メレー:現代デザインの構成要素
10月 11, 2017

宝石・宝飾業界の重要な要素であるメレーは、モダンな感じやエレガントなデザインのパターンを作ることができます。デザイナーは勿論のこと、この業界のバリューチェーンに従事するすべての専門家がこの石について熟知する必要があるでしょう。
GIAでは、重量が1/5カラット(ct)未満の小さなダイヤモンドおよび宝石をメレーとみなしていますが、メレーのサイズに関する定義は国によって、そして取引のそれぞれの過程によって異なります。多くの場合、メレーはラウンドシェイプにカットされますが、エメラルド、プリンセス、ラディアント、マーキスなどの様々な形も見られます。新しいデザインおよび製造技術の発展により、より華やかで複雑な、需要が高いジュエリーを作ることが可能となりました。

ジュエリーに使われているダイヤモンドが多いほど、そのジュエリーのきらめきはより素晴らしいものとなります。メレーダイヤモンドはその小さいサイズゆえに、大きめのダイヤモンドのセンターストーンに比較すると価格が低く、婚約指輪のデザインに輝きとシンチレーションを添えるためにふんだんに使用されることがよくあります。
メレーは、周りにある石を引き立て、装飾的なパターンを作るためによく使用されます。また、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、時計やその他の種類のジュエリーにきらめきを与えるためにも使用されます。
メレーのカラーグレードは通常、あまり詳述されていなく、「フェイスアップでホワイト(D-Hのカラー)」や「トップがライトブラウン(M-Oのカラー)」などと記載されます。同様にクラリティグレードも詳述されず、肉眼で確認できるインクルージョンがない場合は「アイクリーン」のように記述されます。ジュエリー製造業者は、メレーの色とセンターストーンの色を合わせるよう最善を尽くします。

メレーダイヤモンドは、最新のダイヤモンドカッティング設備のある工場で大量に生産されます。最新の技術を駆使した機械は必要な労力を削減し、製品の質を向上させましたが、メレーのカッティングと選別はいまだに多くの人手を要する仕事です。インドのSurat(スーラト)市は、メレーを含むダイヤモンド製造の重要な拠点です。メレーはファセットカットが施され選別された後、100カラット以上のパーセルでジュエリー製造業者に販売されます(パーセルには400粒以上のメレーが含まれることがあります)。たったひとつのジュエリーに数十粒から場合によっては数百粒のメレーが使用されることもあります。
大きなカラット数のダイヤモンドと同様に、メレーダイヤモンドの類似石や合成石(ラボで成長された石)を検出することは、宝飾業界において重要です。ここ数年の間、天然のメレーダイヤモンドを低費用で分析し、合成石から分別できるGIAメレー分析サービスのような自動化されたシステムが企業で導入されています。
ジュエリーデザインにおけるメレー
クリエイティブなジュエリーデザイナーは、小さなメレーを使用して作品を大胆に見せます。メレーを散りばめることで、婚約指輪にシンチレーションを与えたり、大きくて有機質のカーブした表面に現実的または風変わりな感じを生み出しているのです(メレーとしてよく使用されるのはカラー宝石)。

婚約指輪では、センターストーンの色にメレーの色を合わせることが重要です。カラーが一致していると、非常に素晴らしい出来栄えとなります。メレーで作られたヘイロー(輪)は、センターストーンをより大きく見せることができます。メレーを使って装飾的なパターンを作ると、視覚的に惹きつける効果が生まれます。しかし、メレーのカラーがセンターストーンよりも暗色や淡色である場合は、魅力がなくなってしまいます。

メレーをジュエリーデザインに取り入れる際、「カラット重量」と「カラット総重量」の違いを理解しておくことが重要です。これは、ダイヤモンドの重量が価格決定の決め手となるためです。宝飾業界で「tcw」と略されることが多いカラット総重量は、ダイヤモンドのみが使用されているジュエリーにおけるダイヤモンドをすべて合わせた重量を指すのに使われています。カラット重量(ct)という記述は、センターストーンのような個別の石にのみ適用されます。2.50tcwである多数の小粒ダイヤモンドを使ったリングは、2.50ctの一粒ダイヤモンドを使ったソリティア婚約指輪よりもかなり低価格となります。
メレーの一般的なセッティングスタイル
- ビーズ アンド ブライト:人気の高いこのビーズセッティングでは、小さなビーズが石を支えます。ビーズセッティング(彫り留め)は鋭く彫った金属の壁に囲まれていて、その壁がダイヤモンド内に光を反射させてくれます。
- チャネル:1つまたは複数の石が、向かい合う2つの壁の間に固定されており、下部をチャネル(溝)で支える技法です。チャネルセッティング(レール留め)は、石を固定するためにビーズやプロングを使用しません。
- パヴェ:ビーズセッティングの一つのスタイルで、手で彫り起こしたビーズで石を所定の位置に三列以上並べて固定します。
- プロング:金属が宝石を固定し、セッティングの一部となっています。プロングセッティング(爪留め)は、他のセッティングスタイルと比べて使用する金属が少ないため、宝石の表面をより多く見せることができます。

メレーのデザインおよび技術的な課題
メレーを使用する際、デザインと技術においてバランスを取る必要があります。例えば、ブローチのあらゆる場所をメレーで飾り立てると、お客様は感動するかもしれませんが、そのジュエリーがこのような用途にデザインされていない場合、耐久性が乏しくなる可能性があります。
また、パヴェ、ビーズ、チャネルなどのセッティングスタイルでは、ジュエリーから金属を削る必要があります。しかし、適切な技術を用いられていない作品から余りにも多くの金属を取り除くと、構造が頑丈でないため日常に着用する際に壊れてしまうかもしれません。
GIA品質保証のベンチマーク(QABs™)は、ジュエリーのデザイン、技術、製造を評価するための基準であり、GIAのジュエリーデザイン&テクノロジー(JDT)とグラジュエイト ジュエラー(GJ)のディプロマプログラムで学んでいただけます。メレーを使用して作業を行う際に使用できるベストプラクティスを以下に説明します。
- メレーはサイズのわずかな違い(たとえば0.20ミリメートル(mm))でも、お客様に気づかれてしまうかもしれません。均一性がデザインの要素の一部である場合は、同じようなサイズのダイヤモンドを選択することが重要となります。
- プロングの先端がすべて宝石のクラウンにしっかりと密着している必要があり、プロングと石の間に隙間があってはなりません。プロングの先端が平らでないと、衣服にひっかかたり、皮膚を引っかいたり、損傷することがあります。
- パヴェまたはビーズ アンド ブライトセッティングでは、少なくとも0.50mmの境界線を残し、構造を強化します。
- チャネルセットの石の場合は、石の両側に1.00mmの壁を作ります。その後、ダイヤモンドの約10%がセッティングに接触するよう、チャネルの側面にアゴ(石のガードルが収まる部分)を切り込みます。
- ゴールド、シルバー、プラチナは特性が異なります。メレーをセットする際に使用する金属の持つ独自の冶金学的な特性を考慮することが必要です。

GIA QAB ™は、宝飾業界からのサポートおよびフィードバックを得て開発されており、広く認知された基準と比較して半仕上げまたは仕上げ済みのジュエリーの品質を評価する客観的な方法を提供し、メレーを適切にセットする方法を示します。
その難しさは別として、メレーをセットすることで多大な利益が見込めることがあり、破損した際に生じる損失のリスクが比較的少なくなります。取引の一部の過程において、メレーは専門家にとってそのサイズよりもはるかに大きい重要性を持っています。このため、メレーについて熟知することが不可欠であります。