サンストーンの旅、第2部:
ダストデビル
10月 20, 2013

谷へ
ここ2~3日、私達はポンデローサ鉱山のそびえ立つ松の木に囲まれてきました。 今日は私達は、プラッシュというサンストーン採鉱地区まで百マイル南、さらに千フィート低い所にいます。 私達の次の訪問地は、ラビット盆地の中心部にあるDon Buford(ドン ビュフォード)とTerry Clarke(テリー クラーク)のダストデビル鉱山です。 ここは広大な地域です。険しい火山丘陵が平地の上に急な尾根を形成し、ヤマヨモギが点在する谷間が開きます。 高原砂漠には、独特の美しさがあります。オレゴン州のダストデビル鉱山への旅。 オレゴン州の人里離れた南東の隅に位置しているこの場所は、素晴らしい大きなサンストーンを産出し、その多くは受賞歴を持つ彫刻宝石となっている。
私達は滑らかに舗装されたハイウェイ395を降りて、Hogback Roadの砂利道を東へ向います。 「Hogback Roadに入ったらそこから電話で知らせてください。」と、Don(ドン)のメールに書いてありました。 私達は全員が同じ携帯会社の電話を使っており、どれも電波が悪く、ドンから言われたようにメールをすることができません。ドンの電子メールには、まともなタイヤがついている車ならば問題ないとも書かれていました。でこぼこの道を30マイル運転した後、私達は鉱山に到着しました。 「数多くのトレーラーやシェーカー、コンベアがあるので見逃すことはないよ。」ドンが私達に保証した通りでした。

Terry Clarke(テリー クラーク)とDon Buford(ドン ビュフォード)は21年間オレゴン州の砂漠でサンストーンを採掘してきた。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。

デゥデックリッジを背景にしたダストデビル鉱床。 これはおそらくサンストーンを含有する溶岩の局所的原産地。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。
私達は鉱夫達が「谷」と呼ぶ地域のサンストーンの歴史をドンに尋ねます。 「アメリカインディアンはブリティッシュコロンビア州、ミシシッピデルタなどといった遠くの地域とサンストーンを取引していました。またサンストーンは北東部のバイキングの埋葬地でも発見されています。」と、彼は教えてくれます。また、ニューヨークのTiffany & Co(ティファニー)は もっとも最近では1950年代にダイヤモンドの代用品として、透明なフェルスパーをここで採掘したとドンは述べています。 彼らの努力は、「プラッシュダイヤモンド」という宝石のローカル名につながりました。ドンのさらなる説明によると、彼らは表面に近いところだけを採掘していて、「本当にきれいな色の石を採掘するのに十分な深さまで掘らなかった」そうです。
即席機械製作の達人
私達がダストデビル鉱床のはじまりはどのようであったかを尋ねると、ドンは、それがアメリカのボーイスカウトのためのエクスプローラポストとして始まったことを教えてくれました。 「私達は、ちょうど自分達のスカウトの活動として何かを探していました。」と彼は続けます。 「私達は何か採鉱できるものを探してここに降りてきましたが、掘り始めるとすぐ私はその石の美しさと、それらが他の石とまったく異なる様子に魅惑されました。」それが刺激になりました。 テリーとドンは、週末や休暇にサンストーンを探して掘り始めました。 「私達は、シャベル、16ポンドの大ハンマー、手持ちのふるいだけで掘り始めましたが、やがて使い古したバックホーを購入しました。」

採掘場は、昔ながらの方法で稼動している。 この写真では、手数料を払った採掘者がふるいやシャベルを使って玄武岩を採掘している。 彼らは、自分が持ち帰る分だけを支払う。 写真提供:Duncan Pay(ダンカン ペイ)。
それから彼らは、中古部品やスクラップ鋼を見つけては入手して、採鉱用の機械を構築しました。 「私達の最初のマシンは、古いスクールバスで、それを平台型のトラックに改良しました。私達はここに21年間おり、誰もサンストーンが何であるかまったく知らない状態から、重要な国際的な宝石になりつつある今日まで、サンストーンの移り変わりを見てきました。」と、彼は追加します。
ダストデビルの起源
鉱山の所有者であるDon Buford(ドン ビュフォード)が、鉱山の歴史を概説し、ボーイスカウトのエクスプローラポストとしてのはじまりについて説明する。
採鉱過程
ドンは鉱山の所在地が非常に有利に働いていることを説明しています。 「ここはかつて偉大な内陸海であった場所の端にあり、川がこの集落を通り過ぎて流れていたため、ここにはサンストーンを含有する玄武岩の欠片がたくさんあります。」このため、宝石が含まれている岩石が柔らかくなり、採鉱し易くなります。
この写真には、背景にある鉱山の処理場と共にダストデビルの採掘場が見える。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。
ダストデビル鉱山の労働者は、採掘場での作業にバックホーを使用し、処理場へ鉱石を輸送するために大きなローダーを使用しています。 「グリズリー」(大きな巨礫が処理場に入らないようにする格子を指す業界用語)と、シェーカーと回転式ふるいへつながるコンベアベルトもあります。シェーカーは、サイズが2インチ以下で5/16インチ以上の素材を取り除くと、ドンは説明します。 選鉱物は回転式ふるいで洗浄され、その後1立方ヤードのホッパーに送られ人の手で選別するか、または高度な光学選別機に移動するかのいずれかになります。

この処理場の写真では、左上のシェーカーは、黄色の円筒形の回転式ふるいに鉱石を供給している。 選鉱物は、手前に写っているホッパーとベルトへ、または左に向って斜めに移動しているコンベヤを介して光学選別機へと、流すことができる。 写真提供:Duncan Pay(ダンカン ペイ)。
私達の訪問中に、電気的故障のため、光学選別機を記録することができませんでした。 私達は、稼動している機械を見るために後日再訪問できることを願っています。
ダストデビルの採鉱
Don Buford(ドン ビュフォード)は場所的な利点と、鉱夫達が周囲の鉱石から宝石を分離する方法について説明する。
砂漠の知恵:輪郭の鋭い石、丈の高いヤマヨモギ、大きな蟻塚
サンストーンのために砂漠で生涯働いてきたドンは、手掛かりを求めて鉱夫としての目を風景に向けます。 彼が地表で最初に探すものは、縁が尖っている石です。これらの石は最近堆積されたもので、おそらく地下にもっと同様な石があることを示しています。 砂嵐によって縁が丸くなった石は、遠く離れたところからやってきたか、10万年の間地表にあったものだと思われると、彼は語ります。次に彼は、より簡単に採鉱できる条件を示す背丈の高いヤマヨモギを探します。 サンストーンを含む玄武岩を覆っている岩石の多くは非常に重く、掘削と発破を必要としますが、5、6フィートの背の高いヤマヨモギは、その植物の根が水に達することができており、つまり「岩石が破砕されていることを示すもので、サンストーンまでたどり着けることを意味します。」と、ドンは説明します。
最後に、彼はアリを忘れないようにとアドバイスします。 砂漠は膨大な数の蟻をサポートしています。 ドンは、蟻には少しは敬意を払う必要があることを示します。「これらは本当に厄介に噛みついてくる赤蟻です。」
彼によると、大きな蟻の巣の周りでは直径10フィートの領域を蟻は完全にきれいにして、小石や小さいサンストーンを使って山を作ります。 蟻は石を隙間なく並べ、雨が降っても雨水は流れ落ちていきます。 もう1つの利点は、サンストーンは光を反射するので、夏に蟻塚の熱をコントロールするのに役立ちます。

砂漠で宝石を採掘するのは、人間だけではない。 蟻は巣の周りにフェルスパーの小さなかけらを収集する。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。
背の高いヤマヨモギのように、より大きな蟻塚は地面の中へ伸びている可能性を示しています。 蟻塚は、下にある岩石が風化していて容易に採掘できるという強い証拠です。 これらすべての手がかりが、蟻塚に隣接している場所を掘るのは良い考えだと鉱夫に教えてくれます。
サンストーンの探査
鉱夫であるDon Buford(ドン ビュフォード)は、彼が長年培った砂漠での採鉱の知恵のいくつかを教えてくれる。
環境的制約と課題
いくつかの天然温泉があるポンデローサとは異なり、ダストデビル鉱山には水は全くありません。 公共の土地を管理する連邦政府機関であるBureau of Land Management(土地管理局)(BLM)は、Rabbit Basinでのいかなる恒久的な開発も禁止し、土地を採掘前の状態に復元することを主張しています。ドンはこの場所の課題について次のように説明します。「最寄りの電力からここまで21マイルあります。つまり、私達は独自の電力を発電します。飲料水は30マイル離れているところから運びます。 鉱業水は6マイル離れている井戸から来ています。」
採鉱で使用される水はすべて徹底的に再利用されています。 一連の6つのタンクは、選鉱物を洗浄するために使用される10,000ガロンの水を再循環させます。 水を再使用する前に、徐々により細かい物質を取り除くようにします。 ドンが言うように、「ここは砂漠であり、水を手に入れるのは大変です。だから、私達は必要な分以上には使用しません。」
採掘が停止したら、鉱夫は自然の地形に戻し、在来種をその領域に植えます。 ドンは自ら進んでこの土地固有の砂漠の草(バンチグラス)を谷間に植えていき、大規模な牧羊農場によってこの草が絶えることが無いようにしています。 「白人がここにやって来て土地を変える前の状態に、戻そうとしているのです。」と彼は言います。
砂漠は、人と機械に対して厳しいところです。 ほこりによるざらつく損耗と、岩石が音を立てて金属へぶつかる衝撃のために、機械が痛みます。 ここで生き残るためには、タフであり、機械的に強くなければなりません。 「私達は、ほとんど自給自足です。」と、彼は言います。 「私達は機器を沢山持っています。 古い機器なのでよく壊れますが、私達にはほとんどなんでも修理できるツールと技術があります。」

鉱山の従業員であるMark Shore(マーク ショア)にこのバックホーを修理するには何が必要かと尋ねたら、彼は「(ダイナマイト)スティック約5本」と応えた。 写真提供:Duncan Pay(ダンカン ペイ)。
これを聞いて私たちは、このような厳しい環境下での採鉱の費用について聞いてみたくなりました。 苦笑しながら、ドンは次のように認めています。「ここにやって来て、美しい石を掘り.、そして世界で最高の仲間たちと時間を過ごすという恩恵のため、実は私たちは毎月支出をしています。」
鉱床の厳しい埃っぽい砂漠の環境に加えて修理工場からは遠く離れているため、ダストデビルで重機を稼動し続けるためには設備の整った機械工場が必要になる。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。
ドンとテリーにとっては、美しいサンストーンを掘り出すという採鉱の行為が、単なる経済的報酬を上回ります。 私達は、彼らの半生にわたる仕事が生み出した財産は、主流の宝石としてオレゴンサンストーンが広く認識されていることであろうと察します。ドンの次の答えは、宝飾品デザイナーたちの間でこの宝石の評価を高めるために誰よりも彼が努力してきたという事実を強調します。「この採掘場で非常に大きな石を入手したときことがあり、その石は当事はそれまでに発見された石の中で最も大きく、その時はTucson International Gem Show(ツーソン インターナショナル ジェム ショー)に私達の最高の素材を出品しました。」
彼は、共に働くのが楽しいと思える芸術家に出会い、石を渡して彼らが彫刻したりカットしたりして作品をアメリカ宝石取引協会(American Gem Trade Association) (AGTA)によって開催される一流の競技会に出品できるようになったいきさつについて説明します。 「長年の間に、私達の石は16回 ”Cutting Edge(最先端)" 賞を受賞しました。」と彼は話を続けます。 私達はそれについて本当に謙虚に受け止めていますが、何人かの芸術家は、名声を得られたのは私達のお渡しした宝石を彫刻したことによることが大きいと述べています。 私たちが彼らに石をお渡ししていなかったら、今日の彼らはなかったでしょう。」
砂漠における採鉱の課題
Don Buford(ドン ビュフォード)が、過酷な砂漠の環境で運営することの多くの課題ついて語る。
美しいサンストーン
ドンにとって、土地特有の銅の輝きを持つ赤の宝石が最も魅力的です。「私は銅のシラーの線が入っている赤い石が好きです。」バイカラーの宝石でグリーンからレッドの二色性を持ち合わせている石はもっと希少ですが、彼はそのような赤い宝石を最も貴重なものとして扱っています。 「シラーのあるレッドは非常にダイナミックで、そのような石は世界でも他にはありません。」
結局すべてはこれのため。ダストデビルの生産過程の後に残る、何キロもの宝石質原石。 写真提供:Duncan Pay(ダンカン ペイ)。
ポンデローサのJohn Woodmark(ジョン ウッドマーク)のように、ドンはこの製品の個々の性質を強調します。 「すべての石はオパールのように、ユニークです。」彼は「似たような石を探すことは非常に困難」であることを認めています。それでも、消費者は自分の個性を伝えるための宝石を求めるので、このマイナス面にはメリットがあります。「私達は、誰かとまったく同じように見えることを望む女性はいないといつも考えていましたから。」
この101.63ctの サンストーンの原石には、シラーを持つ赤い中心部がある。 これは、素晴らしい彫刻となる可能性が高い。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。
ドンの次の言葉が、国際宝石市場におけるオレゴンサンストーンの位置付けに対する彼の見解を要約しています。「サンストーンは、この国や欧州そしてアジアにおけるあらゆる主要都市において高級宝石であるべきです。これは美しい、本当に美しい、素晴らしい石です。」私達は鉱山の従業員であるMark Shore(マーク ショア)に、どうして砂漠に来ることになったのか、何に駆り立てられてここにきて鉱山で夏を過ごすのか、彼の足を止めて地面からフェルスパーの結晶を拾い上げるようにさせるものは何なのかを尋ねました。 私の質問は多少彼を刺激したようです。「なぜ石を拾い上げるかって?美しいからさ!」
マークにとって、手の中のサンストーンは非常に特別なものです。「それは空気や水を手に持っているようなものです...。」では、彼の好みのタイプの石は?「シラーが見られる石のようなものは、他にありません...中でダンスしているようです。生きているようですね! 」
オレゴン産サンストーンが独特である理由
Don Buford(ドン ビュフォード)は、オレゴンサンストーンのユニークな魅力を説明する。 彼は、ジュエリーにこの宝石を用いる際の注意点についてもいくつか言及している。
砂漠の美しさ
高原砂漠で数日過ごしただけで、空気の透明や岩の陰になった太陽の赤い輝きの魅力といった、その場所の美しさに自分たちが順応してきているのを感じます。 私達の最後の夜に雷雨となり、突然の雷光が空を照らし出しました。 私達はみな、丘が昼間のように明るくなるのを夜通し見ていました。翌朝私達は、この旅の最後の鉱山、他とはまったく異なり小さな火山性の丘の中腹を鉱夫が採掘しているサンストーンビュートの訪問に向け出発しました。 車を走らせると、ドンのある言葉が私の耳に響きました。「これらの石は、勤勉なアメリカ人が採掘したもので、そのような石は世界中に他にはありません。だから、アメリカ人は私達の石を購入したいはずです。」
もし、車がHogbackで故障したりパンクしたりしたら、ドンやテリーに出会うことを祈ってください。 彼らはパンクを修理して、助けてくれるはずです。

夕日に輝くオレンジ色の光が豊富な高原砂漠の風景を照らす。 写真提供:Robert Weldon(ロバート ウェルドン)。
著者について
Duncan Pay(ダンカン ペイ)はGems & Gemology(宝石と宝石学)の編集長、Robert Weldon(ロバート ウェルドン)はGIAカールスバッドでの写真とビジュアルコミュニケーションのマネージャー、Kevin Schumacher(ケビン シューマッハ)はGIAカールスバッドのデジタルリソースの専門家です。
謝辞
著者はサンストーンの鉱山労働者の皆様に対し、採掘作業を細部にわたり見せてくださったその寛容な精神および割いてくださったお時間に割感謝します。どんな依頼にも気軽に対応していただき、訪問する先々でアットホームな雰囲気を提供していただきました。 John Woodmark(ジョン ウッドマーク)とポンデローサ鉱山の人々;ダストデビル鉱山のDon Buford(ドン ビュフォード)、Terry Clarke(テリー クラーク)、Mark Shore(マーク ショア);サンストーンビュート鉱山のDave Wheatley(デーヴ ウィートリー)、Tammy Moreau(タミー モロー)、David Grey(デビッド グレイ);Nirinjan Khalsa、特に鉱山労働者との連絡に尽力してくれたMariana Photiouに感謝します。