書籍:Smithsonian Nature Guide on Gems(宝石のスミソニアン自然ガイド)
4月 17, 2014

はじめの34ページでは、宝石の形成、分類、カッティング、処理、合成石、民俗学など宝石学の概要を紹介しています。。 本書の唯一の他のセクション「宝石用原石」では、貴金属や有機物の部分および用語集を含んでいますが、一番多くページが費やされているのは「カットストーン」です。様々な宝石は化学組織に区分された鉱物学の通例スタイルで並べられています。 各項は、硫化物、ケイ酸塩、及びタングステン酸塩など本来の化学組成で分類されています。しかし、研磨済み宝石は、Dana’s System of Mineralogy(Danaの鉱物学のシステム)あるいはDana’s Textbook of Mineralogy(Danaの鉱物学の教科書)の実用知識を持つ方のために順序どおりに掲載されていません。 さらに本書では、ソロケイ酸塩またはテクトケイ酸塩のように、ケイ酸塩を分けていないことを留意してください。 カット宝石、貴金属、および有機宝石に関して、その基本的な性質と、時には典型的なカッティングのスタイルなどの特徴を解説している囲み記事があります。 基本的な化学組成、原石産物の例を含む名前の起源、形成および原産地の情報がカラー画像と共に記載されています。
本書のメリットの一つは、持ち運びできるサイズで使いやすく、重要な情報を簡単に見つけることができます。 似たような書籍よりもはるかに多くの宝石素材が含まれ、宝石の全く新しい世界を紹介しているます。 もう一つ特筆すべきことは、宝石用原石の様々な要素を豊富なカラー画像で説明していることです。 「処理宝石」の章を絶賛したいのは、見た目、耐久性、宝石素材の価値など、消費者が情報に基づいて購入できるよう配慮されていることです。
しかし、改正が必要な箇所もあります。 宝石について書いている著者の知識を感じ取ることができないことです。 もう一つの問題は、「プレシャス」とか「セミプレシャス」などの時代遅れの用語の使用に関してです。「プレシャス」と従来分類されているものと同じように、少なくとも市場で売られているアレキサンドライトやレッドスピネルのようなそんなにも素晴らしい宝石に、なぜ「セミプレシャス」という否定的含意のある言葉を使うでのでしょうか。トパーズよりベリルが、モース硬度8の硬さに説明されているのに驚いたのと、柔らかいストーンはコレクターのためにカットされるのだと断定にている部分には同意できません。 過去にはこのようなこともあったかもしれませんが、最近のネットショップのブームで、蛍石のようなより柔らかい石は非常に多くの消費者が購入しています。 消費者へ柔らかい石にはお手入れが必要なことを知らせてほしい。 数多くのカラー画像があるが、宝石の実際の色を伝えていないこともあります。 多くの写真では、線が宝石の特定の特徴(輝きあるいはダブリング)を見せるために使用されていますが、場合によってはその特徴が見えていません。
最後に、いくつかの誤情報も見つけました。 いくつかの合成エメラルドなどを含むフラックス溶融法の宝石は、湾曲した成長ゾーンを残すと、述べられていますが、これは間違っています。 実際は、湾曲した成長ゾーンは、合成エメラルドを含まない火炎溶融法合成物に見られるものです。 フラックス溶融法合成エメラルドは、尖った成長特徴を示すことで知られています。 検討するべきさまざまな程度の誤りがまだありますが、あまり否定的な印象を残したくありません。
時代遅れの用語や事実誤認がいくつかありますが、本書には魅力的な宝石が数多くあり、わかりやすいイラスト、持ち運び易さ、低価格ですので、特に一般の方にとっては購入する価値があるでしょう。
著者について
Michael T. Evansはカリフォルニア州カールスバッドにあるGIAのシニアストーン・インベントリー宝石鑑定士、およびFallbrook (California) Gem and Mineral Museum(フォールブルック(カリフォルニア州)宝石と鉱物博物館)学芸員のアシスタントを務めています。