デビアスのサイトで目立った市場の混乱模様
10月 20, 2015

デビアスの10月5日から8日のサイトでは、2.5億ドル(約300億円)から4億ドル(約480億円)と予想していましたが、拒否となった割合が多くなったことと、同社がサイト直前にいくつかの大口取引先と行なったとされる割引価格でのサイド取引により、この予測は微妙なものとなりました。
サイトでは、全面的に最低でも10%の価格低下を期待していたデビアスのサイトホルダーのほとんどが落胆しましたが、多くの在庫を抱える顧客の核となるグループは、手持ち在庫の価値が下がることを恐れ、価格低下には反対の姿勢を示しました。 サイトが一旦終了すると、当初の割合の総量に関する合意はほとんど見られず、ほとんどのメーカーは利益を出すカットができない原石にはまず興味がないということだけが、共通する結果となりました。 また、デビアスが以前に拒否を受けた商品を特定のクライアントに割引価格で売却したという情報に関し、ディーラーが不服に思っていることが伝えられました。
ほとんどのディーラーが直面している問題は、最大の大きさのものを除くその他全てのサイズや様々な品質の原石の在庫を大量に保持していることです。 その在庫は3~4ヶ月分にもなると推定する者もいる。
これは、クリスマス向け商品を目的としたデビアスの最終サイトでした。 11月2日から6日のサイトはちょうどインドのDiwali(ディワリ)祭前夜、ダイヤモンド企業は伝統的に2~3週間休業するという時期に行われます。 アナリストは、多くのインドのダイヤモンド事業はDiwali(ディワリ)後も休業し、そのまま年内は休業となる可能性もあると予想しています。
デビアスの2015年の上半期は、前年同期に比べダイヤモンドの市場販売が26%減少しており、今年度でみると、去年の年間販売量である3270万カラットから500万カラット近い減少となる2800万カラット程度の売却になると考えられています。
世界最大量の生産者であるロシアのAlrosaの上半期は、昨年とほぼ同じ結果となり、売り上げ総量は1800万カラットを少し下回る程度、また利益は21億ドル(約2520億円)となりました。 しかし同社は、9月の価格低下と顧客による拒否または延期の予測により、下半期における収益は下がるとの見方を示しています。
Alrosaは、生産の大半(昨年度は3830万カラット)を、デビアスのサイトのような通常販売と、契約販売および入札にて売却しています。
ロシアの同社の昨年の売上高は37億ドル(約4441億円)となりましたが、ダイヤモンド市場が困難な状態となっているため、市場で販売する代わりにロシア政府による備蓄業者であるGokhranに23200万ドル(約279億円)以上を売却しました。 代わりに、Gokhranがダイヤモンドの在庫のためのオークションを定期的に開催しています。
オークション
秋のシーズンが近づく中、クリスティーズとサザビーズはともに超高級宝石の市場は堅調さを維持していると伝えています。
10月7日、香港で行なわれたサザビーズのオークションでは、ある競売品が記録を樹立しました。27.68カラットのカシミール産サファイアで、そのカラット価格は24万2145ドル(約3000万円)(総量では670万ドル、約8億円)を記録しました。 その他2つの上位競売品は、526万ドル(約6億3千万円)で売却された天然グレー真珠ネックレスと、1880年代にティファニー社が製作したHarcourt子爵夫人のダイヤモンドネックレスで、 155万ドル(約1億9千万円)にてティファニー社が買い戻しました。
上半期の売り上げは、クリスティーズが(3億1320万ドル、約376億円)、サザビーズが(2億8600万ドル、約343億円)となり、昨年を少し下回るペースとなっています。 先行販売の予測を見てみると、上位の石に対する期待は昨年の記録的な金額から低下しています(大きなDフローレスのカラット価格が、昨年の14万ドルから16万ドル(日本円で約1700万円から1900万円)、今年は12万ドルから13万ドル(日本円で約1400万円から1600万円))。 しかし、昨年は特別に並外れた作品がいくつかオークションに出展されました。
11月10日には、クリスティーズは16.08カラットの クッションシェイプのファンシービビッドピンクダイヤモンドを競売する予定で、2300万から2800万ドル(約28億円から34億円)の値で売れることが期待されています。 その売却への弾みとして、オークションハウスでは近年売却された、特別並外れたファンシーカラーダイヤモンドの数々を展示したギャラリーを設置しました。
香港
9月16日から23日に行われた、香港宝石とジュエリーショーの価値低下に対し、取引は低い期待を超えるものとなりました。
ダイヤモンドに関しては、多くの業者間購入がショーの冒頭に行なわれ、主に堅調な企業が、困難な状況で現金を必要としているディーラーから、かなりの割引価格で商品を購入していました。
小売業者やジュエリーメーカーからの実際の購入は予想を超え、たいていの場合は非常に特殊な在庫の必要性のための特定的な品質カテゴリー (例えば、SIやgood I1のクラリティ)のものに集中していました。 総計では、ほとんどのディーラーにとって昨年より40%から70%減の取引となりました。
低価格の商品を期待したと思われる通常よりも多くのバイヤーが、米国、中東、ヨーロッパから訪れました。 先に記した業者間取引のほかには、取引猶予金を支払うような大きな取引は見られず、これは多くの取引がショーの終了間際まで完了していなかったということを意味しています。 結果として、メーカーは容認できる価格で商品を売却することができ、バイヤーは必要な在庫を揃えることができました。
高級商品向けのディーラーは、大きな無色の石を減らし、よりファンシーインテンスでビビッドな黄色のものを多く紹介していました。
カラーストーンに対する需要はあるものの、中国や他の主要な宝石市場の需要が低下する中で、多くのバイヤーは、より良い品質のルビーやサファイア、エメラルドの価格が非現実的だと感じていました。 この現状により、需要は代用となるカラー宝石に移りました。例えば、ルビーの代用にルベライトやスピネル、サファイヤに対してはタンザナイト、エメラルドに対してはぺリドットやグリーントルマリンなどです。
Russell ShorはカールスバッドにあるGIAのシニア業界アナリストです。