同窓会スポットライト

同窓生の生涯にわたる旅:ジュエリーユニコーンを探し求めて


目の前に複数のジュエリーのディスプレイスタンドを置いて机に向かって座っている男性。
最近発見したいくつかの作品を披露するAlan Nacht。このサファイアリングは40カラット以上で、スリランカ産である。写真提供: Under the Crown(アンダー・ザ・クラウン)

Alan Nachtは、なぜか未だに気づかれていない見事に美しく価値のある作品、つまり「ジュエリーユニコーン」を求めて果てしない旅に向かっています。

この探求のおかげでNachtは毎日作業に取り掛かるやる気が生まれます。やる気が少しでもなくなったら、過去に見つけたジュエリーユニコーンを思い出すだけでまたやる気を取り戻すのです。

数年前に購買の目的で旅した際に見かけた、10個のクッションシェイプのサファイアと小さなラウンドシェイプのダイヤモンドを特徴とするモダンなバングルブレスレットがその良い例です。この作品をもっとしっかりと見ると、サファイアのカットがブレスレットよりはるかに古いのに気が付きました。このためブレスレットを購入しましたが、後で彼の予感が的中したことが分かりました。このサファイアは伝説的な産地、カシミールから採鉱されたものだったのです。

上の写真は王冠の状態であるときを示し、下の写真はブレスレットになる部分を示している。
かつて英国王室が所有していたこのエドワード朝時代のダイヤモンドの王冠(上)は、Nachtが発見した特別な作品の一つである。王冠として着用されていないときは、ブレスレット、ドレスクリップ、ブローチに分けることができる(下)。展示用の箱が非常に大きいため、大きな金庫の棚1段をほとんど占領した、とNachtは語った。写真提供: Under the Crown(アンダー・ザ・クラウン)

彼のジュエリーユニコーンはこれだけではありません。ある日、Nachtはロンドンの有名なアンティーク ジュエリー店のオーナーと昼食をとっていました。このオーナーは、きらきらと輝く大きなアッシャーカットダイヤモンドがクラスプにセットされたフランス製トゥッティフルッティブレスレットを見せ、「Alan、このダイヤモンドはピンクだと思うか?」と尋ねました。

「ええ、そう思います。買いますから、請求書をください」と、Nachtは答えました。その後、この1.12カラットのダイヤモンドはファンシーピンクであることを発見しました。

ビジネスで幸運を掴み長続きするということは、見つけにくいジュエリーユニコーンを探すことと非常に関連しています。本質的な価値があっても物質的な価値がほとんどない物があります。その他の物は、物質的な価値があるだけで、本質的な価値がほとんどありません。ユニコーンは、あなたが経験し、話し、学び、見ることを夢見てきたすべてを気付かせる作品です。そして、それがあなたの目の前にあるのです!、とNachtは話しました。

自分の宝石・宝飾品店のカウンターの前に立っているBernard Nacht。
オーストリア出身のBernard Nacht(1884~1969年)は4歳の時に渡米した。十代後半のとき、すでに宝飾業界で活躍していた従兄と働き始め、22歳までには自分の店舗を開店するのに十分な資金を蓄えた。ビジネスが成長するにつれて、バワリーの小さな店からクイーンズ区フラッシングへ、そして最終的にはダイヤモンド地区に移転した。写真提供: Under the Crown(アンダー・ザ・クラウン)

旅にはすべて始まりがあります。Nachtの旅は、祖父がBernard Nacht & Co.をロウアー・マンハッタンに設立した 1906年に始まりました。祖父はニューヨーク市の中古ダイヤモンドおよびジュエリー市場では先駆者の一人でした。Nachtの父親が最終的に事業を引き継ぎ、幼少の頃から息子にビジネスについて教えていたため、Nachtはダイヤモンド取引を学ぶために弟子入りをしたようなものでした。

放課後や休暇中、Nachtは家業のために使い走りとして飛び回っていました。ダイヤモンド石留め職人、研磨工、製造業者、宝石細工士、ダイヤモンドカット職人などへ送られ、質問をするたびにその答えから学びました。

ダイヤモンドに囲まれたセンターリバースインタリオのサファイアが飾られた正方形のペンダント。
Nachtのジュエリーユニコーンの1作品、エドワード朝時代のブローチペンダント。加熱処理なし、リーバースインタリオのサファイア。ベゼルに22個のオールド マイン カット ダイヤモンド、さらに196個のダイヤモンドがセンターストーンを飾り立てる。写真提供: Under the Crown(アンダー・ザ・クラウン)

Syracuse University(シラキュース大学)で金融および保険の学士号を取得した後、Nachtは、将来GIAより教育を受けることを念頭に置きながら、家業で働き始めました。Nachtの父親は、GIAの歴史の中で最も著名な人物の一人であるRobert Crowningshieldと面識があり、息子がGIAに通うことを勧められました。

宝石のビジネスの教育面を学ぶ必要があることを知っていましたし、学ぶには絶対にGIAだ、ということもわかっていました。夜間コースがあったので、日中働いて、夜に勉強することができました、とNachtは語りました。

Nachtはグラジュエイト ダイヤモンド(GD)宝石鑑別を学び、宝石を鑑別する方法を学んだことは、彼が仕事で毎日使用する非常に貴重なスキルであると語ります。

宝石の鑑別は、エステートジュエリーの世界では不可欠です。長年の経験に加えて、GIAで学んだことで、作品を評価する際に確認するべき点のリストが自然と頭の中で作れるようになりました、とNachtは話しました。

GIAはNachtに教育以上のものを与えました。現在は退職した講師の一人、Doug Parkerと生涯にわたる友情を築いたのです。Parkerと彼の妻はNachtの結婚式に出席し、現在に至っても友人かつ同業者として親しくしています。 

私はいつも『大事なのは何を知っているかではなく、誰を知っているかです』と言います。共通の情熱を分かち合える人に会うと、とっても大きなチャンスが生まれますから、と述べました。

両隣の息子と娘と共に撮ったAlan Nachtの写真。
特定の分野にも関心を示す一方、販売、購買、ブランド開発を支援する2人の子供の間に座っている誇り高い父親および4代目の宝石商、Alan Nacht。Ross(左)は、広報およびマーケティングを担当し、同社のソーシャルメディアプラットフォームを開発している。Bari(右)は、ファッションとアクセサリーに注力し、Tiffany(ティファニー社)のアンティークジュエリーを専門とする。写真提供: Under the Crown(アンダー・ザ・クラウン)

Bernard Nacht & Co.は、4世代にわたって引き継がれている家族経営のビジネスです。社長兼CEOのNachtは、販売、購買、ブランドおよび製品開発、在庫、ウェブサイト/インターネット、ソーシャルメディアで支援する二人の成人した子供達、RossとBariと共に働いています。同社は、主にエステートジュエリーへ注力していますが、いくつかのクリエイティブな方法でブランドを拡張しています。

最新の新規事業は、オールド マイン カットとオールド ヨーロピアン カットのダイヤモンドを再カットするために使用される商標登録されたプロプライエタリカット、Crown Jubilee(クラウン・ジュビリー)ダイヤモンドです。このカットではテーブルがなく、ファセットが独特に配置されています。もう一つの最新商品、Under the Crown Jewelry(アンダー・ザ・クラウン・ジュエリー)は、エステートジュエリー、再利用されたダイヤモンド、ヴィンテージ婚約指輪などを特徴とする、商標登録されたブランドコレクションです。

机の上にあるジュエリーのトレイと手に置かれているCastellaniのイヤリングセット。
1870年頃に制作されたCastellaniのイヤリングを含む在庫品の一部を披露するNacht。紀元前330~300年に制作されたネックレスからCastellaniとCarlo GiulIianoが複製したこのイヤリングは、「メロス」ネックレスのスタイルを取り入れている。オリジナルの「メロス」ネックレスはBritish Museum(大英博物館)に所蔵されており、Castellaniが手掛けたネックレスはCooper Hewitt, Smithsonian Design Museum(クーパーヒューイット・スミソニアン・デザイン博物館)のコレクションとして所蔵されている。イヤリングでは、上質のハンドメイドチェーンからアンフォラペンダントがぶら下がっている。エナメル加工されている部分もあるが、非常に目立ちにくい。「このようなCastellaniのイヤリングは見たことがないので、非常に稀少です」と、Nachtは語る。写真提供: Under the Crown(アンダー・ザ・クラウン)

Bernard Nacht & Co.は、ビクトリア朝時代の2つの有名な宝飾店、Castellani Jewellers(Castellaniジュエラーズ)やCarlo Giulianoなどの他の宝飾店の商標権も買収しました。Nachtは両社を買収し、両方のブランドを商標登録しました。両社は、引き続きエトルリア様式のジュエリーを製造しています。

Nachtは常に準備万端です。野外では常にルーペを持っており、オフィスでは屈折計、偏光器、長波と短波のブラックライト、顕微鏡を備えています。インクルージョンに非常に興味があり、GIAでの教育より習得した知識に基づきインクルージョンを使用して宝石の地理的起源を推測します。実際、宝石のディーラーは、Nachtに宝石を鑑別するよう依頼することがよくあります。

Nachtは、世界で最も競争の激しい宝石・宝飾品の取引中心地の一つであるマンハッタンで113年間にわたり事業を展開している家族の遺産を育むという目標を堅持しています。同社は、使命を補う革新的な機会を探求しながら、その使命に忠実であり続けることで成功を遂げた、と彼は信じています。

Nachtは、新しい家を求める一生忘れられない見事な作品を見つけることに希望を託して、ジュエリーユニコーンを探す旅を続けます。