モゴク遠征調査シリーズ パート3:市場と石について


ぺリドットの原石を勧める商人
Barnardmyoで毎週行われる宝石朝市で、赤ちゃんがお母さんの背中から様子を見ている中、リス族の商人がマトリックスペリドット原石の商品を勧めています。 写真撮影:Andy Lucas、©GIA

市場と石について

私たちは、モゴックストーントラクト地域の町にある、いくつかの宝石青空市場を訪問しました。 訪れた市場は、通常「cinema gem market」と呼ばれる、Yoke Shin Yoneの朝市、さらにPan Shanの午後市も含まれ、どちらもモゴックにあります。 Kyatpyinでは、Aung Thit Lwinの朝市、さらにPann Maの午後市を訪れました。 これらの4つの市場は毎日開催されます。 また、モゴックから車で北へ約1時間のBarnardmyo村にて、週に一度開催される、興味深い市場へも訪れました。

市場には、それぞれ独特の趣があります。 Barnardmyoで毎週行われる市場では、宝石よりも野菜や家畜が多く取り扱われています。 その市場で取引される宝石のほとんどは、採鉱現場付近から地元の農家またはカナセによって持ち込まれた原石です。 モゴックのPan Shanで午後1時から午後3時まで開催される午後市は、より近代的で規模が大きく、日光や雨から商人を守るために、カラフルなパラソルとテーブルが置かれています。 市場に、原石と結晶標本、そしてファセットカットされた宝石の、二つの要素があります。 「cinema」朝市は非常に独特で、商人が持ち込む石(主に原石)は、目の前の低いテーブルや床の上に並べられています。 そこで取引が行われる石のほとんどは低品質ですが、並んでいる商品はそのエリア産の様々な宝石で、色彩に富んだ市場になっています。 Kyaptyinの朝市と夕市は、路上に大群衆が押し寄せている状態になります。

それぞれの市場には特徴があるものの、共通する理念を持ち合わせています。 私たちが訪問した朝市と午後市、またはモゴックとKyatpyinの市場においても、同じディーラーやカナセの女性が同じ石を勧めるのを、度々目にしましたが、殆どの場合、最初よりも価格がより安いものになっていました。 モゴックでは、ニューヨークや香港のような場所に比べ時間が遅く流れ、石の取引が終わるまでに数週間を要することもあります。

市場は常に活気にあふれ、賑わっていました。 活動は、主に地元のディーラー、トレーダー、およびカナセの女性たちの間で行われていました。 外国人は地元のディーラーからは簡単に見分けられ、購入を真剣に考えているバイヤーだと見られた場合には、すぐに彼らに周りを囲まれ宝石の購入を勧められます。 外国人はモゴックのようなビルマ鉱区で宝石を購入することを合法的には許可されていませんが、実際には少量のお土産を買うくらいなら、当局は寛容であると思われます。 いずれにしてもミャンマーの輸出プロセスに関する法律は複雑であり、台座に加工され、ファセットカットされた石であれば、登録したお店から購入する場合に限り簡単に輸出をすることができます。

原石とカットされた宝石の両方が取引されていました。 市場には、鉱物標本および仕上げられた宝飾品等も置いてありました。 Barnardmyoの宝石朝市では、宝石よりも農産物や家畜が中心となっています。

売られている石の大部分は低品質であり、品質の良い品のほとんどは、ディーラーを通して固定客に目立つ事なく売却されます。 宝石市場の中で度々目にする最も印象的な特徴は、帽子とカラフルな衣服を身にまとい商品を販売する、カナセの女性たちの姿です。 現代風のアレンジとして、女性や男性が宝石の取引をしながらオートバイのヘルメットを被っている姿を多く見掛けることがありました。 熱心なトレーダーの間では、宝石用トーチ、時にヘッドルーペ姿も広く普及していました。

商人がルビーの結晶を勧めています
モゴックストーントラクト 宝石市場

価値連鎖

遠征調査のほとんど時間を、私たちの旅の目的である宝石鉱山と宝石市場に費やしました。 全ての場所において、とりわけ原産地での地域の完全な価値連鎖を目の当たりにできた事は、常に興味深いものでした。 市場で最初に気づいたことは、仕上げられた石と原石が共に販売されていることでした。 宝石の原産地から遠く離れたカッティング施設で石が形づくられ、再び原産地にて販売される、ということは珍しくありません。 しかしながら、多くの石はモゴック周辺でカッティングされているようでした。

私たちは、小さいながらも活気のある、家内工業のカッティング施設を訪問しました。 「小屋」という言葉の文字通り、モゴックでは民家でカッティングを行うことが一般的です。 カッティングの機械は、電力ではなく足の力によって作動するという、素晴らしいものでした。 ペダルを前後に踏み込むことにより宝石用の回転板が回り、石を磨くことができます。 それは、実に環境に優しい宝石のカッティング手法でした。

足駆動​​宝石細工機
モゴックのカッティング家内工業
カット技師は、ルビー、鮮明な色をしたスピネル、サファイア、ペリドット、およびその他のモゴックストーントラクト産の宝石を形づくっていました。 市場にはネイティブカットと呼ばれろ、バランスの悪いカット石が多い中、中には非常にうまくカットされている石もあり、この小さな家の工場では上手に美しくカットされていました。

地元の宝石を使った他のバリューチェーンの構成要素としては、宝石絵画がありました。 2人の著者たちは、ベトナムのLuc Yen地方でにこの産業を目にしたことがありました。 モゴックでは、優れた腕を持つアーティスト、宝石絵画工場、および宝石絵画を販売するいくつかの店舗を目にする事ができました。 宝石絵画の芸術形態として、ジュエリーには適さない小さな宝石を使用し芸術作品を作り上げています。 鉱山から得られた素材全てを有益な形に利用することで、継続的な採鉱の見込みが増加します。 宝石絵画の芸術形態が宝石採鉱コミュニティー全体で成長し、広がっていくことを期待しています。

宝石画家はピンセットで石を拾います
モゴックの宝石画家

結びの感想として

宝石学者にとってモゴックは、魔法の場所でありメッカです。 著者は、モゴックの遠征調査に共著者のVincent Pardieuを招待し、同行できたことを有り難く思っています。 世界で最も有名な宝石学者の誰かが訪れて語りぐさになるような場所を、私は常に訪問したいと思っていました。

Mogok(モゴック)にて、著者Vincent PardieuおよびAndy Lucas
GIA教育機関と、Vincent Pardieu率いるGIAラボとの間の共同遠征調査は、大きな成功を収めました。 写真撮影:Andy Lucas、©GIA
この土地の多くの情景が私の心には残っています。 青空市場、またはBaw Lone Gyiで白い大理石の砂を背景にするカナセの女性たち、 親しみやすい人々、レストランや露店の美味しい食べ物、そして夜市。 この地を訪れる宝石学者達の為に、更にこの土地の魅力を追加します: 宝石採鉱が行われた山の白い部分、見事な風雨にさらされた大理石の尖峰、数100メートルにも及ぶであろう、見事な大理石のクレバス、その深いクレバス達をくぐり抜け、宝石を含んだ大理石を採掘する坑夫達。 鮮明に色がついた宝石達が時に、自然のギフトラッピングである白大理石に包まれ、その身を隠しています。

Vincent Pardieuは、GIAバンコクラボのフィールドジェモロジストのシニアマネージャーであり、Andrew Lucasは、GIA教育部門のフィールドジェモロジストのマネージャーです。

著者は次の人々の援助に感謝します。私達の運転役、案内役、および翻訳者であり、かつ非常に親しい友人でもあった、ジョーダン。ミャンマー、ヤンゴン市のAnanda 旅行者のJean Yves Branchard はあらゆる許可や計画の手助けを。そしてもちろん、私たちを受け入れ、知識と友情を分かち合ってくれた、モゴックの人々。