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天然ダイヤモンドに沈着させたCVD合成薄膜の長期耐久性


0.27カラットのダイヤモンドのCVD膜
図 1。 パビリオンがホウ素添加したCVD合成ダイヤモンド薄膜で覆われた0.27ctのこのダイヤモンドは、ファンシーダーク・ブラウニッシュ・イエロイッシュ・グレーとカラーグレードされた。 この写真に見られるようなはっきりとしたカラーゾーニングから、このダイヤモンドが何らかの方法で処理され、天然石ではないことが明らかだ。 写真:Robison McMurtry
2005年、化学蒸着法(CVD法)を用いて成長させた合成ダイヤモンドの薄膜(10 µm)を、0.27ctの天然ダイヤモンドのパビリオンに蒸着させました。 CVDの層には、青みがかった色を作り出すために意図的にホウ素を添加しました。 その後研磨は行いませんでした。 結果的に色は望んでいた青というよりもグレーになりました。 CVD法でオーバーグロースさせたこの天然ダイヤモンドをリングに再びセットし、筆者者はそれを8年間毎日着用しました。 最近、この合成とのハイブリッド・ダイヤモンドを宝石学的および分光学的分析のためにそのセッティングから外し、CVD法による薄膜の現在の状態を評価しました。

適切に管理が行われている耐久性の研究としては、ダイヤモンドへの非ダイヤモンド素材のコーティング (例:A.H.Shen他著『Serenity coated colored diamonds: Detection and durability(セレニティ社によるコーテッドカラーダイヤモンド:識別と耐久性』G&G 2007年春号、16-34頁)と、 非ダイヤモンド素材へのナノ結晶ダイヤモンドコーティング(例:J.E. Shigley 他著『Characterization of colorless coated cubic zirconia(コーティングされた無色キュービックジルコニアの特性評価) [Diamantine]』G&G2012年春号、18-30頁)の検査が行われました。 しかし私たちの知る限りでは、天然ダイヤモンド上にCVD合成ダイヤモンド薄膜を成長させたものに対する検査は行われていません。 リングが常に露出していることを仮定すると、このひとつのサンプルにおける評価はこのようなダイヤモンドのコーティングの長期耐久性を示すことができます。 CVD合成薄膜と天然ダイヤモンド間には結晶構造について格子不整合がないことから、このような薄膜は安定を持続することが予想されました。 ダイヤモンド/非ダイヤモンドの接点においては、格子不整合とその結果として生じる結合力の低下により、耐久性は一般的に中程度から非常に低くなります。

分光技術を使用してCVD層の形跡を見つけるのは困難でした。 FTIR吸収(通常、ダイヤモンド全体からのデータを提供)では、CVDに特化した特徴は解明されず、下層ダイヤモンドはla型ということだけが明らかになりました。 限られた領域からデータを収集するフォトルミネッサンス分光法を使用しましたが、CVD薄膜の分光学的証拠を見つけるのは、共焦点モードでPLデータを収集した場合でも困難でした。 赤外吸収ではCVD関連の3123 cm–1ピークは検出されず、737 nmでのシリコンのピークはPLでは観測されませんでした。 ダイヤモンド上におけるCVD層の存続について最も信頼できる証拠は、目視観察(図 1)と顕微鏡分析(図 2)によるその異常な外観でした。 また、パビリオンも電気伝導性を示しており、これはホウ素添加の別の指標となります。

不規則な質感のCVD膜 図 2。 この微分干渉の画像では、0.27ct天然ダイヤモンドのパビリオンファセット上にCVDオーバーグロース薄膜層の不規則な質感が見られる。 各ファセットの色は異なっており、色と色の境界線がファセット接合部である。 写真:Nathan Renfro
ダイヤモンドのパビリオンを高倍率で観察することにより、私たちは8年間毎日着用されたダイヤモンドにおけるCVD層の状態を評価することができました。 薄膜はほとんど損傷がなくパビリオン全体をカバーしており、数箇所の散発的な小さい穴が生じているだけでした。 ファセット接合部分に目だった劣化は見られませんでした。 図 1の、ダイヤモンドを四分円に分割しているように見える明らかなカラーゾーニングは、ファセットごとにおける堆積やホウ素の取り込み率の違いによるものと考えられています。 最近、このダイヤモンドをよりブルーにするため、600°Cと700°Cで各1時間、還元環境下で2度アニール処理を行いました。 この処理により、ファンシーダーク・ブラウニッシュ・イエロイッシュ・グレーからファンシーダークグレーに色が変化しました。

処理がより精緻になり、ラボから業界へと広まったことから、正確な検出の必要性が高まっています。 それでもなお、このような半永久的な膜は識別が可能であり、宝石学的な識別において分光法および従来の方法の両方を使用する必要があることを再認識させられます。

Sally Eaton-Magañaはカリフォルニア州カールスバッドにあるGIAラボの研究科学者です。