ジンバブエのダイヤモンド生産の管理
3月 7, 2014

この売却は主に低品質の素材が占めており試験的に行われましたが、説明責任、価格設定、供給の面で世界のダイヤモンド市場にて不確実であった要素を、主流のダイヤモンドのメーカーや販売店への秩序ある原石の流れを実現するための取り組みの大きな一歩となりました。 このオークション以前は、マランゲのすべての原石は、バイヤーや価格の透明性に関する審査がほとんどまたは全くない状態で、ジンバブエの首都であるハラレを通して販売されていました。 ダイヤモンド専門家のキンバリープロセス作業部会の議長を務めるMark Van Bockstaelによると、12月の競売は、大部分または全てのマランゲの原石販売を最終的にはアントワープを経路させるという長期にわたる最初のステップとなりました。 この売却は、ジンバブエ産ダイヤモンドに対するすべての制裁を解除するという欧州連合の9月24日の決定によって可能となりました。
AWDCの幹部でもあるMark Van Bockstaelは、ジンバブエの現場でかなりの時間を費やしてきました。 2011年11月から2012年12月まで、彼は、2人いた公式監視員のうちの一人であり、KPとのマランゲの準拠の確立に向けて取り組みました。

ダイヤモンド専門家のキンバリープロセス作業部会の議長を務めるMark Van Bockstaelは、2年間を費やしてジンバブエのマランゲでの事業をキンバリープロセスに準拠させました。 写真提供:Russell Shor
競売は、活動家グループおよび販売が頻繁に人権を侵害する抑圧的な政権を支援すると主張していたダイヤモンド業界の一部のメンバーを含む、多くの方面から批判を集めました。 しかし、Mark Van Bockstaelは、強制労働と制御されていないダイヤモンド採掘の時代は、はるか昔に終わったと言います。 7箇所のすべての採掘地域が、保護されており、専門的に運営され、機械化されていると、彼は説明します。また、キンバリープロセス認証制度(KPCS)が、マランゲの採掘作業が必ず基準に準拠するように、3つの主要なステップを制定したことを強調しています。「まず第一に、我々はダイヤモンドの産出のすべてに説明がつくことを確かめました。」と彼のアントワープにあるオフィスの壁に貼られたマランゲ地域の衛星地図を指して説明します。 「我々は、衛星画像から生産を追跡することができます。 それぞれの採掘地域の等級(鉱石のトン当たりカラット)を把握しており、人工衛星を通じて、我々はどれだけの素材が毎月採取されるか確認しています。 我々は、この情報を企業の台帳と照合して、企業からの報告を確認します。
「第2ステップとして、それがすべて合法的に販売されていることを確認するために、すべての産出データが、キンバリー·プロセス認証に記載されている輸出と照合されます。
「第3ステップとして、我々は地域の安全を監視しています。 すべての無許可の採掘は違法であり、我々は地元の当局者がこの法律を施行するよう確認しました。」と彼は指摘し、職人による違法な採掘事件が、過去2年間でほぼ皆無になったと付け加えています。 すべての採掘地では、許可されていない生産を最小限に抑えるために、実際の鉱区が二重フェンスで囲まれており、処理工場に追加のセキュリティ機能が設置されています。
「追加の第4ステップは、KPCSとは無関係ですが、アントワープにダイヤモンドの原石の販売を移動して、その販売が金融や透明性に関する厳格な欧州連合(EU)の指針のもとに置かれるようにしました。」
マランゲをめぐる論争は、何千人もの職人採掘者が新たに発見されたダイヤモンドの鉱床で採鉱するためにそこに移動した後の2007年から2008年に起こりました。 国の指導者、ロバート·ムガベによって制御された部隊が、2008年後半の残忍な軍事行動において鉱山労働者を立ち退かせ、伝えられるところによれば死者180人を出し、数百人が負傷しました。 これらの強制立ち退きの後、ジンバブエの政府軍は、残りの鉱山労働者とその家族に対するレイプや強制労働を含め、人権侵害を犯し続けているという申し立てに至りました。 その結果、既にムガベと彼の側近により制御された企業に制裁を課していた米国と欧州連合(EU)は、その国にあるダイヤモンド会社がマランゲのダイヤモンドを取引するのを禁止しました。
マランゲでの虐待は、キンバリー·プロセス内での危機も招きました。 KPCSは、反政府勢力やテロリストグループが違法に採掘したりその活動の資金を調達するためにダイヤモンドを販売するのを防止するために2003年に設立されました。この制度の下では、合法的に輸出されたことを保証するために、すべてのダイヤモンド原石には証明書が必要となります。 反政府グループの代わりに公式に認められているジンバブエ政府が人権侵害で起訴されたという事実は、組織内で鋭い対立を生み、人権団体やいくつかの政府から強い批判をもたらしました。 特にマランゲのダイヤモンドを輸出するのを条件付きで承認すると2011年に決定した後は、KPCSは無力、あるいはさらに悪いことに、国が人権を無視するのに加担したと描写されました。
Mark Van Bockstaelは批判をすべて聞きましたが、KPCSはマランゲの混沌としたダイヤモンドの産出に秩序をもたらすために定款以上のことを行使したと強調します。
「彼らは我々が何もしていないと我々を非難しますが、我々はすべての事業がKPCSに準拠しているか確認するために2年間一生懸命働いたのです。」と彼は述べ、彼が現場にいた間には人権侵害を目撃しなかったと付け加えました。 また、政府が承認した採掘地の7人の保有者は、「水の使用や生態と環境保護に関して適切な注意を払いました。 我々は、彼らがKPCSに完全に準拠しているか確認できるように、彼らの事業を監視していました。」と彼は指摘します。
Van Bockstaelは、特に職人の採掘に関して、非政府組織(NGO)から苦情を受けていることを承知しています。 「たとえそれが自分の村であっても、自分の裏庭であっても、人々がダイヤモンドを採掘するのは違法です。 彼らはそれを気に入ってませんが、このような掘削を許可すると、産出を把握することが不可能です。」
マランゲ鉱床で採掘している鉱山会社の一つである中国とジンバブエの合弁会社の按針は、同社の採掘地から417の家族を移転させました。 現在、労働者は約束された恩恵を受けていないと文句を言っていますが、ヴァン・ボックスティールは、現地のNGOにでさえも、当時それは称賛すべき動きであり将来の移転には見習うべき手本であると考えられている、と言います。
KPCSの批評家は、抑圧的なムガベ政権が、人権侵害に関与し続ける州の治安部隊に資金を供給するために収益を吸い上げて、ダイヤモンドの資金から利益を得ていると主張しています。 ダイヤモンドの産出地域に住む人々は、近辺のダイヤモンド産出による利益を得ていない、と彼らは追け加えます。
一部の批評家は「世界には悪魔か聖人」 だけが存在できると信じているとヴァン・ボックスティールは述べます。現実はその間であり、ジンバブエには膨大な量のダイヤモンドがあり、事情には関係なく、採掘されて販売される、と彼は強調します。 この場合、最善の方法は、その国からのダイヤモンドの流れを抑制し、確実にそれらが合法的に取引に入ってくるようにすることである、と彼は述べます。 資金が吸い上げられているという容疑への対応として、ヴァン・ボックスティールは「すべての鉱山会社は、政府に支払われる税金や使用料などを含めて、売り上げに関する詳しい明白な勘定書を提供しなければなりません。 ジンバブエの法律では、鉱山会社は採掘したダイヤモンドの価値の15%の使用料を支払う必要がありますが、投資家に好意的な法律であるため、彼らは資本投資を回収するまで法人税を延期することができます」と主張しています。
マランゲの2014年のダイヤモンドの産出は、ほぼ1700万カラットに達すると予想されており、これはカラット当り53.10ドル(5300円)と評価され、オーストラリア以外のすべての主要な産出地で最も低いものです。 (ジンバブエのリバーランチとリオティントのムロワの2つの採鉱作業はKPCS制裁の影響を受けませんでした)。KPCSの統計によると、マランゲの産出物のかなりの割合が、5カラットまでの大きな製品で構成されていますが、産出物のわずか8%が宝石品質を持っています。 さらに8%は宝石に近いまたは「低級の拒絶品」と呼ばれており、各原石のわずかな割合が、宝飾品として使用可能なダイヤモンドに研磨することができることを意味しています。 残りの84%は、拒絶品であり、主に研磨剤として使用される工業用ダイヤモンドであるダイヤくずです。
さらに、マンラゲの宝石品質のダイヤモンドは、通常、多くの場合色調が強くてもやや緑がかった色合いを持っているので、割引価格で取引されています。 この色合いのため、複数のソースからの石を使用したときに、宝飾品に一致させるのが困難になります。 ディーラーは、茶色がかったキャストがあり、同様に割引価格で取引されているオーストラリアのアーガイル鉱山からのダイヤモンド原石と比較します。 それにもかかわらず、Mark Van Bockstaelは、カラット当りの平均価格である53ドルは、アントワープのより透明な環境へ販売を移動することによって、実質的に改善することができたと考えています。

アントワープの主なダイヤモンド取引通りであるHoveniersstraatは、ジンバブエ産ダイヤモンドの原石の売上の大部分が取引される新しい場所です。 写真提供:Russell Shor
マランゲの生産には、より多くの変化が予想されています。 鉱床は、400平方マイル以上に行き渡り広大ですが、浅くて簡単に採掘される地域はほぼ枯渇しており、鉱山会社はダイヤモンドを採取するためにより深く、非常に深く、掘る必要があります。 Mark Van Bockstaelは、特に品質が非常に低いので、生産コストが上昇するにつれて、採掘作業は統合すると確信しています。マランゲは、技術的には沖積鉱床ではなく、キンバーライトパイプでもないと彼は指摘します。 ダイヤモンドは未知のソースから発生し、何百万年も昔に鉢形の鉱床へ海水によって堆積されました。現在、ダイヤモンドは岩や土壌の礫岩の下に潜んでいるのです。 マランゲの採掘場は、この鉢鉱床の北西の縁にあり、ここではダイヤモンドが表土の数メートル下で発見されます。 縁の等級すなわちリーフも、非常に高く、トン当たり約2カラットです。 (これとは対照的に、ほとんどのダイヤモンド鉱山は100トン当たり平均約1カラットです)。約50マイル南東へ向かうと、地質学者がこの鉢鉱床の反対の縁として確認して最近発見されたチマニマニダイヤモンド鉱床があります。 その中間で、鉢鉱床は、3000フィート深くなります。
「まず、鉱床を専門にしている会社は、深い鉱山での経験があまりありません。」とVan Bockstaelは述べています。 「第二に、それは桁外れに高コストになります。」
マランゲ初の入札と同じ週に、按針インベストメンツ株式会社は、コストが上昇してダイヤモンドの原石価格が低迷しているため、従業員845人のうち25%を解雇すると発表しました。 同社は、地下採掘への移行によりコストが上昇したと考えています。
今年90歳になるジンバブエの支配者、Robert Mugabeは、選挙違反の容疑の最中、2013年7月に再選されました。 それにもかかわらず、Van Bockstaelは、(鉱業部門を含む)多くの企業を管理する専門家階級および心強いほど独立した司法、警察の力があるジンバブエは、将来の安定と成長を遂げることができると考えています。 しかし、その古い既得権益は依然としてマランゲの透明性を高めるための障害となる、と彼は警鐘を鳴らしています。
「アントワープでの販売は励みになりますが、これで取引が完了したわけではありません。」と彼は言います。
政府は、マランゲの原石の12月の入札は成功に終わったと主張しますが、 鉱山および鉱山開発の事務次官、Francis Gudyangaは、115人のバイヤーが出席した試験的な入札により、「ジンバブエの政府による今後のオークションを成功に導くことができる。」と述べました。
低級の製品のカラット当り38.25ドル(3800円)という平均価格は、粗鉱の平均よりも非常に低かったのですが、Van Bockstaelは、産出量が今後増えれば、この数字が大幅に改善することを期待しています。
2月12日から19日まで行われた2回目のアントワープの入札は、マランゲ地域を採掘している6社からの96万の粗鉱で構成され、7千万ドル、つまりカラット当たり約72.90ドルを獲得し、実質的にはその地域からの商品の平均価格を上回っていました。 ジンバブエの報道機関によると、およそ167社が参加していたとのことです。 それにもかかわらず、ガドヤンガ次官は、一部の商品はジンバブエで入札され続けるだろうと強調しました。
著者について
Russell Shorはカリフォルニア州カールスバッドにあるGIAのシニア業界アナリストです。