バーゼルGemFest(ジェムフェスト):合成ダイヤモンドの質の向上に伴いその検出方法も向上
4月 8, 2015

イギリスのデビアス テクノロジーUKの研究責任者であるDr. Simon Lawson、およびGIAの研究開発責任者であるDr. Wuyi Wangは、市場で主に見られる2種類の合成ダイヤモンドについて、そしてそれらを識別するために使用される技術について話しました。 また、GIA DiamondCheck(GIAダイヤモンドチェック)、デビアスの自動メレースクリーニング装置(AMS)、DiamondSureとDiamondViewなど、合成ダイヤモンドの可能性を識別するために使用される装置についても説明がありました。
Lawson 博士が、9億年から35億年前、地球表面下60マイルを超える場所で天然ダイヤモンドがどのように形成されたかについて詳しく説明した後、同博士とWang博士より、高圧高温(HPHT)と化学蒸着法(CVD)を使ってラボラトリーにて合成ダイヤモンドがどのように作られるかについて説明がありました。
自然界でのダイヤモンド形成の工程を複製したHPHT合成石は、1950年代に工業用として開発された最初の合成石でした。 デビアスは1980年、研究のため最初の宝石品質の合成石を作りました。
HPHT合成ダイヤモンドは、中央にチャンバーが置かれた高圧プレス機で成長させます。 種結晶をチャンバー底部に置き、金属溶媒で覆います。 黒鉛粉末を金属溶媒の上に置き、その後、混合物を非常に高い圧力のもと、天然ダイヤモンドが形成される温度よりも若干高い、摂氏1300度から1500度の高温にさらします。
自然界とラボラトリーでの成長条件の違いにより、HPHT合成石は天然とは異なる過程で形成されるため、天然成長のものは八面体または十二面体の形状であるのに対し、ラボラトリー成長のものは六‐八面体を形成します。 このプロセスにより、石の中に証拠となる金属インクルージョンが残ることが多く、そうした合成石の中には磁石に引き付けられるものもあります。 これらのインクルージョンは、顕微鏡を使って視覚的に識別可能です。
その他の識別特性として、特に結晶の成長特性に関連しているキューレットの周囲に見られるカラーゾーニングや、独特の緑がかった蛍光などがあります。
観察においてダイヤモンドが合成であることがいくらか示唆される場合もありますが、GIAのDiamondCheck(ダイヤモンドチェック)やデビアスのDiamondSure、DiamondViewといった装置では、分光分析、フォトルミネセンス分析、および/またはリン光分析などを使って、合成石をより断定的に同定します。
Lawson博士によると、デビアスが開発したDiamondViewスクリーニング装置では、HPHT合成石における高温での成長の痕跡や天然とは異なるその結晶構造の痕跡を指摘することができるということです。 またこれらの合成石は、何百万年という年月ではなくたった数日間高熱にさらされただけであるため、デビアスのもうひとつスクリーニング装置のDiamondSureでは、石の内部における窒素不純物の構成機構の違いを検出することができるとのことです。
さらにWang博士により、新しい合成石製造業者の中には、ファンシーブルー、無色、ファンシーイエローダイヤモンドなど、より高品質のHPHT合成石を作成しているところがあるとの指摘もありました。 これまでGIAが調査した中で最も大きなファンシーカラーのHPHT合成ダイヤモンドは、4カラット以上のものでした。 Wang博士によると、ロシアの製造業者であるニュー ダイヤモンド テクノロジー社は、5カラットほどもある無色およびほぼ無色のHPHT合成石を生産したとのことで、 そう説明しながら5.19ctでKカラー、I1、隅切長方形の石と、 4.30ctでDカラー、SI1、クッション型の石を見せてくださいました。
HPHT法よりは新しい合成石製造工程であるCVD法は、この10年間で急速に開発されました。 通常メタンガスと水素ガスの気体をマイクロ波によって加熱してプラズマを作り、このプラズマが炭素原子を基板に堆積させダイヤモンドとして結晶化させます。 成長後の合成ダイヤモンドは、立方体や円筒形に切断されます。
HPHT合成石とは異なり、CVD合成石には独特のインクルージョンが無いので、HPHT合成ダイヤモンド同様に赤外分光法またはDiamondSureを使用してCVD合成石の証拠となる吸収特徴を検出することで、スクリーニングすることができます。 その後DiamondViewにより、CVDダイヤモンド独特の蛍光パターンを明らかにすることで決定的な同定が可能となります。 また、CVDのアニール(高温加熱処理)により一部の特徴的分光輝線が除去されることがありますが、現在入手可能なCVD合成石において非常に一般的に見られるケイ素関連の不純物(天然ダイヤモンドで見られるのは非常に稀)を除去することは極めて困難であることが指摘されました。
CVD合成石の成長は天然ダイヤモンドと異なっているため、拡大下では独特の線条パターンを示し、明瞭なオレンジ色蛍光が見られます。 このオレンジ色は、成長後アニール(非常に高温で加熱)されたダイヤモンドについては、通常緑色に変わります。
今日の市場ではまだ天然ダイヤモンドが主流ですが、合成石の数は増加しその品質も向上し続けているため、開示は必須であるとWang博士は指摘しています。 宝石ラボラトリーは、その開示に重要な役割を果たしている、とのことです。
その一例として、2003年に生産された強い褐色の0.10から0.30カラットのCVD合成ダイヤモンドを見せてくれました。 それから3年の内に生産者はほぼ無色の石を開発する技術を習得し、2011年までには1カラットに近いほぼ無色の石を生産可能としました。 今日では、ほぼ無色のCVD石の中には、3カラットほどの大きなものがあります。
Wang博士はまた、CVDの生産者が合成ダイヤモンドの成長過程において窒素レベルを制御することによって、いかにファンシーカラーダイヤモンドを作り出すか、その方法についても説明しました。 ラボラトリーで成長した茶色がかったピンクとピンクダイヤモンドの事例をいくつか提示しました。 また、異なる製造業者により生産されたCVDは、それぞれが独自の明白な識別特徴を有していることにも触れました。
Lawson博士によると、デビアスは、特に合成品の製造方法の変化に伴って同社のDiamondSureとDiamondViewを継続的に改善しており、検出能力を向上させているとのことです。 DiamondSureを自動化したタイプのAMSは、0.01ctまでのメレー石の検査をより経済的なものとするために制作されました。
Wang博士によると、合成ダイヤモンドがメレーのパーセルに混入されている場合は特に、合成ダイヤモンドを識別するのは困難なものになるとのことです。 博士は、重量0.004カラットの合成石をひとつ含む、104個の非常に小さなファンシーイエローダイヤモンドがセットされたペンダントの画像を見せました。
GIAのスクリーニング装置であるGIA DiamondCheckは、0.01〜10カラットまでの、合成石、処理ダイヤモンド、ダイヤモンド模造石の可能性のある石をすべて指摘できるとしています。 分光分析を備えるDiamondCheckは、無色およびイエローダイヤモンドのスクリーニングを迅速に行えるとのことです。 この装置は、ピンクダイヤモンドについても、まず酸で煮沸しコーティングの可能性があればそれをすべて除去されていれば、そのスクリーニングにも効果的であるとのことです。 DiamondCheckはまた、HPHT処理の天然ダイヤモンドと、ダイヤモンド模造石も識別します。
DiamondCheck、DiamondSure、AMSは、合成ダイヤモンドの可能性を指摘できる迅速なスクリーニング装置です。 DiamondViewは、ダイヤモンドが天然または合成であるかどうかを判断するために、熟練技術者による確認が必要とされるより詳細な分光解析を提供します。
両博士とも、サイズや品質、そしてより自然に見える外観といった点における合成ダイヤモンドの継続的向上によってもたらされる課題について強調しました。 1971年に初めて宝石品質の合成石試料が作られて以来、スタッフ40名以上におよぶGIAの科学者は合成ダイヤモンドの研究を続けてきました。 博士らはまた、デビアスとGIAは合成石の発達に遅れを取ることなく、今後も正確に鑑別を行うことができるものと、自信を持って語りました。
「私たちの研究は宝石についての世界の理解を深めるばかりでなく、宝石を購入、販売する人々を保護する事にも貢献しています」とWang博士は締めくくりました。

デビアス テクノロジーの研究責任者であるDr. Simon Lawson博士は、天然ダイヤモンドがどうやって形成され、合成ダイヤモンドがHPHTやCVDプロセスによりいかに作成されるかについて説明した。 写真:GIA
筆者について
Russell Shorは、GIAカールスバッドのシニア業界アナリストです。