類似石・模造石素材に関する基礎的知識
宝飾業界は、キュービック ジルコニアなどのように、別の宝石のように見えるためその代替品として使用されるものの、非常に異なる化学組成、結晶構造、光学的特性および物理的特性を有する素材に対して「類似石」という用語を使用しています。これらの類似石は、模造石または代替品とも呼ばれ、天然または人工のものがあります。
人工の類似石
合成キュービック ジルコニア(CZ)– 現在に至るまで数多くの宝石が模造ダイヤモンドとして使用されてきましたが、合成CZは他の石と比べて絶大な人気を得ています。
1970年代後半に市場に登場したCZは、酸化ジルコニウムの粉末を金属チャンバーの中に入れ、融点まで加熱して製造されます。その後、溶融物が熱源からゆっくりと移動し、溶融物全体が個体になるまで結晶が溶融物の底で成長します。
CZのモース硬度は8.5です。これは、ダイヤモンドほどではないものの、CZは硬く、耐久性のある宝石であることを意味します。ほとんどのCZは無色とされており、クラリティが高く、欠陥があるとしても微小です。ただし、CZは時間の経過とともに黄色になります。ダイヤモンドと比較して、CZはわずかに強いファイアを示しますが、ブリリアンスは少なめです。
キュービック ジルコニアは、ほぼすべての色で製造することができます。ピンクとイエローのCZは、ピンクまたはイエローのダイヤモンドに非常によく似た模造石として使用されます。他の色のCZは、暗めの赤、パープル、ブルー、グリーンまたはブラックの宝石に最適の模造石となります。
普及:一般的
合成モアッサナイト – 無色の合成モアッサナイトは、1990年代後半に模造ダイヤモンドとして人気を集め、そのブリリアンスと強力なファイア、および優れた耐久性のため婚約指輪の石として非常に人気が高まりました。
モアッサナイトは無色からほぼ無色です。多くの場合、その価値は、無色の程度により異なります。モアッサナイトは、CZよりもインクルージョンが若干多い傾向にあり、欠陥がある場合は微小として記載されるほどの程度のクラリティとされています。モース硬度は9.25であり、ダイヤモンドほどではないものの、非常に硬くて耐久性に優れています。
モアッサナイトは、ダイヤモンドに比べて2倍以上のファイアを示し、わずかに強いブリリアンスを放ちます。1カラット以上の大きなサイズのものでは、強力なファイアを示すためダイヤモンドではない宝石であることが明らかになる可能性があります。非常に大きなサイズのモアッサナイトでは、非常に強いファイアは「ディスコ ボール」効果と呼ばれることがあります。
また、モアッサナイトは複屈折性である点においてダイヤモンドとは視覚的に異なるため、バック ファセットが二重に見えるかもしれません。このため、モアッサナイトの内部がぼやけて見えることがあります。特定の角度で見ると、わずかに黄色または灰色に見えるモアッサナイトもあります。
モアッサナイトには、イエロー、ブラック、ブルーなどがあり、カラー ダイヤモンドの代替品として使用することができます。
普及:ますます一般的
合成スピネル – 合成スピネルは、多くの様々な天然の宝石(サファイア、ジルコン、アクアマリン、ペリドットなど)の外観に似せることができるため、類似石として使用されることがよくあります。合成スピネルは、広範囲の色を正確に再現するため、誕生石ジュエリーの模造石としてよく使用されます。
普及:一般的
合成ルチル – 合成ルチルは1940年代後半に市場に登場し、初期のダイヤモンド類似石として使用されていました。火炎溶融法によって製造され、ほとんど無色で、わずかにイエローがかった色合いがありますが、ドーピング(成長プロセス中に化学物質を添加する)により様々な色にすることが可能です。
普及:稀
チタン酸ストロンチウム – この無色の人工素材は、1950年代にダイヤモンド類似石として人気を博しました。しかし、その分散度(ファセットカットされた宝石のファイアを生み出す光学特性)は、ダイヤモンドに比べ4倍以上です。チタン酸ストロンチウムは、ほとんどの場合、火炎溶融法によって製造され、成長プロセスの間に特定の化学物質を添加することにより、ダーク レッドやブラウンなどの着色が可能です。
普及:稀
YAGおよびGGG – 長年の間、いくつかの人工素材がダイヤモンド類似石として使用されてきました。1960年代には、イットリウム アルミニウム ガーネット(YAG)とその「いとこ」であるガドリニウム ガリウム ガーネット(GGG)が、ガラス、天然ジルコンや無色の合成スピネルのような従来の類似石に加わりました。また、YAGとGGGには数多くの色があります。
普及:稀
ガラス – 人工ガラスは、昔からあり今日でもまだ使われている宝石の模造石です。ガラスは、事実上どの色にも製造することができるため、多くの宝石の代替品として人気を集めています。ガラスは、ブリリアンスの点では劣りますが、アメシスト、アクアマリン、ペリドットのような石の模造石として使用されます。また、タイガーズ アイやオパールのような特殊効果を示す天然宝石に見えるように似せることも可能とされ、ガラスの溶融層は、アゲート、マラカイト、べっ甲のような外観を作る事もできます。
普及:一般的
プラスチック – プラスチックは、安価なファッション ジュエリーの模造石として、よく使われます。しかし、このモダンな人工物は、アンバー、真珠、コーラルなどの有機質の宝石、あるいはジェード、ターコイズ、ラピスなどの凝集体素材の模造石として巧みに使われてもきました。プラスチックは耐久性のある模造石ではないので、損傷しないように特別なケアが必要です。
普及:一般的
冷却ヒビ入りクォーツ – 天然の無色のクォーツには熱衝撃を与えることがあり、これは「冷却ヒビ入れ」として知られています。この無色の素材は、まず最初に加熱され、次にヒビを入れるために水のような低温の液体溶液で急冷されます。突然に収縮したため、素材全体にわたって放射状の亀裂が生成されます。これらは表面に到達するフラクチャーであるので、クォーツを染色溶液に浸漬させ、その着色された溶液でフラクチャーを埋めることができます。フラクチャーが施されたり染色された外観は、顕微鏡で観察すると直ちに確認することができますが、この方法はエメラルド、ルビー、サファイアなどの天然宝石に非常に似ている模造石を作ります。
普及:時折
セラミック ビーズ – 陶磁器に使用される「セラミック」という言葉を聞いたことがあるでしょう。通常、高温で加熱することによって非金属鉱物から作られる製品はどれもセラミックと呼ばれています。ファセット カットされないもので人気のある2つの宝石は、模造ターコイズと模造ラピス ラズリです。これらは、セラミック合成法によって作られます。このプロセスでは、細かく砕かれた粉末が加熱され、場合によっては圧力をかけられて結晶化して固化し、きめ細かい固形物になります。
普及:時折
模造ターコイズ – ターコイズの涼しげな青色や緑色のは、何世紀もの間、人々を魅了してきました。5,000年以上前、エジプトのファラオはターコイズを装飾品として初めて身に付けました。この身近な宝石は、微晶質の凝集体であり、時に魅力的な鉱脈状のマトリックスと呼ばれる母岩のインクルージョンが含まれているのを特徴とします。1970年代初頭、Gilson(ギルソン社)はラピス ラズリの模造石だけでなく模造ターコイズの製造も手掛けました。
普及:時折
模造ラピス ラズリ – 古代文明で珍重されていたダーク ブルーのラピス ラズリは、アフガニスタンで6,000年以上採掘され続けています。この宝石は、いくつかの異なる鉱物の凝集体です。金色のパイライト片が時々含まれていることがあり、魅力が一層増します。ギルソン社のラピス ラズリは、天然のラピス ラズリとは異なるいくつかの成分と物理的特性を持つため、より正確には模造石と考えられます。
普及:稀
組み合わせた宝石
ファセット加工された1つの宝石を作るために、製造業者が2つ以上の異なる素材を接着または溶融して制作した石を、組み合わせた宝石、または張り合わせ石と呼びます。それぞれの素材は、天然または人工どちらでもかまいません。フェイス アップで見た色がより均一になるように、接合されている平らな表面は、宝石の大きなテーブル ファセットに平行になっています。
ダブレット – ダブレットは、接合された2つの部分で構成されています。
普及:一般的
トリプレット – トリプレットは3つの部分から成るか、2つの部分の間に有色の接着層があるものです。
普及:一般的
ダブレットやトリプレットは天然宝石を模倣するために使用されますが、組み合わせた宝石は必ずしも模造石というわけではありません。天然オパールがこれに当てはまります。オパールは、非常に薄い層で形成されることがあり、ジュエリーとして使用できるよう堅牢にするには、補強が必要になります。オパールのダブレットまたはトリプレットのカボションでは、ブラック オニキス、プラスチック、または天然マトリックスを一番下の層に使用します。オパールのトリプレットでは、ロック クリスタル、プラスチック、ガラス、または合成コランダムでできた透明のドームを一番上の層に使用します。