2017年の米国ホリデーシーズンのジュエリー売上高増加、引き続き期待できる経済成長
1月 19, 2018
MasterCardのSpendingPulse(スペンディング・パルス)が行った調査によると、2017年の米国のホリデーシーズンにおけるジュエリーの売上高は5.9%増加し、4.9%増加した一般支出を上回りました。この調査によると、ジュエリーの販売は、クリスマスの前の週まで、他のカテゴリの商品に後れを取っていましたが、その後直ちに売上げが急増しました。MasterCardの調査結果は、通常、他の調査結果よりも少々高めとなっています。
主に高級宝飾品を販売する小売店でアンケートを行ったCenturion(センチュリオン)によると、ほぼ60%の店舗が売上増加を報告しましたが(これらの3分の1は10%以上の増加)、顧客の足が遠のいていたにもかかわらず、数少ない顧客の出費額が上昇したためより多くの利益が出たと伝えられています。
しかし、最大の宝飾店チェーンであるSignet Plc(シグネット社)にとっては、残念なシーズンに終わりました。ショッピングモールでの顧客の減少とクレジットプログラムの問題のため、米国の同一店舗売上高は5.3%減少し、全体では8%の減少と平均以下のシーズンとなりました。
Kay Jewelers(ケイ・ジュエラーズ)、Zales(ゼールズ)とJared the Galleria of Jewelry(ジャレッド・ザ・ガレリア・オブ・ジュエリー)の親会社であるシグネット社は、依然として調査中である不適切な慣行の疑惑の中、クレジットカード部門を外部委託しました。シグネット社は、その申し立ては認めるに足る要因が全くないと主張しています。同社の売上高のおよそ62%は、クレジットカードでの支払いとなっています。
小売店の販売は、電子商取引を行う企業に移行し続ける一方、Jewelers of America(ジュエラーズ・オブ・アメリカ)の調査では、宝石商がジュエリーの購入において依然として重要な役割を果たしていることが確認されました。
Provoke Insights(プロボーク・インサイツ)が実施したアンケートによると、ジュエリーを購入する過程は、その他の高価な高級品とは異なることが確認されました。ジュエリーを購入した消費者のうちの64%が、購入する商品を検討しているときに宝石商に相談するために小売店を訪問しており、これはその他の高級品での割合に比べて26%高くなっています。
また、消費者や小売業者の両方のアンケートをとったこの調査では、購入する商品を検討しているときに宝石商に相談した消費者は、オンラインよりも最寄りの店舗で購入する可能性が高いことが判明しました。
米国の 経済
ほとんどの経済予測は、株式市場および米国経済が2018年を通して長期にわたる成長サイクルを継続すると分析しています。
米経済団体、労働組合などで構成する民間調査機関であるConference Board(全米産業審議会)は、今年、失業率が3.5%に下落し、GDPは2.8%成長すると予測しています。このように楽観的となる理由としては、一般的な回復の背後で遅れをとっていたセクターに成長の拡大が期待できるとエコノミストが予測していることが挙げられます。
「米国経済は、消費、事業投資、対外貿易のすべてにおいて引き続き拡大し、2018年を迎えるにあたりすべて強さを示している」と同機関は報じました。「全体的に、2018年は成長と利益の両方が豊富となる年であることが期待できます。消費支出の伸びは、ホリデーシーズンに続いて2018年でも堅調に推移するでしょう。」
ダイヤモンド
2017年のダイヤモンド原石の市場は、依然として下降気味でした。これは、2016年の初めから2017年半ばにかけておよそ400万カラットもの在庫がカッティングセンターで蓄積したためです。
De Beers(デビアス)による2017年のダイヤモンド原石の売上高は53億ドル(約5,989億円)と推定されており、これは2016年の56億ドル(約6,524億円)を約5%下回りました。銀行が宝飾業界に対する与信枠を削減したと同時に価格が下落し始めたため、デビアスは2017年の第3四半期に原石の割り当てを削減しました。
カッティングセンターでの研磨済みダイヤモンドの在庫は、生産量が需要を上回ったため、2016年初期と2017年半ばの間に約200万カラット (12.7%) 増加しました。
Alrosa(アルロサ)は、2018年は2017年に比べて緩やかな成長とともに「安定期」になると予測しています。ロシアに拠点を置くダイヤモンド生産者であるアルロサは、小さくて割安のダイヤモンドに対する需要が上昇したため、この一年間の売上高は5%減少の41億7000万ドル(約4,712億円)であったと報告しました。
過去10年間に世界最大のダイヤモンド原石がいくつか産出されたレソトのLetseng(レツェング)鉱山は、910カラットの最大のダイヤモンドを産出し、その所有者は、Dカラー、タイプ IIであると主張しています。この結晶は、これまでに発見された中で5番目に大きいダイヤモンドです。
ダイヤモンド業界の課題
経済が堅調であると予測されている一方、ダイヤモンド業界は依然として課題に直面していると、業界でトップの融資銀行であるABN Amro(ABN アムロ銀行)は報告しています。
同銀行のレポートでは、合成ダイヤモンドが天然ダイヤモンド業界への進出をさらに増加させ、このため原石と研磨済みの両方のダイヤモンドにおいて実質的な変化を余儀なくさせられることが指摘されています。2017年に製造された宝石品質の合成石は合計250~440万カラットであり、それは合成ダイヤモンドの全体生産量の0.1%であって、残りが産業用として利用される、とこのレポートに記載されています。
しかし、ABN アムロ銀行は、宝石品質の合成ダイヤモンドは産業用ダイヤモンドよりも収益性が高いため、生産者の中には合成石をより良い品質のものに改良するであろう、と主張しました。同銀行は、宝石品質のダイヤモンド生産が、すべての合成石のわずか5%を占めるとしても、採鉱されたすべての天然ダイヤモンドの合計を1.5倍上回ると予測しました。
また、大きめでより良い品質の石をより安い価格で市場にもたらすことを可能にするプロセスの改善に加えて、合成石の生産が増加することで、天然ダイヤモンドの生産者に対して根本的な課題をもたらすと同銀行は指摘しました。
ABN アムロ銀行のレポートによると、天然ダイヤモンドの原石は、売り手市場であり、比較的少数の生産者の手に留まっています。低価格の合成石は市場の大きなシェアを占めることにより、競争が増加し、天然および合成のダイヤモンドの価格が共に低下し、双方の利益を縮小させることになります。したがって、収益性はより困難になり、天然ダイヤモンドの生産者が「供給戦略において基本的な変化」を迫られることになるでしょう。
ラボで生成されるダイヤモンドの生産者は、しっかりとしたマーケティング戦略のメリットを活用しており、ラボで生成されるダイヤモンドはより持続可能であるという主張を強調しています。これらの生産者は、自社をハイテク、革新的でクリーンな企業として宣伝することにより、ミレニアル世代の心を掴むことに成功しています。
「天然ダイヤモンドの生産者は、採鉱されるダイヤモンドに対してミレニアル世代が抱く心理的要因を改善するという課題に直面しています」とレポートは説明します。
これに対し、Diamond Producers Association(ダイヤモンド生産者協会、DPA)は、若年層の消費者の間におけるダイヤモンドの需要を促進し、合成ダイヤモンドの生産者に対抗するために、マーケティング予算を増加させました。
また、ABN アムロ銀行は、ダイヤモンドの製造業者はおそらく、ベンチャーキャピタル、鉱業会社、さらにはクラウドファンディングから新たな資金を調達する必要がある、と指摘しました。
最後に、投資としてのダイヤモンドは、評価が依然として不透明なままであるため、今後短期間で投資家を引き付けることはほとんどあり得ないと報告しました。その例外として可能性があるのは大きいダイヤモンドまたはファンシーカラーダイヤモンドです。これは、オークションハウスが価格設定を提示しているためです。
Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。