8億円)で落札された。写真提供: Christie's Images Ltd.(クリスティーズ イメージズ)

ダイヤモンド鉱業

世界の二大ダイヤモンド生産企業、De Beers(デビアス)とAlrosa(アルロサ)は、この数ヶ月間で原石の売上げが激減したものの、現在のダイヤモンド市場は安定しており、米国のホリデー シーズンおよび中国の旧正月では堅調な需要が期待できると報告しています。

原石および研磨済みのダイヤモンドの在庫が年初に増加し、両方とも価格が低下したため、両社の売上高は25%以上減少しました。また、銀行は業界に対する与信枠を引き続き縮小しています。

11月4日から8日まで行われたサイクルでは、デビアスは原石の配分を約1億ドル(約109億円)増加させ、3億9000万ドル(約425億円)としましたが、価格を5%以上下げました。デビアスが、特に大きくより上質のダイヤモンド原石の価格についてこれほど価格を低下させることは滅多にないため、これは非常に特別な戦略でした。通常、デビアスは価格を「調整」します。5,000以上ある原石カテゴリーのうち数種類の価格を上げて残りの種類の価格を下げるか、またはより良い品質の原石をより低いカテゴリーにシフトさせて減少を隠します。

デビアスは今回のサイクルで行ったように、全面的に価格を下げることはありません。しかし、5%の価格の低下を隠すことは不可能です。一部のレポートによると、小さくてより安価な品質のダイヤモンドはそれ以上価格が低下したことが示されています。また、デビアスはより大きな商品について、顧客が受け入れ不可能あるいはカットの採算の見込めない商品をデビアスに売り戻すことができる買戻限度額を、10%から20%に引き上げました。

デビアスは、ABN Amro Bank(ABNアムロ銀行)が、カット石として採算の見込めない原石(当時のほぼすべてのカテゴリーのダイヤモンドがこれに該当する)の購入に対して融資をもはや行わないと9月に発表した後、価格を引き下げざる以外に手段はなかった可能性が高いと考えられます。

ロシアのアルロサは、第3四半期の原石の価格における売上高が前年同時期と比較して37%減少したと発表しました。今年10月の収益が前年同月と比較して増加しましたが、この回復がなければ、売上高の減少はさらに大きかったと推測できます。売上高が急激に減少した理由の一つとして、アルロサは小さなダイヤモンドに注力し始めたことが挙げられます。数量での売上高はわずか5%の減少にとどまりました。

アルロサは、10月における売上高の7%の増加は、市場の過剰供給が引き下げられているため需要が安定していることを示していると報告しました。

超大型ダイヤモンド市場も減速しています。レソトのLetseng(レツェング)鉱山を運営するGem Diamonds(ジェム ダイヤモンズ)は、今年採取されたダイヤモンドの平均価格は1カラット当たり23%減の1,417ドル(約15万円)に低下したと報告しました。レツェング鉱山の産出量は年間約11万カラットと少ないですが、50カラット以上のダイヤモンドを定期的に産出しています。

小売店の宝飾品市場

世界のダイヤモンド ジュエリーの需要は1.9%増加し、合計760億ドル(約8兆2840億円)に達したと、今月発表された「Diamond Insight(ダイヤモンド インサイト)」調査でデビアスが報告しました。

米国は引き続きダイヤモンド ジュエリーの世界最大の市場であり、売上高は360億ドル(約3兆9240億円)となり、世界の売上高の47%以上を占めました。米国で販売されたジュエリーのうちダイヤモンドに相当するのは、合計123億ドル(約1兆3410億円)でした。

中国の小売業におけるダイヤモンドの需要は100億ドル(約1兆900億円)を突破し、ダイヤモンド相当分は34億7000万ドル(約3782億円)に達しました。次いで日本が50億ドル(約5450億円、ダイヤモンド相当は11億6000万ドル/1兆2664億円)、インドが30億ドル(約3270億円、ダイヤモンド相当は13億ドル/約1417億円)であり、ダイヤモンド市場の小売業の売上高の上位を占めました。

女性が自分自身のためにダイヤモンド ジュエリーを購入するのが、世界中で最も急成長しているカテゴリーですが、婚約指輪以外の商品では男性から女性への贈り物としてのジュエリーが依然として売上高の52%を占めている、とレポートは指摘しました。

また、デビアスがジュエリーにおけるダイヤモンドの占める割合を評価する方法を変更したため、同社はダイヤモンド総売上高についての以前の下方見積もりを修正したと報告しました。

ハーフ ムーン モディファイド ブリリアント カットのダイヤモンド(それぞれ3.64カラットと3.35カラット)が両側にセットされている46.93カラットのクッション ステップ カットのダイヤモンド。
GIAによりDカラーおよびIFとグレーディングされた、46.93カラットのステップ カット クッション シェイプのダイヤモンド。11月12日にジュネーブで行われたChristie's(クリスティ―ズ)のオークションにて、310万ドル(約3.4億円、カラット単価66,800ドル/約730万円)で落札された。写真提供: Christie's Images Ltd.(クリスティーズ イメージズ)

ジュエリーのオークション

穏やかな春のオークションの後、最上級品の需要と価格は再び堅調に推移しています。

11月12日にジュネーブで行われたChristie's(クリスティ―ズ)のオークションでは、ロットでは93%、価値では88%が落札されました。落札された商品の中で最も高級な商品は、ロンドンのジュエラー、Moussaieff(ムサイエフ)が出品し、GIAがグレーディングを行ったファンシー ディープ ブルーの7.03カラットのダイヤモンドでした。このダイヤモンドは、オークション前の推定落札価格内であった最高入札価格1160万ドル(約12.6億円、カラット単価165万ドル/約1.8億円)で落札されました。

落札された他の大きな宝石は次のとおりです。

  • GIAによりDカラーおよびIFとグレーディングされた、46.93カラットのステップ カット クッション シェイプのダイヤモンドが、推定落札価格をわずかに下回る310万ドル(約3.4億円、カラット単価66,800ドル/約730万円)で落札
  • 25.2カラット、GIAによりDカラーおよびVVSとグレーディングされた、レクタンギュラー カットのダイヤモンドが、253万ドル (約2.76億円、カラット単価100,595ドル/約1100万円)で落札
  • 42.97カラット、オクタゴンカットのビルマ産サファイアが250万ドル(約2.73億円、カラット単価59,000ドル/約640万円)で落札
  • 13.53カラットのコロンビア産エメラルドは、およそ110万ドル(約1億2000万円)、堅調なカラット単価91,575ドル(約1000万円)で落札

興味深いことに、大きな宝石の落札では珍しく、すべてのバイヤーは匿名を希望しました。

翌日にジュネーブで行われたSotheby’s(サザビーズ)のオークション ハウスでは、提供されたロットの80%の落札が成立しました。最高級の商品は、47.07カラットのカボション カットのビルマ産サファイアがセンター ストーンとして使われ、9.27カラットと8.6カラットの2つのペア シェイプ ダイヤモンドが両側に飾られているCartier(カルティエ)のブレスレットで、推定落札価格の2倍となった610万ドル(約6.65億円)で落札されました。オークション ハウスによると、このブレスレットは1927年に制作られ、「アジア人の女性コレクター」に売却されました。

別のバイヤーは、ペンダントにセットされておりGIAがグレーディングを行った6.03カラットのファンシー インテンス パープル ピンク ダイヤモンドを340万ドル(約3.7億円、カラット単価563,847ドル/約6100万円)で落札しました。また、14.97カラットのカシミール サファイアがセットされているダイヤモンドのネックレスは、140万ドル(約1.53億円)で落札されました。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。