CVD合成ダイヤモンド、パート3: 検出
7月 23, 2013
CVD(化学蒸着)法では、天然ダイヤモンドのものと実質的に同一の特性を持つ、素晴らしく美しい宝石品質のダイヤモンドが合成されます。 その高い純度のため、これらのCVD合成結晶は、天然ダイヤモンドではわずかしかないIIa型に分類されます。 したがって、どのようなものであってもIIa型のダイヤモンドは、鑑別のために一流のラボへ送る必要があります。 鑑別技術は、いかなるCVD合成結晶でも確実に鑑別することができるまで進歩しています。
CVD合成法自体は、容易に鑑別可能な特徴をもたらす条件であり、次のようなものです:
1. 低圧、高エネルギーで水素リッチの環境
2. 成長環境にシリコンが存在
3. 成長環境に残留窒素が存在
4. 成長表面に炭素原子が一層ずつ付着
水素リッチの環境では、ときおり空孔とよばれる欠陥ができます。これはダイヤモンド結晶の格子位置から炭素が抜けたものです。 不純物のシリコン原子の隣に空孔ができた場合、天然では極めて稀なシリコンー空孔(Si-V)センターになります。 窒素原子の隣の炭素空孔ができた場合には、天然にはめったにみられない窒素ー空孔(N-V)センターになります。 これらの2つの空孔に関連する欠陥は、フォトルミネセンス、紫外線照射、および光吸収などの分光学的測定によって検出可能です。 一層ごとの成長の特徴に関しては、窒素が、層ごとに不均一に取り込まれるので、成長縞がDTC製のダイヤモンドビュー(DiamondView)で見ることができます。

DiamondViewという紫外線照射撮像システムでは、オペレータが様々な方向からサンプルの蛍光パターンを観察することができます。 これらのパターンは、CVD合成を鑑別するのに有用です。 写真撮影:Kevin Schumacher
ピンク色のCVD合成石も、多くのN-Vセンターが含まれていることから容易に鑑別できます。 ブルーのCVD合成石は、成長チャンバにホウ素を添加することで生成しますが、ホウ素は成長を非常に遅らせるので、薄膜のみしか作られません。 しかし、これらの薄膜でさえも、CVD成長の特徴を示しています。要約すると、CVD合成石は、いかなるサイズや色のものであっても、宝石のラボで容易に鑑別されます。 検出可能な特徴は、熱処理(低圧または高圧で)することで変化させることが可能ですが、これらの変化は十分わかっており、CVD合成ダイヤモンドを明確に見分けることができます。 詳しい科学的研究および検出に関する多くの文献に関しては、2012年夏号Gems & Gemology(宝石と宝石学)80頁-97頁のW. Wang他著「Gemesis社によるCVD合成ダイヤモンド」をご参照ください。
著者について
Dr. Robert Linaresは、コンサルティング会社Integrated Diamond Technologies, LLC(インテグレーテッドダイヤモンドテクノロジーズ社)の経営者です。 結晶成長技術の専門家であり、最初の宝石品質のCVD合成ダイヤモンドのいくつかを合成したApollo Diamond Inc.(アポロダイヤモンド社)の共同創設者でした。 Dr. Linaresは、ダイヤモンドを使った量子コンピュータやその応用についてのブレークスルーとなる研究に対して海軍省の2002年度Berman Award(バーマン賞)を受賞しました。