書籍: Jewels of Ancient Nubia(古代ヌビアの宝飾品)


By Yvonne J. Markowitz and Denise Doxey, 184 pp., publ. by Museum of Fine Arts, Boston, 2014, $45.00
Yvonne J. Markowitz, Denise Doxey共著, 184頁, 出版: ボストン美術館、ボストン、2014年、45.00ドル(約4600円)
ヌビアは古代にはクシュとして知られ、3千年以上繁栄した文明でした。 エジプトの南から北部スーダンまでの地域を含みました。 ヌビア遺跡の何千もの考古学的遺物の中でも目につくのは、美しさ、優雅さ、革新性、および技術的熟練性を備えた、宝飾品と個人用の装飾品の数々です。
 
現代、その王国についての知識は古代エジプトの記録に残されたものに限られます。 ヌビアはエジプトとライバルであり頻繁に敵対していたにもかかわらず、エジプト人は、貴重な金属や鉱物が産出されることからヌビアを金の土地とみなしました。 ヌビア人自身が残した筆録というのは非常に数少なく、彼らの言語もいまだ十分に解読、訳されていません。 ヨーロッパ中心主義が古代エジプトを好んだことにより、魅力的なヌビア文化は評価されなくなり、現代社会においても最近になるまでこの地域についてはほとんど知られないままでした。 Jewels of Ancient Nubia(古代ヌビアの宝飾品)は、遺物を通してヌビアの歴史を包括的に紹介している初めての本です。
 
同書は、ヌビア文明の資源や洗練された金細工手法の例として、金、銀、エレクトラム(天然の金と銀の合金)で作られた品を取り上げています。 同じように、クォーツ、アマゾナイト、アイボリー、雲母、そしてマラカイトといった原産の宝石も、様々な形で使用されていました。 おそらく隣のエジプトの影響を受けて、ラピスラズリやカーネリアンのビーズにも関心が持たれていたと思われます。 現代の観察者にとって最も目を引く宝飾品は、光沢のある透明のクォーツで作られた作品でしょう。 エジプトから借用された古代種のセラミックであるファイアンスは、クォーツビーズの艶出しに使われました。 特に、青い艶出し技術が習得され、ビーズだけでなくクォーツの彫刻と結晶にもその技術を応用させていました。 クォーツは、ヌビア人にとって深い宗教的な意義を持っていたと推定されます。 それらの魅力的な物が、本書では美しく写真に撮られ、見た人に視覚的な喜びを提供しています。
 
模造宝石の製造における古代人の高度な知識について学ぶのは、とても興味深いことです。 しかし、本書の宝石、鉱物、岩石にまつわる一部の記述は、詳細な研究を正当化するものではありません。 例えば、用語のアメシスティンは時代遅れですが、この現代書物には驚くほどに使用されています。 本書の用語集にある数々の鉱物や岩石についての記述は、現代の鉱物学および宝石学の専門用語と食い違っている場合もあります。 ただし、この本の主題の重要性を前にすれば、このような術語体系の問題は、出版物の重要性や著書の質を損なうレベルのものではありません。 Jewels of Ancient Nubia(古代ヌビアの宝飾品)は、あらゆる宝石鑑別士や宝石歴史家の書斎に置かれて然るべき一冊です。

Cigdem Lule博士は宝石研究鑑別士兼鉱物学者で、現代技術を利用して宝石の地質的および地理的起源を識別することを専門としています。