業界分析

デビアス・サイト:回復か超過か?


Rough and polished diamond
デビアスのCEOであるPhillipe Mellierは、原石と研磨されたダイヤモンドのどちらの需要にも改善が見られるとしている。 4月、同社は好転を理由に、ここ数ヶ月の中で最も大きなサイトを開催した。 写真:Robert Weldon / GIA

4月4日〜8日のサイト期間に、デビアスがダイヤモンド原石の価格を平均で2%引き上げたことが報告されています。 デビアスが公表した6億6000万ドル(約720億円)は、予想を上回るものでした。

デビアスの価格引上げについて、2年間に渡る低迷から復活の兆しを見せ始めたメーカーからは、市場を懸念する声が上がっています。 とはいえ、昨年のようにクライアントが商品を拒否する報告がないことから、大方は収益性のあるものとなっており、取引に応じています。

デビアスのCEO(最高経営責任者)である Philippe Mellier は、研磨されたダイヤモンドの需要は卸売レベルではかなり良好で、昨年よりも「原石の需要は非常に高くなっている」と話します。 通常、季節的需要が減少する1年の中頃にあたる5月16日〜20日の期間では縮小するであろうことを示唆しました。
 
アルロサ社は、ほぼ25%の売上が減った昨年からの原石の備蓄分 2,200万カラット(2.5億ドル(約270億円)相当)があることを発表しました。 同社は鉱山からの産出を5%から7%減少させる予定ですが、1月と2月で価値においてはデビアスよりも少々下回る7億8000万ドル(約850億円)相当の原石を売却しました。

一部のアナリストは、デビアスとアルロサ社が正しいとされる世界需要よりも多くの原石を販売することで、市場の回復を危うくするのではないかと懸念しています。

さらに、昨年の苦境に比べ取引が回復しているにもかかわらず、ダイヤモンド業界の金融市況における締めつけは続いています。 銀行家(およびダイヤモンド業界のほとんどの人々)は、過剰在庫の縮小と研磨済み価格の引き締めに基づく回復が不十分であることを認識しています。

業界に20億ドル(約2,200億円)(業界の総貸付残高の約12%)を融資しているスタンダードチャータード銀行は、未払い融資分100%の担保を調達するか、未払い残高の支払保険を確保するよう、今週クライアントに通知したと伝えられました。 同行では、過去に(または他の銀行で)行われたとしても担保として債券は受け入れない、としています。
 
スタンダードチャータードは規制やコンプライアンス環境の増加によるものだと主張していますが、銀行側では軒並みの不良債権が負担となっています。中国のバブル崩壊後、とりわけ第一次産品などは、価格の急激な下落(特に原油やガス)が起こっています。 ブルームバーグによれば、銀行側は2,610億ドル(約28兆2000億円)のローン・ポートフォリオの約40%を減らすか、再構築を試みていると報告しました。 また、新しいCEOは銀行のシニアマネージャーを総入れ替えしました。
 
Israel Diamond Exchange(イスラエル・ダイヤモンド取引所)と International Diamond Manufacturers Association(国際ダイヤモンド工業会)の会長らは、5月に予定されている World Diamond Congress(国際ダイヤモンド会議)における、クレジットの引き締めの緩和を業界の貸し手に働きかけるよう強調的な行動を呼びかけました。

中国最大の宝石小売店であるChow Tai Fook(周大福)は、香港と中国本土の両方における売上高の継続的な減少を報告しました。 同社は、同店舗での前年の同時期と比較した3月31日までの四半期で、売上は26%ダウンであったとしています。

カラーストーン

Gemfields(ジェムフィールズ)は4月のオークションで上質なエメラルドが記録価格に近い価格で落札されたことを伝えています。(469,000 カラット が3,300万ドル(約36億円)、1カラット当たり70.68ドル(約7,600円))
 
Gemfields(ジェムフィールズ)のCEOである Ian Harebottle 氏は、同社はマーケティング戦略をより小売市場向けへ移行していると話しました。 これまで同社の広告モデルを務めていた女優のミラ・クニスとの3年契約の更新は行われませんでした。 同社は2年前に買収したFaberge(ファベルジェ)ブランドの名のもとでエメラルドやルビーのジュエリー販売を促進するために、米国のバーグドルフ・グッドマンのようなトップの小売業者との提携に力を注いでいます。
 
同社のカゲム鉱山のエメラルド 3,010万カラットとモンテプエズ鉱山のルビー 840万カラットを販売し、2015年には1億7140万ドル(約185億円)の収益を上げ、1,230万ドル(約13億3000万円)の収入を得ました。 Harebottle 氏は、コロンビア、スリランカ、マダガスカルと、エチオピアでのプロジェクトにおいて、高まる需要のために収益の20%、広告に11%、調査に9%を充てていると述べています。

オークション

この春のオークションでは、市場におけるファンシーカラーダイヤモンドと主要なルビーの記録的な売上が期待されています。

4月20日のニューヨークのクリスティーズでは、Verdura による 15.99カラットのジュビリー(Jubilee)ルビーのセットと、 GIA でグレードされた10.07カラットのファンシーインテンス・パープルピンク・ダイヤモンドが出品されます。 5月18日のジュネーブのクリスティーズでは、3,800万ドル(約41億円)から4,500万ドル(約48億6000万円)が予想されている 14.62カラットのファンシービビッド・ブルーオッペンハイマー・ダイヤモンドが競売にかけられます。

5月17日のサザビーズのジュネーブオークションでは、GIAがグレードしたビビットピンクダイヤモンド「ユニークなピンク」15.38カラットが出品され、 2,800万ドル(約30億円)から3,800万ドル(約41億円)で落札が予想されています。 そして今月初め、 サザビーズの香港セールで、10.1カラットのデビアスミレニアム4・ファンシービビッドブルー・ダイヤモンドが、310万ドル(約3億5000万円)で売却されました。 同じセールでは、ファンシービビッドオレンジ・ダイヤモンドが2,470万ドル(約2億6700万円)で、イヤリングとセットとなったインペリアルジェダイトのリングが同じような価格で売却されました。

Russell ShorはカールスバッドのGIAのシニア業界アナリストです。