業界分析

デビアス、ダイヤモンドの需要の高まりを確信する


CVD synthetic diamond melee.
G&G 2017年夏号では、上の写真で見られるような、ムンバイラボに提出されたメレーダイヤモンドのパーセルなど、今年GIAラボで鑑別および分析された合成ダイヤモンドに関するラボノートが掲載されている。写真:Roxane Bhot

2017年後半のダイヤモンドの需要は低迷するものの安定した成長が期待できると、デビアスは予測しています。また、ダイヤモンドジュエリーの秋の販売は、経済が減速している中国とインドでは増加する一方、米国での需要は控えめに上昇すると同社は述べています。

デビアスの幹部は、今年の原石の販売量がおよそ7%増加したにもかかわらず、需要が回復するにつれて、原石の価格が上昇し始めていることを指摘しました。5つのサイト(サイクル)で販売された原石の平均価格は、今年の前半までに平均して12%下落しました。デビアスによると、この価格の下落は、小さめで低品質のダイヤモンドがより好まれているためであり、ダイヤモンド原石の実質価格が低下したためではありません。実際のところ、原石の価格は平均して4%上昇しました。

デビアスは、2016年の3000万カラットに対して、今年は3200万~3300万カラットのダイヤモンドを生産および販売する予定であると発表しました。

米国商務省が発表した指標も デビアスの楽観的な見通しを裏付けています。米個人消費支出が上昇したため、第2四半期の米国経済は急速に回復し、成長率が2倍の2.6%になりました。年初数ヶ月の間、個人消費者支出は低迷しており、これは小売業者が発表した指数でも顕著にみられます。

連邦準備銀行は、今年の残りの月の米国経済と個人消費者支出の成長率は2%となり、穏やかな成長を遂げると予測しています。しかし、低迷する事業投資や賃金の停滞が、引き続き高成長の障壁となるでしょう。

それと同様に、消費者信頼感指数を開発した調査会社のConference Board(コンファレンスボード)によると、米国の消費信頼感は7月に高水準に上昇しました。経済に対する消費者の楽観度が増加したため、この指数は5ポイント上昇しました。今後6ヶ月でビジネス環境が改善すると回答した消費者の割合は20.1%から22.9%へと増加し、悪化すると回答した消費者の割合は10%から8.2%に減少しました。

宝石を選別する機器、GIA iD100のプロトタイプ・試作品(写真上)は今年初旬に紹介された。 GIA香港のスタッフは、メレーおよびマーキスカットのダイヤモンドがセンターストーンとセットされているダイヤモンドリングの合成石の有無を検査するために、この機器を使用した。 写真提供:GIA
宝石を選別する機器、GIA iD100のプロトタイプ・試作品(写真上)は今年初旬に紹介された。 GIA香港のスタッフは、メレーおよびマーキスカットのダイヤモンドがセンターストーンとセットされているダイヤモンドリングの合成石の有無を検査するために、この機器を使用した。 写真提供:GIA

合成ダイヤモンドの鑑別

G&G 2017年夏号では、今年GIAラボで鑑別および分析された合成ダイヤモンドに関するラボノートが掲載されています。

GIA香港のラボのスタッフは、更新サービスのために提出された石が最初のレポートとは非常に異なる特性を持っていることを発見しました。カラーグレードのHは最初のレポートに記載されているDをはるかに下回っている一方、クラリティグレードIFは以前の鑑別結果であるVVS1と合致しなかったことが発見されました。さらに、ダイヤモンドのカラット重量は、最初のレポートに記載されているものと一致しませんでした。グレーダーが刻印されたレポート番号を確認すると、偽装されたものであることが判明しました。また、他の検査を行った結果、この石はCVD合成石であり成長後にHPHT処理が施されたものであることを発見しました。

他の2つのラボノートでは、GIAが新しく開発した機器がどのように天然ダイヤモンドを合成石の可能性がある石から区別するかを説明しています。無色からほぼ無色までの範囲である323個のメレーダイヤモンドのパーセルをGIAのメレー分析サービスを使用して検査した結果、そのうち219個が天然ダイヤモンドであることが確認されました。さらに詳しい分析をすると、そのパーセルには101個のCVD法で生成された合成石が含まれていることが判明しました。これらのダイヤモンドの平均重量は、0.015 カラットでした。

GIA香港のラボのスタッフは、宝石のスクリーニング装置、GIA iD100の試作品を使用して、マーキスカットのダイヤモンドのセンターストーンに加えて70個のメレーダイヤモンドで飾られたリングを検査しました。そのうちひとつ以外は天然ダイヤモンドであるとの判定で装置を通過しましたが、このひとつのダイヤモンドは合成ダイヤモンドの可能性があると判断されました。さらなる検査の結果、これはHPHT合成ダイヤモンドであることが確認されました。

最後のラボノートでは、0.33カラットの"ファンシーブルー"のダイヤモンドが、ほぼ無色の天然ダイヤモンドに厚さ80ミクロンでホウ素を添加したCVDコーティングをしたものであったと報告しています。このようなCVDのオーバーグロースをGIAが発見したのは今回が初めてのことでした。

業界

米国議会が制定したロシア制裁法案が Alrosa(アルロサ)やロシアのダイヤモンド業界に直接影響をもたらす可能性は、少なくとも当分の間はないでしょう。この制裁法案は、ロシアの天然ガスと武器輸出産業に規制を設けます。

アルロサは欧州やアメリカの銀行から資金を借り入れず、採鉱に使用する機器や技術はあまり米国企業から調達しないため、この制裁法案は事業にほとんど影響がない、と同社の幹部は説明しました。

しかし、ロシア制裁法案は現在の対象範囲を拡張する可能性があるため、アルロサは慎重な姿勢をとっています。

これ(ロシア産ダイヤモンドに対する制裁の可能性)が当社にもたらす問題は、ヨーロッパおよび他の国におけるダイヤモンド取引など、国際的なダイヤモンド市場全体に対する全世界的影響とは比較にならない、とアルロサで社長を務めるSergey Ivanovが記者会見で述べました。

Alrosa(アルロサ)は、世界最大のダイヤモンド原石の生産者であり、生産量ではデビアスの24%に対して29%を占めています。

1980年代の南アフリカ共和国や最近ではジンバブエなど、過去に特定のダイヤモンド産出国を対象にした制裁は、あまり効果がありませんでした。さらに、1960年代から1980年代の間に当時のソビエト連邦から米国に輸入された研磨済みダイヤモンドに17%の関税を課税するという制度はほとんど無視されたり回避されていました。

ロシアのMir(ミール)ダイヤモンド鉱山で起きた浸水事故の惨事では、8人の鉱夫が行方不明となり、救助作業およびポンプを使い水をくみ出す作業が進行しているものの、この鉱山が再開する予定は不明となっています。地下水が鉱山で行われていた地下作業場にあふれ出し、約150人の鉱夫が救助されました。

オークション

1,109カラットのLesedi La Rona(レセディ・ラ・ロナ)ダイヤモンドが競売台に戻ってきます。これまでに発見された宝石品質のダイヤモンドで2番目に大きいこの石の所有者である Lucara Diamond Corp.(ルカラ・ダイヤモンド社)がサザビーズを通して競売にかけようと試みた1年後、この原石をカットおよび研磨し、事前に合意した割合に基づいて売却代金を分けるパートナーを探していると同社は発表しました。

カット前のこのダイヤモンドは7000万ドル(約76億円)、そしてカラット当たりの価格は63,200ドル(約690万円)の価値がある、とルカラ・ダイヤモンド社は判断しています。非常に大きいダイヤモンドの歩留まり率は平均40%であるため、カラット当たりの価格は人件費を考慮せずに105,200ドル(約1150万円)に上昇するでしょう。

Lesedi La Rona(レセディ・ラ・ロナ)のカラーやクラリティに関しては何も公表されていませんが、非常に大きな(50カラット以上)研磨済みのDカラー、フローレスのダイヤモンドは、これまでにカラット当たり160,000ドル(約1740万円)から180,000(約1960万円)ドルの価格で推移し、エリザベス・テイラーが所有していた石のように特別な来歴を持つものはそれ以上の価格となっています。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。