特集

仕上げを念頭に置いて始める:ダイヤモンドの原石を評価するヒントやツール


カナダのモントリオールの宝石学スクールの学術ディレクター、Chandra Hornは、ダイヤモンド原石を評価する際に「この原石から何になるだろうか、何がそこにあるのかと、常に想像しているでしょう」と語る。写真:Kevin Schumacher/GIA
カナダのモントリオールの宝石学スクールの学術ディレクター、Chandra Hornは、ダイヤモンド原石を評価する際に「この原石から何になるだろうか、何がそこにあるのかと、常に想像しているでしょう」と語る。写真:Kevin Schumacher/GIA
ジュエラー用の10倍ルーペ、ミリ測定ゲージと標準的な電卓があれば、世界中の職人採鉱者は手で採鉱するダイヤモンドの原石の現実的な収益価値を決めるには充分である。 ラパポートダイヤモンド報告書のコピーを持つことも損はありません、とEcole de Gemmologie de MontrealのアソシエートディレクターであるChandra Hornは、2015年10月のGIAのカールスバッドのキャンパスで開催された講演で学生達に言いました。  

Horn氏は、学校の学生人口の大半を占める職人採鉱者の問題は大規模な製造施設/組織が使うDTC/デビアスのような評価ソフトウェアへのアクセスがないことだと言います。 彼らはまた、発見した物を、製造およびその他の費用を決定する際に比較するための原石のサンプルをあまり持っていません。

その鍵は、評価の各過程を通して、最終製品を考慮し、仕上げを念頭に置いて始めることだとHornは言いました。

「これら宝石の一体的な目標は成品として終えることです」と、ダイヤモンド原石の評価について教えるHorn氏は言います。 「これらのダイヤモンドの価値とグレードをどのようにつけるかを見始めるのは、水晶玉で未来を予測し、これらが将来何になるかを見て、これらの現在の状態でどのぐらいの価値があるかを逆向きに進んで考えるようなものです。」

Hornは、GIAの4Cのポリッシュされた石用のダイヤモンド品質と比べられる、「Cの原石」、または評価基準を紹介しました:

研磨されたダイヤモンドの4C対 ダイヤモンド原石の評価要因
研磨された 原石
カラット重量 カラット重量
カット 形/メイク(時にはモデル)
クラリティ(透明度) 品質
これらの基準の知識と、電卓、ルーペやゲージがあれば、彼女の学生達や他の大規模な製造業務へのアクセスのない人々でも実際に原石を評価できると、Hornは言いました。

HornはDTC/デビアスがダイヤモンドの原石を11344のカテゴリに仕分けすると語った。 職人鉱夫は多くを使用しないものの、手で採鉱するダイヤモンドの原石の現実的な収益価値を決めるために必要なのはシンプルなツールいくつかで充分である。 写真:Kevin Schumacher/GIA
HornはDTC/デビアスがダイヤモンドの原石を11344のカテゴリに仕分けすると語った。 職人鉱夫は多くを使用しないものの、手で採鉱するダイヤモンドの原石の現実的な収益価値を決めるために必要なのはシンプルなツールいくつかで充分である。 写真:Kevin Schumacher/GIA

最初のステップ:サイズと形

理想的な最初のステップは、サイズやカラット重量によって原石のパーセルを仕分けることだとHornは言いました。 鉱夫や製造業者は、原石(立方体、八面体または立体12面体として成形することが非常に多い)の外部と内部を考慮して、どのようにカットできるか、そしてどのポリッシュされた形が最も市場価値が高いかの両方を考慮する必要があります。

 彼女は「私達は常に形を識別しようとしているので、内部の方向がわかります」と言いました。

「カッターは、それが劈開方向、またはダイヤモンドに見られる差動硬度であっても、内部のグレインに注意して尊重する必要があります。 これらは私達がこれらの石をどのように扱うかを決定します。」

石の内部の方向が明らかでない場合は、ユニークな表面の特徴が手がかりを提供すると、Hornは語ります。 「最も小さい八面体は、それがどこにあり、またどの方向を見ているか、カッターに伝えます。」

Hormは、原石の最終形状は、プロセスに大きな役割を果たしていることを改めて表明しました。 多くの場合、特に人々が大規模な製造施設用に評価をしていない場合は、ラウンドブリリアントカットが最も望ましい最終形状です。

「何故か? それはラウンドが最も良く売れるからです」とHornは言いました。 「ラウンドは、私達が市場で見るものであり、ラウンドは金庫にいれておくものではありません。」  

しかし彼女は、この講堂の生徒の中にいる次の新進気鋭のジュエリーデザイナーが、三角形のダイヤモンドの婚約指輪を推進する方法を見つけられれば、すばらしい利益の機会になるだろうとわかっています。

「三角形の婚約指輪のトレンドはマクル(三角形状の原石)の価値を変えることが出来ます」と彼女は述べました。 「そのための市場を作ることができるなら、石はたくさんあります。 原石のディーラーの多くはこれらの石を持っていますが、彼らにとってそれを三角形にカットすることに価値はありません。」  

「原石の作業をするとき、あなたは常に石の輪郭を探しています」とHornは語る。 写真:Kevin Schumacher/GIA
「原石の作業をするとき、あなたは常に石の輪郭を探しています」とHornは語る。 写真:Kevin Schumacher/GIA

原石の品質:インクルージョン

ダイヤモンドの原石の品質、研磨された商品に相当するクラリティは、評価のための次の側面です。 インクルージョンとその反射だけでなく、応力とひずみの領域も考慮しなければなりません。

「インクルージョンは、あなたがその石をどうすることができるかを変えます」とHornは言いました。 「あなたは結晶学と、カッターや製造業者が何を行うかについて少しでも知る必要があるだけでなく、ダイヤモンドのグレーダーがこの最終商品をどのように見るかについて理解しなければなりません。 これが研磨された石としてグレードされるにはどのような効果がありますか?」

聴講者に画面上で例を表しながら、Hornはインクルージョンがどのように応力やひずみの領域に囲まれてできるかを説明しました。

「応力の部分やひずみは、私達がそれを切ったり、ポリッシュしたり、ファセットを配置しようとする際に、石が文字通り破裂したり粉砕することにつながります」とHornは言いました。 「通常これを回避するため(それはカッターの仕事ですが)、あなたがダイヤモンドの原石を買ったり、価値をつけたり、グレードをつけようとしている場合は、それを意識する必要があります。 これによりこの石で何ができるか変わったため、もはやシンプルではなくなってしまいました。 私達はこれを危険地帯として考慮しなければなりません。」

ソーイングプロセス自体は、そうでなければ「クリーン」な石にリスクを提示することがあります。Hornは、自身のコレクションから、ソーイングの前にはフェザーのなかった原石のクローズアップ画像を表示しました。

「カットし、不均等に分割することで、これは良いラウンドの大きな石になるでしょう」と彼女は言いました。 ソーイングをする人は正しい鋸面に沿って仕事をしていましたが、「バーン!と、少し急いでいたためスピードアップしすぎて、このフェザーを引き起こしました。」

「細心の測定と数学 - 私から契約したわけではなく、私はそれと恋に落ちました」とHornは語る。 写真:Kevin Schumacher/GIA
「細心の測定と数学 - 私から契約したわけではなく、私はそれと恋に落ちました」とHornは語る。 写真:Kevin Schumacher/GIA

原石の色:バランスをとる

Hornは色について、原石の評価は全てを説明しきれないと説明しました。 「DやEはありません」と言いました。 「それは、光、ミディアムと、色です。」

一般的に、これとは全く異なる命題のファンシーカラーの場合を除いて、「少ないほうが良い」というルールが適用されます。

「それをカットしたら、色は同じに見えることはありません」と、人々は色の濃度がどこにあり、研磨された石にどのようなバランスを表すかを考慮しなければならないことを指摘し、彼女は言いました。 「ファンシーカラーストーンには、絶対に色が飽和したものであることを確認する必要があります。」

例えば、大概は石を浅く浸透するだけのかなり浅い染みがあるグリーンダイヤモンドでは、カッターが間違って「原石の肌」を取りすぎるとカラーレスダイヤモンドになってしまうとHornは言いました。  

カラーゾーンに多く見られるピンクやブラウンは、カラーダイヤモンドを扱う技術の浅いカッターによるリスクがあります。

「ピンク色を示す小さな領域のゾーンは、過去数年間のオークションの結果でご存知でしょうが、その価値にたくさんのゼロを追加します。あなたはカッターにそれをポリッシュして取り除いて欲しくないでしょう」と彼女は言いました。 「それは、D色(研磨された石)としてできた場合であっても大きな間違いとなるでしょう。」

Hornは、原石を評価する場合には、全体的に「多くの要因」を考慮するべきで、「研磨された商品の値段に基づいています」と述べました。

「最終的に、自分がどのような価値を得られるか? 自分の収率はどうなるか? この原石のどのくらいの割合をこのカットプロジェクトで留められるか?」とホーンは言いました。 「それは、常に数学と資金管理に戻ってくるでしょう。」

寄稿者のJaime Kautskyは、GIAダイヤモンドグラジュエイトおよびGIAアクレディテッドジュエリープロフェッショナルであり、The Loupe(ルーペ)誌の副編集長を務めていました。