書籍:The Art of Bulgari(ブルガリの芸術)
La Dolce Vita and Beyond(甘い生活とその先)、1950年から1990年


The Art of Bulgari: La Dolce Vita and Beyond(ブルガリの芸術:甘い生活とその先)
Martin ChapmanとAmanda Triossiの共著、174頁、ハードカバー、イラスト入り、 The Arts Museums of San Francisco(サンフランシスコ美術館)とDelmonico Books(デルモニコブックス)とPrestel(プレステル)による共同出版、2013年、34.95米ドル。
ブルガリから鮮やかな色の石のカボションや金の宝石類にはめ込まれたアンティークのローマのコインを連想する人にとっては、このChapmanとTriossiの本は驚くべきものでしょう。 サンフランシスコのde Young Museum(デ・ヤング美術館)の展覧会のカタログと同名のThe Art of Bulgari(ブルガリの芸術)は、イタリア文化の創造dolce vita(甘い生活)の時代から今日に至るまでブルガリを身につけた魅惑的な有名人の継承を年代を追って記録しています。 著者らはまた、ブルガリの作品の説得力や時には意外な例を通してその創造的美学の発展を追求することを目指しています。 その両方において良くできています。
 
宝飾品や高級品企業は強くローマに結びついていることから、創業者のSortirio Bulgariが母国ギリシャで最初の店をオープンしたことを知って読者は驚くかもしれません。 彼は後にナポリに、そして1881年ローマへと移転し、10 Via Condottiに現在もまだある本店となる店を1905年にオープンしました。
 
第二次世界大戦の前、同社は伝統的な金細工の店として運営されていましたが、Sortirioの将来を見据えた息子達CostantinoとGiorgio Bulgariによりブルガリは、より現代的な方向性に向かい始めました。 グレコローマン古典主義、イタリアルネサンス、19世紀の金細工のローマン派に触発されたジュエリーは、ブルガリが重要な輸入宝石を取り入れ、アメリカの名士Brooke Astorに依頼されたエメラルドとダイヤモンドのネックレスを含む大変豪華な作品を製作しました。
 
戦後の1950年代と60年代には、多くのアメリカ映画は生産コストの面で都合がよかったのでイタリアで撮影されるようになりました。 その結果、多くのハリウッドスターは、カラー宝石がはめ込まれた大きな作品を特徴とするブルガリの大胆な新しいスタイルにすっかり夢中になっていきました。 Audrey Hepburn、Ingrid Bergman、Ava Gardner、Gina Lollobrigidaは常連客であり、その中でも最も目立ったのはElizabeth Taylorです。 Barbara HuttonとDiana Vreelandなど裕福層や名士達もまたコレクターとなっていました。
 
1950年から始まり、ChapmanとTriossiはブルガリの独特のスタイルを年代ごとの進化で表しています。 色の使い方がブルガリ作品を際立たせているが、ヘリテージコレクションのファイヤーワークスネックレスや、パレンティースのそろいの宝石など目をくらませるほどに美しいゴールドとダイヤモンド宝石も、この本の中で取り上げられています。
 
この本にはElizabeth Taylorのブルガリコレクションの章が設けられています。 Taylorの「紛れもなくローマでクレオパトラの仕事をしている最大のメリットはブルガリよ」という発言が引用されています。1966年のアカデミー賞を受賞の際と英国のエリザベス女王2世に謁見した時に、ヘリテージコレクションのエメラルドとダイヤモンドの入ったプラチナのネックレスを身につけていたことからも、彼女がいかにこのジュエリーを愛していたかが分かります
 
The Art of Bulgari(ブルガリ芸術)のあまり知られていない気まぐれな作品も公開されています。 金のものさし(1970年)、シルバーとゴールドのサンモリッツのシガレットケース(1977年)、シルバーとゴールドのテニスボール入れ(1980年)、文鎮のボートのような形の純銀と金メッキのシルバーの素敵なボートの文鎮(1974年)などです。 オニキス、真珠層、ダイヤモンドでできたエキゾチックな金の置時計(1980年)と2つのアンティークの中国のヒスイでできたベルトのフックが並んでいます。
 
見開きのページいっぱいに数多くの宝石が収められた見事な写真が本文を一層効果的なものとしています。 ジュエリーデザインのオリジナルスケッチは視覚的効果と所見を加え、ブルガリの宝石を身に着けている有名な顧客の写真も掲載されています。 壮大なビブネックレスやヘビのブレスレットの時計から、気まぐれな星条旗シリーズやアイスクリームコーンのブローチまで、本書では見事なブルガリの意匠をご覧いただけるでしょう。
 
Chapmanは、Fine Arts Museums of San Francisco(サンフランシスコ美術館)の学芸員で、宝石の歴史家でコンサルタントでもあるTriossiは、ブルガリヘリテージコレクションの学芸員です。 両著者は共同で、ブルガリの歴史や文化的影響を素晴らしいかたちで披露しています。

Elyse Zorn Karlinはジャーナリスト、宝石の歴史家、フリーランス学芸員です。 Association for the Study of Jewelry & Related Arts(ジュエリー研究と関連アート協会)の共同ディレクター、Adornment magazine(アドーンメント誌)の編集長、ジュエリー書籍と展示会カタログの著者でもあります。