ライトニングリッジ:上質のブラックオパールにおける世界の中心地
9月 16, 2016

ニューサウスウェールズ州の北部中央に位置するライトニングリッジの町は、上質のブラックオパールの主な原産地であると広く考えられています。 GIAのフィールドジェモロジストのチームが、2015年6月にライトニングリッジと、この地区の鉱山とを訪問しました。 ドキュメンタリーはこの訪問をもとに作成されました。
世界のブラックオパールの中心地
歴史
オパールは1880年代後半にライトニングリッジで発見されましたが、Charlie Nettletonが1903年に最初のシャフトを沈め、その年ブラックオパールの最初の包みを販売するまで、その価値は認識されていませんでした。 世界的に有名な別のオパール採鉱地区であるオーストラリアでWhite Cliff(ホワイトクリフ)から鉱山労働者が大量に流入し、町は劇的に拡大しました。 地元の人口が約1,000人に達した1909-1910年までに、採鉱作業は町の西約10kmの地域にまで拡大しました。 1910年から1920年の間、適度な量のオパールが非常に安定して生産されていました。 1920年以降、採鉱地域はあまり忙しくなく、記録された生産量はわずかでした。

かなり小さいですが、オパール鉱山は、町全体とその周辺地域に分布しています。
需要の増加や機械による採鉱の導入により、オパール生産が1958年に再燃しました。 ブラックオパールの価格上昇は地下採鉱をさらに拡大させただけでなく、1970年頃には大規模な露天掘りを可能にしました。 ブラックオパールの全盛期が1980年代と1990年代に訪れ、同時に日本でこの宝石の人気が高まりました。 日本からの需要が低下し始めるにつれ、中国でオパールが徐々に知れ渡るようになりました。中国はオパールの主要な消費者になる可能性を秘めています。

鉱床と採鉱
ライトニングリッジの10キロ内の鉱山に加えて、オパールは、町の中心から離れた現場で採鉱されています。 オパールは粘土岩、シルト岩、または粘土質砂岩層と白亜紀初期のレンズ状層から採取されます。 この地域では、オパールはWallangulla砂岩とFinch粘土岩ユニット間の境界近くで形成する傾向があります。 鉱床の深さは、通常30m未満です。

主に団塊として発生したオパールは、町の中心から離れた場所でもシームで見つかります。 時折、オパールは、稀少な白亜紀の蛋白石化した化石として発見されます。 ブラックシームオパールは、Grawin、Glengarry、Sheepyard、Carters Rushなどの遠く離れたオパールフィールドで採鉱されています。 これらのフィールドの地下鉱山は非常に頑丈です。 砂岩の天盤は、ライトニングリッジ鉱山のものよりも強くできています。 鉱山の所有者によれば、ブラックシームオパールの発生は、地元の鉱夫が「Blow(ブロー)」と呼ぶ地場の構造に左右されます。ブローとは、破砕されて壊れた岩の縦のゾーンのことで、地質学的名称は角礫岩です。 オパール形成のタイミングとメカニズムについては、多くの研究と仮説があったものの、まだ非常に議論の余地があります。
ライトニングリッジのオパール採鉱は、通常、露天掘りでなく地下から始まります。 鉱山が露天になるのは、石の価格でこの変更が有益になる場合だけです。 粘土質の多い層でのオパール採鉱のため、特殊な掘削具が開発されました。 町周辺や町から離れたところにあるオパール鉱山は、同じ地域にありながら非常に様々です。 抽出後、素材は強力な「ブロワ―」で地表に吸い上げられます。その後、洗鉱工場に運ばれて処理されます。 オパールを含有する粘土を洗浄するために、コンクリートミキサーを改造して作られた攪拌機が使用されます。 回転バレル内にポンプで送られた水が、オパールを傷つけずに粘土岩を破壊します。 洗浄を約一週間続けた後、収穫のため、選別テーブルに泥を流します。 水は、ライトニングリッジを含む、採鉱を行う多くの町が直面する重要な問題です。 地元の人々は、雨の非常に少ない年が続いたこと、水不足が処理に悪影響を与えていたことを私たちに教えてくれました。
チームは、ライトニングリッジの北にある試掘サイトを訪問しました。 層序のサンプル採取のためにオーガー掘削が行われ、オパールを含有している可能性のある層の深さが、今後の参考のために記録されます。 オーガーによって引き上げられた粘土岩層は、オパールの濃度を推定するために現場で処理されます。


GIAチームは、ライトニングリッジで「A型」と「B型」両方のブラックオパールのサンプルを採取しました。 A型のサンプルはFrederic Mallockの地下鉱山で発見され、GIAフィールドジェモロジストのVincent Pardieuが抽出しました。 洗鉱工場でもサンプルがいくつか採取されました。 サンプルはすべて、GIAのコレクションとなります。


鉱山から市場へ
私たちは、鉱山から市場へのチェーン全体がライトニングリッジでできているのを見ました。 鉱山から採れる最高の原石は、町内でポリッシングされます。 経験豊富なオパールカッターであるJerryと彼の妻Helenは、ポリッシング工程のガイドをしてくれました。 彼らは25年以上にわたってオパールのポリッシングをしてこられ、カルティエのような世界トップクラスのジュエリーブランド向けの素晴らしい石を多く仕上げてきました。
研磨されたカボションは、完成品のオパールとして最も一般定なものです。 オパールはまた、外形や色に基づいて様々な形に彫られます。 これは中国のジェードの彫刻と非常によく似ています。 中程度から低い品質の素材は、こうするのがより良い用途で、重量の保持率も高くなります。 彫刻はライトニングリッジで行われていますが、ディーラーのなかには、この目的のために東南アジアに素材を運ぶ者もいます。

訪れた者は、ライトニングリッジのメインストリートで多くのオパール宝石店を見つけることができます。 店のオーナーが鉱山労働者であることにも気づくことが多いでしょう。 自分の店舗でオパール宝石のデザインや製造をする人々に出会うこともあります。 多くの事業主が自分のオパール鉱山を所有し、家族は2世代、3世代にわたってオパールの仕事をしています。
百年以上続くライトニングリッジのオパール採鉱の歴史を通し、オパール鉱山労働者は徐々に独自の取引基準を築いてきました。 ブラックオパールのために特に設計された、明るさや遊色効果の品質といった特性の評価基準は広く受け入れられています。
目を引く研究
ライトニングリッジは、蛋白石化した化石が発掘された、ニューサウスウェールズ州で唯一の場所です。 巨大な恐竜の骨から微細な組織まで、蛋白石化でこれらの有機物が貴重な宝石に変わりました。 これらのオパール化石は貴重なだけでなく、生物学的研究にとっても理想的です。 多くはかつて生息した生物の完全な三次元レプリカです。 化石の透明性により、科学者はそれらを壊すことなく、中を見通すことができます。 蛋白石化していない化石と比較した場合、これは研究上の大きな利点です。
ライトニングリッジで、私たちは古生物学者のElizabethと、蛋白石化した化石について研究している彼女の生徒たちに会いました。 世界中の多くの科学者がライトニングリッジを訪ね、こうしたサンプルを採取し、研究しています。 生物学的および古生物学的研究が、貴タンパク石形成の研究に役立っているケースもあります。 長年の努力により、これらの化石についての知識がますます深まってきています。 オパール鉱山労働者は、採鉱の過程でそうしたことを非常に意識しています。 化石の発掘は、コレクターや小学生たちには特に魅力的です。 古生物学者が行う現場でのクラスで、人生が変わる可能性のあるアイデアの種が若い人たちの心にまかれることもあり得ます。
文化の保存
私たちは、ライトニングリッジで、オパール鉱山労働者、カッター、取引業者、研究者に会いました。 一つ、こうした人たち全員に共通していることは、オパールに対して持っている信念です。 オパールは鉱床に散在しているため、見つけることは困難です。そのため鉱山労働者は、何年間も価値のある生産に恵まれないことがあります。 しかし、鉱山労働者のほとんどがここに留まり、採鉱を続けることを選びます。 ライトニングリッジのほとんどの人々が、鉱山労働者、取引業者、デザイナーという複数の役割を果たしています。 海外から来ている鉱山労働者もいます。 最初は訪問者でしたが、後からオパールの虫に憑かれ、ここを離れなくなったのです。
今日、世界中の人々が、貴重なオパールを見てアウトバック(奥地)のライフスタイルを体験するため、ライトニングリッジを訪ねます。 オパールとオーストラリアにおけるオパール採鉱の文化を紹介するため、ユニークなAustralian Opal Centreの準備が進められています。 このプロジェクトのため、オパール鉱山労働者、取引業者、研究者が集結しています。 これは、未来の世代に自然遺産および文化的遺産を伝えていく、国家的な記念碑になります。