同窓会スポットライト

受賞に輝いたデザイナーのジュエリー、家族の歴史を蘇らせる


「ジュエリーのデザインは、日々学んで築き上げるキャリアです」と、GIAのJDTプログラムの卒業生、Veronica Eckertは語る。 「美を描くだけでなく、世界とつながるためにあなたの作品で個性とスタイルを作るのです。」写真提供: Veronica Eckert
「ジュエリーのデザインは、日々学んで築き上げるキャリアです」と、GIAのJDTプログラムの卒業生、Veronica Eckertは語る。 「美を描くだけでなく、世界とつながるためにあなたの作品で個性とスタイルを作るのです。」写真提供: Veronica Eckert

ジュエリーデザインについて話す際にEdgar Allen Poe、Jules VerneやStephen Kingのような名前が登場することは珍しいですが、デザイナーのVeronica Eckertは文豪が最初に彼女の創造性に多大な影響を及ぼしたと語ります。

子供の頃は、父が持っていたSF小説の全コレクションを読んだものです、とロサンゼルスに拠点を置くメキシコ系アメリカ人のジュエリーデザイナー、Eckertは語ります。 そこから大きな影響を得ました、と続けました。

GIAのJDTプログラムの卒業生であるEckertは、Veronica Eckert Studio(Veronica Eckertスタジオ)オーナーであり、Revere Academy(リビア・アカデミー)主催2016年タヒチ産真珠ジュエリーデザインコンテストで優勝者に輝きました。 彼女が受賞したデザインは、光沢の高い12mmのタヒチ産黒真珠、ブルーサファイアアクアマリンダイヤモンドを特徴とする、宇宙を彷彿させる夢のような「土星への旅」プラチナ製リングです。

私の作品には物語があります。 このリングのアイデアは、宇宙に対する私の情熱と土星が昨年地球に最も近かったということからヒントを得ました。 私は、土星の環を表現するために、星がリングのシャンクに沿って動いて、真珠の周りを回っているのを想像しました、とEckertは語ります。

彼女は、デザインコンテストに参加したことで、芸術的なビジョンが向上したと説明します。

デザイン賞を受賞するという目標があると、もっとクリエイティブになりスキルや想像力を磨こうと必死になります。 真珠について学んだり真珠を使って作業することで、自然と創造性に対する私の愛が増えました、と彼女は述べます。

タヒチ産黒真珠がダイヤモンドのリングに囲まれている。 中央にサファイアとアクアマリンを散りばめた4つのスターがシャンクの片側に流れ落ちるようにセットされている。
GIAのJDTであるVeronica EckertがRevere Academy(リビア・アカデミー)の2016年タヒチ産真珠ジュエリーデザインコンテストで最優秀賞に輝いた、プラチナ製「土星への旅」リング。表面がグリーンで光沢の高い12.5mmの天然タヒチ産黒真珠を特徴とする。 合計0.36カラットのダイヤモンド、0.08カラットのサファイアとアクアマリンを散りばめたこのリングより、Eckertは「土星への旅」ジュエリーコレクションを製作するアイデアを得た。 写真:Berlian Arts(ベルリアン・アーツ)。 提供:Veronica Eckert

ジュエリーを製作し、それを介してコミュニケートするという願望は、Eckert家で過去2世代に渡って引き継がれています。 彼女の曽祖父と祖父は、彼女の故郷であるメキシコのモンテレイで宝石店を所有していました。 少女であったEckertは、祖父のEduardo Aguilar Herreraが店頭で顧客に応対しているのを興味津々に見ていました。 彼女は、顧客が新しいジュエリーに満足すると彼が笑顔をこぼすことに気付き、彼が古いルーペを使用して「巨大に拡大された目」の錯覚を見せると喜んで笑ったものでした。

外科医と生物学者であったEckertの両親はジュエリー業界でのキャリアを追求せず、そして彼女が若い頃に祖父は亡くなりました。 彼が他界した後、宝石店は閉店したので、それ以降Eckertはその店を訪問したり、彼から学ぶことはできませんでしたが、ジュエリーを製作するという彼女の願望はとどまることを知りませんでした。

絵を描いたり、おもちゃを作ったり、ビーズで遊んだり、電気製品を分解して組み立て直したりして、かなりの時間をかけて手作業をしました。 電気製品からスペアの部品がなくなってしまったときには厄介なことになりますが、その好奇心があるからこそメーカーになるのです、と彼女は述べます。

Eckertはデザインを学び、広告・販売代理店でグラフィックアーティストそして最終的にはアートディレクターとして活躍しました。 しかし、アメリカに移住し、2011年にシアトルにあるデザインスタジオで働いた後、シアトルの小さなスタジオで初心者のためのジュエリー製作のクラスを受講することに決めました。 そして、即座に好奇心が掻き立てられるのを彼女は実感しました。

初めてロウ付けをしたとき、すぐに金属と私の間に絆があると感じました。 金属の板を目の前にし、「これでいくつの作品を製作できるかしら?」と思うのは楽しかったのです、と彼女は語ります。

Eckertは、サンフランシスコのRevere Academy of Jewelry Arts(リビア・アカデミー・オブ・ジュエリーアート)に入学し、2つのプログラムを修了した後、金細工職人としての認定を取得しました。 彼女は、「細心の注意を払って作業をする」ことを学びながら、リビア・アカデミーでスキルを上達させました。

タヒチ産黒真珠とケシ真珠 (5つのダイヤモンドがセットされている) の形をしたゴールドがあしらわれたバイパスリング。

Eckertは、ジュエリー業界におけるCAD/CAMの影響について聞くようになり、もっと知りたいと思いました。 彼女はGIAで行われているジュエリーデザイン&テクノロジー(JDT)プログラムを見つけ、講師と話した後、JDTは彼女にとって最適なプログラムであると確信しました。 Eckertは直ちにカールスバッドへ引っ越し、キャンパスで行われているこのプログラムで6ヶ月間学習しました。

GIAは私の作品に新たな可能性を開いてくれました。 CADのプログラムがもっと手の込んだ複雑なデザインを製作するのに役に立っただけでなく、GIAのおかげで私はジュエリーデザインの世界にさらに集中し、この業界で多くの人々と出会い、ジュエリー業界のプロとして成長することができました、と彼女は述べます。

Eckertは、講師はすべて「非常に熱心な専門家」であったと述べ、特にKelly Borelloが彼女の卒業後のキャリアのために提唱者になってくれたと称えます。

彼女は非常に親切でよく助けてくれました。モデリングプロセスに関してアドバイスをしてくれたり、就職活動中にどのように企業に対応するかについて教えてくれました、とEckertは説明します。

南カリフォルニアの高級ジュエリー会社に勤務した後、Eckertは顧客のためのデザインで非常に忙しくなったことに気付き、自分でビジネスを始めることを決心しました。 2016年12月、彼女はロサンゼルスのジュエリー地区にある小さなスタジオでVeronica Eckert Studio Jewelry(Veronica Eckert スタジオ・ジュエリー)をオープンし、デザインにもっと多くの時間を費やし集中できることに喜びを感じています。

私の感覚の興味を引き立てるすべてのものから私はインスピレーションを受けます。
Veronica Eckert GIA JDT
時々、頭の中にアイデアが浮かんで、紙にそれを描けるようになるまで考えるのです。 また、スケッチパッドを取り出して、真夜中でもアイデアを描き続けるときもあります。 私はそれぞれの作品に個性と名前を与え、それを作成するためにその名前に潜んでいるかもしれない物語について考えます、とEckertは語ります。

Eckertは、インスピレーションの源として、アール ヌーボー建築、Remedios Varoのようなシュルレアリスムの画家、そして当然のことながらサイエンス・フィクションを挙げていますが、彼女の野心は非常に現実的なものです。  

ジュエリーデザイナーとしての私の目標は、単に毎日もっと良いデザイナーになることです、と彼女は述べます。

喜ばしいことに、Eckertの娘であるItzel Montserratが宝石・宝飾業界でキャリアを築き始めました。

Montserratは、GGのディプロマを取得し、シアトルのBlue Nile(ブルーナイル)に勤務した後、ロサンゼルス郊外のモンロビアに引っ越し、デザイナーのChristian Tseのもとで品質保証の仕事に従事しています。 また、彼女は購入、査定や宝石の鑑別においてEckertの手助けをしています。

Montserratがジュエリー業界に参入したことで、わずかな期間の隔たりがあったとしても、この母と娘は家族の歴史が4世代に渡って強く引き継がれていると言えるでしょう。

私の祖父は、私がジュエリーデザイナーになったり、私の娘が宝石鑑別士になるのを見ることができませんでした、とEckertは語ります。 しかしながら彼の遺産と技能は永遠に引き継がれます、と続けました。 

 

寄稿者Jaime Kautskyは、GIA Diamonds Graduate(GIAダイヤモンドグラジュエイト)およびGIA Accredited Jewelry Professional (AJP アクレディテッドジュエリープロフェッショナル)であり、The Loupe(ルーペ)誌の副編集長を務めていました。