今日の市場をより低い品質で狙うダイヤモンド生産者
9月 18, 2017

キンバリー プロセス(KP)のデータによると、昨年採鉱されたダイヤモンド原石の平均価格は急落しました。
KPは、世界のダイヤモンド産出量が1億3400万カラットであったと報告しており、これは2016年では124億ドル(約1兆4380億円)に相当し、カラット当たりの価格では92.50ドル(約1万円)弱でした。 これに対して、2015年の産出量は1億2700万カラットであり、これは139億ドル(約1兆6820億円)に相当し、カラット当たりの価格は109ドル(約1万3000円)でした。
この結果をより詳しく調べると、ダイヤモンドの採鉱がデビアス、Rio Tinto(リオティント)、Alrosa(アルロサ)など最新技術を使用する主要な事業によって管理されている国でダイヤモンドの価値が最も下落しており、これら3社がそれぞれ操業する南アフリカ共和国、カナダ、ロシアで下落が顕著に確認されました。
同時に、米国、中国、日本などの主要な消費者市場におけるダイヤモンドの需要は小さめの石と低品質のもので上昇傾向にありました。
これは偶然の一致というわけではありません。
主要な採鉱会社は自然がもたらす、いかなるもを掘り出し、それを販売する、と好んで述べますが、実際には技術の発展により、自然が寛大に生み出すものを選り分けるのが可能になったのです。 主要な採鉱会社(デビアス、アルロサ、リオティント)の年次報告書では、これらの企業は低品質のダイヤモンドが産出される地域に集中して採鉱しているのが確認できます。
ダイヤモンドが最も豊富に含まれているキンバーライトの中でさえも、ダイヤモンドが均等に広がっているわけではありません。 採鉱および粉砕されるキンバーライトの1箇所では、1トン当たり3カラットの原石が発見されることがあります。 一方では、その他の部分で0.5カラットしか見つからないことがあります。 これはサイズと品質でも同じことが言えます。キンバーライトのある部分では大きめの高品質の原石が高い確率で見つかることがありますが、他の部分では小さめの低品質のダイヤモンドが集中している可能性があります。
高度なコンピューターモデリング技術のおかげで、ダイヤモンド採鉱現場の地質学者は、キンバーライトのパイプ内のダイヤモンドの分布をモデル化し、それに応じて産出を調整するために、データを使用して中心部のサンプルを継続的に採取することにより、特別な場所をより正確に特定できるようになりました。 このためダイヤモンド鉱山労働者により多くの利益をもたらすことが可能となりました。 彼らが最も効率の良いレベルで継続して生産することが可能となり、需要が落ち込んでいる製品がたまることがあまりありません。

今年のバーゼルワールドとラスベガス、そして昨年香港で行われたトレードショーでのインタビューでは、小さめのダイヤモンドやより低い品質のダイヤモンドの需要が高まっていることが明確に確認されました。 たとえば、中国はかつてクラリティの鑑定がSIやI1であるダイヤモンドを好んでいなかったのですが、消費者が費用を抑えるためにこれらを求めるため受け入れるようになりました。 確かに、マーケティング調査会社McKinsey & Co.(マッキンゼー社)による最近の研究によると、中国で高級品を購入する人々はここ数年間で価格に対してより敏感になり、商品に関する知識を豊富にもつようになりました。
2年間を比較すると、ダイヤモンド業界にとって2015年は困難な時期であり、2016年上半期には原石の価格が平均15%下落したことがわかります。 カナダおよび南アフリカで産出されたダイヤモンドの平均値はおよそ25%下落し、カナダでは143.52ドル(約1万5000円)から107.18ドル(約1万1000円)、南アフリカでは192.57ドル(約2万円)から150ドル(約1万6000円)まで下がりました。 市場に反映してロシアの平均値も$101(約1万1000円)から$88.7(約9000円)に下落しましたが、今年前半に関係者らはより低い品質のダイヤモンド生産および販売に集中することを、発表しました。
ボツワナではダイヤモンドの平均価格が143.73ドル(約1万5000円)から138ドル(約1万4000円)までとはるかに小さい下落に留まりましたが、これはボツワナがダイヤモンドの収益に依存しており、デビアス(15%を出資)の業績に影響力を持つこと、デビアス所有の最大かつコストオペレーションが安いダイヤモンド鉱山がボツワナにあることに原因があると考えられます。
ジンバブエで産出されたダイヤモンドが引き続き市場に出回っていますが、その量ははるかに少なくなっています。 2016年の産出量はわずか200万カラットであり、これは2015年の半分以下でした。しかし、カラット当たりの価格は50ドル(約5000円)と変わらず、ここ数年間同じ価格で推移しています。
この急落は、ジンバブエ最大のMarange(マランゲ)鉱床を運営している6社の採鉱会社のうち4社が国営のダイヤモンド企業であるZimbabwe Consolidated Diamond Corp.(ジンバブエ合併ダイヤモンド社)に合併されることを拒否したため、政府がこれら4社を追放したことに起因します。 この合併で政府は、4社の資産額によって株式を分配し、同社の資本の50%の権利を与えることを申し出ました。
これらの企業は、Marange(マランゲ)鉱床のより浅い区域は枯渇しており、産出量が低下してもこの鉱床を深い採鉱事業に再開発するための莫大な投資費用を負担しなくてはいけないことを理由に合併を拒否しました。
5年前、ジンバブエのダイヤモンド生産は1200万カラットまで到達し、数年以内には2000万カラットを突破すると予測されていましたが、採鉱がより困難になり費用が高くなったため、産出量は500万カラット未満まで低下しました。その結果、歳入の30%をダイヤモンドに依存する政府は、産出量が低下したのは採鉱会社が原因であると非難しました。

コンゴ民主共和国の産出量が1470万カラットから2370万カラットへと大幅に上昇しましたが、総額ではわずか7%増加しただけである、とアナリストのEdahn Golanが最近指摘しました。 大規模な漂砂採掘の他に国営の鉱山でダイヤモンドを産出するコンゴ民主共和国は生産高を誤算したのではないかと推測しています。
ダイヤモンドの輸出に関してはあまり変化がありませんでした。95%弱の原石のうち、インドに39%、EU/アントワープに30%、アラブ首長国連邦/ドバイに18%、イスラエルに4%、中国に4%とこれら5ヶ国に輸出されました。 ドバイとアントワープは採鉱会社が営業の拠点を置く取引の中心地となっている一方、中国は依然としてジンバブエ産の大量の原石が輸入される場所となっていました。 2017年の結果が来年の夏に発表されるときにこれらの数値は確実に低下すると予測されています。
Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。