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Baselworld(バーゼルワールド)2016:むらのある需要、派手はアウト、レアがイン


Baselworld(バーゼルワールド)2016のホールを歩く参加者。
2016年のBaselworld(バーゼルワールド)は総括してみると参加者は少なめで、派手な宝石は少ない方であった。 写真:Russell Shor / GIA

スイスのBaselworld(バーゼルワールド)ショーでは、特徴的な品が派手な宝石を抑えました。 3月16~23日に行われたショーでは、参加者も少なく、ビジネスもまばらでしたが、多くの出展者は需要は昨年より改善したと述べました。  

洗練された売り手は稀少で珍しく、特徴のあるデザインのものを、カラット重量のある商品の代わり(もしくはそれに加えて)に出展していました。

出展者はバイヤーが購入時の通貨切り下げのために再販が大変困難となる投資をするのではなく、宝石を探していたことを指摘しました。 前年のショーでは、大型ダイヤモンドの販売者は5カラット以上のダイヤモンド販売の3分の1以上が宝石としてではなく、投資として購入されたと見積もっていました。

確かに、何年にもわたり、大型で高品質のダイヤモンドやカラーストーンの販売者はBaselworld(バーゼルワールド)フェアにおいて、主にロシア、中国、中東からの、多様なグループの個人顧客からの旺盛な需要に頼ってきていました。

このような石の需要は過去2年間で大きく落ち込んでいますが、これは複数の原因が重なっています。大型現金取引の取り締まり協定、米ドル高騰により他通貨の物価が10~40%上昇したこと、中国や他の素早い経済成長が起きていた国での経済停滞、また石油その他の先物取引の低迷等です。

5カラット超の無色のダイヤモンドはショーでは、販売が難しい状況でした。 主要な宝石ディーラーの一人は「ロシアと中東からのバイヤーが本当に少なかった。彼らは以前は高額需要の多くを担っていたんです」と話していました。

ディーラーはまた、ほとんどのディーラーは需要が改善されるまで待つことのできる経済力があるため、一般的な商業用のダイヤモンドほどトップクラスの石の価格は下がっていない、と言いました。 また、商業用ダイヤモンド市場とは異なり、大型ダイヤモンドのバイヤーは品質を落としてお金を節約しようとはしません。

「彼らはベストを買うか、購入しないかです」と彼は言いました。

商業用サイズのダイヤモンド需要は、ショーや一般的な市場で多少は改善しました。 理由の1つは価格が下がりすぎ、出展者の1人が言うように、「メーカーと顧客が直接ビジネスを行いたい状態なのです。」

彼は「回復の兆し」がダイヤモンド市場に表れているとも言いましたが、それはまだ脆弱なままです。 「我々は、採鉱会社が価格を上げるか、中国経済の下りが底辺まで行ったか、また欧州の主要銀行の問題が別の不況をもたらすかどうか、テロや難民が世界経済を崩壊させるかどうかなどを心配する必要があります。 多くのことを心配しなけれななりませんが、楽観的でいなくてはいけません。」 3月22日のブリュッセルのテロ攻撃はバーゼルの北約350マイルで起こり、市の警察と経営者側が参加者のブリーフケースやバッグを無作為に検査することとなり、また正面入り口のアクセスを制限することになりました。


セットされていない28個の「アップルグリーン」ナミビア産デマントイドガーネットは、ネックレスとして展示された。

この28個の「アップルグリーン」ナミビア産デマントイドガーネットのネックレスは、合計128カラットある。 提供:Paul Wild、ドイツ、イダー=オーバーシュタイン。 ご注意:この写真は、過酷な照明条件下で携帯電話を使用して撮影されました。 写真:Russell Shor / GIA


カラーストーンの需要は非常に選択的でした。 バイヤーは、非常に質の高いビルマルビー、無油コロンビア産エメラルドとカシミールサファイアのようなさらに稀少な石を探していました。

「超富裕層は今、他ではどこでも得ることができない非常に優れた石を欲しています」とディーラーの1人は言いました。 「しかし、$20,000から$50,000の範囲内の石の需要は消失してきています。 問題は、このようなのユニークな石を販売したら、それらを交換することはほとんど不可能になるということです。」

あるディーラーは、28ラ個のウンドカットで合計128カラット(ct)のナミビア産デマントイドガーネットのネックレス展示していました。 ディーラーはそれを作るのに8年かかったと話していました。特に各石の色は通常のオリーブカラーでなくアップルグリーンで、2ct 以上のその色の年間採掘量は大変少ないからです。

別のディーラーは50.09ctの パープルバイオレット変色サファイヤを財産から展示していました。彼が言うには多くの関心を引き起こし、真珠ディーラーは、20.48mm X 23.21mmのドロップ型南洋養殖真珠を提示していました。

50.09ctの リングにセットされたパープルバイオレットサファイア。

この50.09ctの Pioneer Gems of New York(パイオニア・ジェムズ・オブ・ニューヨーク)によって提供された変色パープルバイオレットサファイアは、Baselworld(バーゼルワールド)においても稀少で珍しい宝石の一つであった。 サファイアは、無色のダイヤモンドメレーをアクセントにリングにセットされている。 ご注意:この写真は、過酷な照明条件下で携帯電話を使用して撮影されました。 写真:Russell Shor / GIA


フェアに製品をデビューさせたハイエンドのジュエリー店や高級時計店は、数年前のような宝石に飾り立てられた見た目よりも、そのデザインに焦点を当てました。

Chopard(ショパール)は新しい「Happy Diamonds(ハッピーダイヤモンド)」ウォッチラインで、「より少ないダイヤモンドを戦略的に配置し、最高の見た目を」と宣伝しました。 このラインでは、4つの5mm(0.5ctよりも少し小さい)ダイヤモンドを時計の文字盤の内側に浮かべています。 焦点は、職人の技とデザインであると同社は述べています。

5.03ctの ケース内で展示されているファンシーディープブルーダイヤモンド

この5.03ctの 合成ファンシーディープブルーダイヤモンドは、ロシアのサンクトペテルブルクのNew DiamondTechnologies(ニューダイヤモンドテクノロジーズ)が、Baselworld(バーゼルワールド)で展示した。 同社は、HPHT処理によって作成された史上最大の合成ブルーダイヤモンドであると主張している。 写真:Russell Shor / GIA


世界でも最も高級なダイヤモンドジュエリーで知られるLaurence Graffでさえ、ど派手な見た目から一歩下がり、サファイヤとダイヤモンドのより落ち着いたラインの時計「Butterfly(バタフライ)」コレクションを創りだしました。

スイスの時計メーカーの報告によると、スイスで作られた高級時計の輸出が今年に入ってからの2か月で8%近くも下がり、その主な理由は中国の減速の大きな打撃を受けた香港(年間を通してのロングスライドを継続中)が33%減、派手な贅沢が好まれなくなってきている米国への売上高が13.7%減少していることにあるとされています。

またショーでは、ロシアの合成製造業者が 5.03ctの ファンシーディープブルーを展示し、これは今までHPHTプロセスによって生成された最大のブルーダイヤモンドであることを主張しました。 同社は、このダイヤモンド成長には1週間以上かかり、現在追加の合成ブルーダイヤモンドを作成中であると述べました。

Russell ShorはカールスバッドにあるGIAのシニア業界アナリストです。