ブックレビュー:Wartski:The First Hundred and Fifty Years(最初の150年)
3月 11, 2016
家族が経営する企業が、宝石や宝飾品業界を支えています。 これは、小規模企業や国際的に有名なブランドの両方に当てはまることです。 Wartski:The First Hundred and Fifty Years(最初の150年)では、19世紀に設立されたある英国の家族経営企業の記念すべき150周年に焦点を当てています。 1865年以来、Wartskiはロシアの宮廷芸術、高級宝飾品、銀細工の専門家として、世界規模(英国王室と数多くの有名人を含む)の顧客層を築いてきました。 2つの家族による4世代の努力と献身と、情熱的な従業員により、Wartskiは高級宝飾品業界でも今なお活躍中です。
著者Geoffrey Munnは、19歳のときから、40年以上にわたってWartskiで働いてきました。 今日、彼は同社の経営者、史料編纂員、認定骨董専門家、BBCテレビ番組の司会、作家、そしてFaberge(ファベルジェ)の金属細工や宝石専門家として名が知られています。 素晴らしい語り手で、Munnはこの本の各ページで、このユニークなビジネスで起こる人間の物語を最も壮観な作品と織りなして紹介しています。 読者はすぐに絶妙な写真やイラストに惹かれますが(特に素晴らしい金属細工、宝石、および有名人の常連客など)、Munnは、素晴らしい作品やその収集および販売についてではなく、これはビジネスの歴史本であると強調します。
序文と最初の2章は、Wartskiの起源や成長、そして困難や成功を、魅力的に、深く掘りさげて語ります。 現在の経営者の曽祖父である創業者Morris Wartskiに訪れた人生の転機や、北ウェールズのバンゴーに初の家族経営のビジネスを設立した物語は、まるで映画の台本のようです。 勤勉、誠実さ、専門性、そして優れた販売能力でもって、過去1世紀半に起こったすべての困難を克服してきました。 現在の宝石業界はさまざまな問題に直面しますが、歴史の中で最も重要な時代を同社がどう生き延びたかを知ると、今日の活動がよく見えてくるものです。 例えば、1950年代にはサザビーズやクリスティーズなどのオークションハウスが宝石ビジネスに参入し、Wartskiはその存在の圧力を感じました。 ロシアのFabergé eggs(ファベルジェの卵)、宝石類や、他の芸術作品などと、彼らの専門性を追求することで、Wartskiはさらに特別なコレクションの専門性を強化し、生き残るだけでなく、繁栄するビジネスとなったのです。
Wartskiは、Carl Faberge作の13個の有名な皇帝のファベルジェの卵を含む、ロシアの宮廷の宝石や芸術作品などの壮大なコレクションのおかげで、英国の王室から注目を浴びるようになりました。 Wartski宝石商の2代目は、ロシア革命後に貴族から宝物を購入したり、ソビエト政府が国を新しく動かすために資金を必要としていたとき、これらのものを購入した第一人者でした。 これらの徹底した購入の努力によって、英国王室のメンバーも魅了するブランドとして強固な基盤が確立され、Wartskiはそれ以来彼らの宝石商としても仕えています。 今日、Wartskiは、エリザベス女王2世と英国皇太子の両方の宝石商として王室に任命されています。
次の章は、世界最高の宝石や金属細工(エジプトの王冠の宝石)を収集するために、家族が行った努力や仕事について説明をしています。長年Wartskiをサポートしてきた顧客には、元大統領夫人ジャクリーン・ケネディ・オナシス、作家イアン・フレミング、現在のケンブリッジ公爵と公爵夫人などが含まれ、その顧客の名は、宝石業界に携わっていないたくさんの読者をも魅了します。 収集への熱意と、ビジネスの将来についても語ります。 すべての内容が非常によく紹介されており、初公開の作品の写真や、有名な宝石や貴重な金属加工など目を引く写真も添えられています。
Munnは同社の歴史に焦点を当てることに専念していますが、失われたインペリアル・ファベルジェのイースターエッグにまつわる興味深い話もあります。 「Nécessaire(小物入れ)」と名付けられた卵は1889年にロシアのアレクサンドル3世より依頼されました。 ダイヤモンド、ルビーのカボション、エメラルド、大きなカラーダイヤモンド、サファイアカボションで飾られ、中には13個のダイヤモンドがはめられた小さな箱があります。 この作品が最後に公開されたのは、1952年6月のことで、Wartskiで行われました。 匿名の買い手が店でそれを購入し、それ以来この宝の所在がわからなくなっています。 Wartskiでの最後の展示のときの白黒の写真に基づいて、Nécessaire(小物入れ)のありかを探るMunnの推測は、多くの読者を魅了します。
この本が際立つ理由として、Munnが持つ深い知識と洞察が挙げられます。 彼の素晴らしい語り口はこの本をさらに魅力的にし、宝石専門家や愛好家が同様に楽しめる作品となっています。 読者は、舞台裏の出来事を知ることができ、息をのむような作品を公に発表する前に、宝石商や収集家が手掛ける大変な作業のことなどを知り、いっそうその真価を認めることでしょう。
Wartski:The First Hundred and Fifty Years(最初の150年)は、多くの意味で魅力的な本であり、読む価値もあり、宝石本のコレクションに加えるべき一冊でしょう。
Tao Hsuは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の技術編集者です。