虹を追いかけて、オーストラリアオパールのフィールド遠征
, , と
オパール・バグにご注意!愛しみのある虫の仲間で、一旦噛まれると逃げ出せなくなります。
はじめに
オーストラリア内陸の荒野から産出するブラックオパールとボルダーオパールは世界の主要供給産地でもあることからも、オパールはオーストラリアと表現されるほどです。 記録に残る最初にオパールが発見されたのは1840年代で、それ以来、その遊色の揺らめきが世界中の消費者に感動と喜びを提供してきました。
オーストラリアのオパールフィールド遠征
GIAは2015年5月、有名なオパールフィールドを数箇所探査するためにフィールドジェモロジストチームを南半球に送り、息を呑むようなオパール宝石について総合的に学んだ経緯があります。チームは、鉱山労働者の粘り強さや楽観的な人柄に感銘を受けました。 チームはGIAのフィールドジェモロジストVincent Pardieu と Andrew Lucas、G&G技術編集者Tao Hsu、アシスタントフィールドジェモロジストVictoria Raynaud、フィールドカメラマンDidier Gruel と Didier Barriere Doleacで編成されていました。

スター模様がある。 また、漆黒の背景色を有する。 写真提供:Cody Opal

旅
緯度22°と31°の南、および経度145.30°からクイーンズランド州と南オーストラリア州の境界を越え内陸の砂漠の中心部に広がる地帯には、謎の現象が見られ、地球の形成に関する研究者が関心を寄せています。


世界有数のオパールフィールドを4箇所探索しました。 出典:2014年 Anthony Smallwood(アンソニースモールウッド)
ブラックオパールでお馴染みのニューサウスウェールズ州ライトニングリッジから、オパールの旅は始まりました。 ライトニングリッジでチームは、オパール業界のために情熱を燃やし、経験と技術を共有してくれる複数のオパール鉱山労働者、研磨士、研究者に会いました。 著者らはまた、多くの個性あるオパール店舗を訪問し、ルースオパールの完成品やオパールジュエリーを見学し、 次に、ボルダーオパールフィールドを訪問するため北西部に向かいました。 コロイト、ヤワ、クイルピーを一日ずつ回りました。 露天掘りおよび地下鉱山の両方をご紹介します。 (オーストラリアの鉱山労働者は、open-pit(露天掘り法)をopen-cutと呼びます。これからご紹介する鉱山労働者のビデオに使われていますのでご承知置きください。)ボルダーオパール完成品を確認し記録に残しています。 有名はオパールフィールドであるホワイトクリフ、アンダムーカ、そしてクーバーペディといった、グレートアーテジアン盆地の南部と南西の境界にそった地域は、今回の旅には含まれていません。 GIAグループが訪問した地域の詳細情報は、次のオーストラリアのオパールシリーズの記事で紹介されます。

オーストラリア 写真:Victoria Raynaud/GIA

オパールフィールド

オーストラリアのオパールは、グレートアテジアン盆地の主に堆積岩で発見されます。 グレートアーテジアン盆地は、地球上で最大の被圧帯流域であり、主要な「水のタンク」はオーストラリア内陸部に水を供給しています。 盆地は堆積物で満たされた内海の名残です。 火山岩オパールは少量で、堆積オパールに比べると生産量は非常に限られています。 オパールの化学組成と顕微鏡で構造は解明されていますが、研究分野ではオパールの形成については議論が続いています。

水を供給しています。 そして、オパールに並び多くの観光客が温泉を楽しんでいます。
オパールが形成される過程について複数の仮説とそれを裏付ける根拠が発表されていますが、 唯一言えることは、オパールの形成過程はすべて同じではないということです。 仮説を立てる前に答えなければならない幾つかの重要な質問は、シリカの供給と移動、成長空隙、堆積条件、およびイオン交代のプロセスです。 これらオパールフィールドは、すべてジュラ紀から白亜紀にかけて形成された堆積岩の母岩があるなど多くの共通点もありますが、それぞれ異なる独自の特徴もあります。

最初に訪れた場所はライトニングリッジです。宝石業界では最高品質のブラックオパールといえばライトニングリッジと同義で扱われています。 町はニューサウスウェールズ州の北部にあり、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の境界に位置しています。 地理的に、ライトニングリッジはグレートアーテジアン盆地の一部、スラット盆地に位置しています。 母岩の堆積岩はどちらかというと変形がなく、水平な層理です。 ブラックオパールはノビ―や継ぎ目に形成され、 石は一般的に、地表からの6〜18mの間に発見されています。 このフィールドには白亜紀の素晴らしいオパール化石があり、 これら化石は国宝に指定され、展示用や古生物学研究のためにAustralian Opal Centre(オーストラリアオパールセンター)に保存されています。 ブラックオパール採掘の長い歴史、温泉、オーストラリア内陸部の独特なライフスタイルで有名なライトニングリッジには年間90,000以上の観光客が訪れ、人気の観光スポットとなっています。
ライトニングリッジの北西部にはクイーンズランド州のボルダーオパールフィールドがあります。 クイーンズランド州のボルダーオパールは非常に明るい遊色効果があり、これらの石を非常に魅力的なものにしています。 鉄鉱石の母石に固着して発見されるため、石はボルダーオパールと名づけられました。 母岩の堆積岩がライトニングリッジのものと非常に似ていますが、オパールはノビ―ではなく鉄鉱石に固着しているか筋状に発生します。 クイーンズランド州のフィールドでは、シームオパールも見つかることがあります。 地元の鉱夫らは、形状から鉄鉱石の団塊を「ナッツ」や「ユリの葉」など愛称で呼んでいますが、これらは同じ内部構造をしています。 オパールは鉄鉱石団塊表面または鉄鉱石の「ナッツ」の内核層間に現れます。 他にもこの地域には植物の化石がよく見られる領域で蛋白石化した化石が発見された記録があります。

商業採掘によって、枯渇してしまったものもあります。
クィーンズランド州には、12以上のボルダーオパールフィールドがあり、GIAチームはコロイト、ヤワ、クイルピーを訪問しました。 コロイトのオパールフィールドは、1897年に初めて発見され最近の採掘活動は1972年に開始されました。ボルダーオパールに対する消費者の関心が再び高まったため、より利益性が上がるようになりました。 Mark Mooreが運営する鉱山は、大規模な露天掘りおよび小規模立抗の両方で採掘を行っています。 この鉱山の石は品質も様々で、とても素晴らしい。 今日では、コロイトは紛れもなくクイーンズランド州の主要なボルダーオパール産地の一つです。
ヤワはコロイトの南西に位置する小さな町で、 ヤワという町の名前は1872年に大型な馬宿場があったヤワ支流から取られました。 同時期に小さなオパールフィールドが初めて発見されました。 この鉱区の「ヤワナット」は鉄鉱石ナットの中核に時々プレシャスオパールが形成されること有名です。 著者らは、大規模な機械化された採掘法とフォッシキングと呼ばれる鉱石収集を観察しました。 必要な物資の供給と食の提供に加え、永続的な温泉用ボーリングなど、町は観光とフォッシキング(鉱石収集)で有名になりました。
ヤワから北西に進みクイルピーに到着しました。 1885年に周辺でオパールが発見された頃、1917年にヤワは正式に町となりました。 ここは南部クイーンズランドのオパール産業の中心地としての役割を果たし、多数の歴史的ボルダーオパール鉱山への入り口となっています。 このフィールドの採掘活動は町の西太と北北西部に固まっています。 最近ここにはより生産性の高い幾つかの鉱山があります。 「ボルダーオパール」の産地として知られるこの地域は、様々なオパールが有する世界最大の生産国です。 有名なオパールの町に並び、クイルピーも今では観光客と鉱石収集家にやさしい場所です。 グループで町のオパール販売店、クイルピーの北部にある直径が数センチ~1mほどの鉄鉱石ナッツが露出した大規模露天掘り鉱山を訪問しました。 鉱山のオーナーは、生産の一部をカッティングや研磨とその研磨して、著者に見せてくれました。
ストーン
オパールは、シリカの非晶質であり、貴重なオパールは光が通ると干渉を起こし遊色効果と呼ばれる虹色の色彩を現します。 3次元格子に小さなシリカ球が隙間なくと並ぶよう構成されているプレシャスオパールは希少です。 光が小さな球の隙間を通ることによって虹の色に分割されます。 球の大きさは0.20ミクロンで、その隙間に光が通ると干渉して青の遊色が現れます。 0.25ミクロンでは緑色、0.32ミクロンでは赤色の遊色になります。 遊色効果を引き起こす小さなシリカ球見るには、少なくとも30,000X倍率の電子顕微鏡が必要です。

オーストラリアのオパール鉱山労働者、研磨士、ディーラーの全員が、オパールの重要な特徴の一つに、虹色全色が現れる唯一の石だと口を揃えて語りました。 この遠征ではオーストラリアの有名なオパールの両方のブラックオパール、ボルダーオパールの生産に焦点を当てました。 どちらの種類も幅広い色彩があり、実際には様々な色の組み合わせがある。 (催眠術用の石ではないなら)遠征メンバー全員が、オパールは魅惑的な石だということを発見しました。

ブラックオパールとは、上から見ると濃黒の地色のオパールを指します。 ほぼ透明から不透明な地色に無限な色彩の遊色が現われています。 ブラックオパールは最も希少で最も貴重なオパールと考えられています。 またボルダーオパールは、通常母岩の鉄鉱石で見つかるプレシャスオパールの細い筋があり、 鉄鉱石の空隙中にシリカが浸潤してオパールが形成されます。 ボルダーオパールは通常オパールの外形に沿うようにフリーフォームカッティング施されます。


Raynaud/GIA
遊色効果の色彩に加え、地色、虹色の色彩、色数、主な虹色、遊色の継ぎ目の厚さやボーダー色、透明度、石の形状など、様々な要素があり1つとして同じオパールはありません。多くの宝石専門家がオパールを最も複雑な石と考えられる理由は簡単です。 各種オパールの価値を決定づけるは市場の好みですが、オパールは個人的で美しさは正に主観的なものです。
オパールに関する要約は、おそらく紀元前1世紀に残されたと考えられています。
その中に、ルビーの煌めくファイヤ、高貴な紫色のアメシスト、エメラルドの緑色の海のすべてが光の中で同時に輝いていたと書かれています。
人々

オーストラリアのオパール鉱山労働者と会話を交わして、彼らが強烈な独立心の持ち主だという印象を受けました。 自由を愛し、自由気ままに生きれる人々です。 我々が話をした鉱山労働者の全員が、他には住めないと言うのです。 男性も女性も、まるで1800年代に西部へと住まいを移した米国のカウボーイを連想させます。 しかし、ライフスタイルや付き纏う危険は、オーストラリアのオパール鉱山労働者の比ではありません。
オパールの採掘会社は実質個人事業で、 多くの場合、企業は単に労働者2、3人とパートナーシップを結ぶか、他のケースではたった一人のこともあります。 従業員がいる場合でも、ほんの数人です。 この世界では、たくましいさが要求されます。 鉱山作業者はオパールを採掘するだけでなく、機械類の操作、修理、採掘作業に必要な仕事すべてをこなします。

これにはボルダーオパールが含まれている可能性があります。 オパール鉱山の多くは、パートナーとの共同経営や家族経営で、
父から息子へと受け継がれる。 写真撮影:Andrew Lucas/GIA
オパール採掘に人々を魅了する他の要因は、美しいオパールを見つけた時のスリルがたまらないからです。 リスクやギャンブル性も高く、たとえ保証はなくとも、大きな発見をしたいという情熱は厳しい時を乗り越える十分な動機になります。 ある鉱山労働者は、4年もオパールを発見できず、継続することは極めて困難だったと語りました。 その後、彼は鉱山でブラックオパールの大規模なポケットを発見したことで、すべての苦労が報われました。アドレナリンがどっと彼の体を満たしたと言います。 価値のあるオパール鉱床を発見できる保証はどこにもなく、成功するためには経験と知識、そして忍耐力、もちろん運も必要です。
50年前から採掘しても1,000ドル(10万円)以上の価値のものしか見つからず、一方10分間ここにいただけで何百万ドル(数億円)相当のオパールを発見した人を彼は知っている。
オパール鉱山労働者の全員がオパールを発見した時は幸福感を感じると答えます。 希望は鉱夫共通の感情で、最高品質のオパールの大規模ポケットを次に当たいという情熱が厳しい仕事や忍耐が価値あるものだと感じさせてくれます。
オパールを見つけることは、...エンドルフィンを注入するようなもので…それは母なる自然がまるで「さぁ、もう少し深く、遠くに何かが起こる」と励ましてくれるようです。 あなたの空想と夢があと数cmで叶うかもしれません。」
Frederic Mallock氏は、およそ10歳の時に父のオパール鉱山を手伝い始めました。 興奮がまだそこにあるんだが、これは一種別の興奮だと。 初め聞いた時は幻想のようでした。 今、彼はコツコツと45年の経験を積み、何が起こるかは知っています。発見のスリルがたまらないとこれまで以上に強い情熱を傾けています。 私たちが出会ったすべてのオパール鉱山労働者は、ブラックオパールかボルダーオパールかに関係なく、世界中のどの仕事よりもオパールの採掘がしたいと語りました。 会社オフィスに座って、指示に従い仕事するなんて彼らは誰一人として考えられないと すべての鉱山労働者が口を揃えて言います。
[補足]連れ合いはいない方がいい。それが最良だと。 自分自身が自分の上司だよ。 何を、いつ、どの方法でするか、また夢が実現するかもしれないなんて誰にも言われない。

Mark Moore氏は3月~11月までコロイトでボルダーオパールを採掘します。他の鉱山作業者よりは2箇月間長く作業にあたります。常に干ばつのうえ、夏には気温が48°C(118.4°F)に達し人と機械を灼熱に曝します。 オパール鉱山労働者の独創的かつ独立の精神でMoore氏は快適で調和のとれた内陸部の住環境を整えました。 野菜を栽培する温室、水のリサイクルシステム、さらには屋外に浴槽が2つあります。熱い石炭を自家製浴槽の下に置くだけでお風呂が沸かします。

私たちが出会った鉱山労働者の多くは、自らオパールのカッティングをし、原石と完成石を販売しています。 一部には、ライトニングリッジ、クイルピー、カナマラ、ヤワなどの鉱山近くの町に販売店を開いて、小売事業に参入している者もいます。 ライトニングリッジのJustine Buckley氏は採掘だけでなく、オパールのカッティング、デザイン、ジュエリー制作、さらには小売店を所有しています。 この鉱山から市場へのアプローチは、鉱山労働者は(市場性があるかによるが)卸売市場や観光市場に適応することにより収益を最大化することができます。 実際にブラックオパールやボルダーオパール鉱区で出会った幾つかの鉱山労働者は、このビジネスモデルを採用しています。

旅の間、オーストラリアのオパール鉱山労働者の中でも最も自由な精神をEric Stelzer氏のボルダーオパール鉱山で見せてもらいました。 Eric と彼の息子のColinは2人とも熱狂的な超軽量飛行機のパイロットです。 写真撮影と鉱床の特徴をより深く理解してもらうため、Colin氏が遠征グループを一人ずつ鉱区の上空まで案内してくれました。 造りも単純な飛行機もまた鉱山労働者の自由を楽しみかつモノを持たないライフスタイルを象徴するものです。

Dr. Tao Hsuは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)のテクニカル編集者です。 Andrew Lucasは、GIA カールズバッドの教育担当フィールド宝石学マネージャーで、Vincent Pardiewは、GIAバンコクのフィールド宝石学シニアマネージャーです。
著者はこのオーストラリアの遠征の計画段階から車で内陸部を横断するまで精力的に尽力してくれたTerry Coldham、Lightning Ridge Miners Associatio(ライトニングリッジ鉱夫協会)、Australian Opal Centre(オーストラリアオパールセンター)、Gemmological Association of Australia(オーストラリア宝石学協会)、Andrew Cody、そしてライトニングリッジ、コロイト、ヤワ、クイルピーの鉱山労働者、研磨士、卸売業者、小売業者のお世話になったすべての方に感謝の意を表したいと思います。
Macdonald R. M. (1904年)『The opal formations of Australia(オーストラリアオパールの形成』 Scottish Geographical Magazine(スコットランド地理学雑誌)、20巻、5号、253-260頁。